葛藤

本当ならば打ち明けて楽になりたい。しかし、それはできない。

なぜならこれまでの家族との絆を失うからだ。

時間は刻々と過ぎていく。どうすればいいんだ。

 大学二年生の夏の事であった。私は両親の強い勧めで自動車学校に通うこととなっていた。

馬鹿にならない入学費を下宿先の銀行で引き落とし、いざ支払窓口へ向かおうとしたその時である。

私の中で悪魔のささやきが聞こえてきた。

「どうせ、バレない」

 私はその声に屈し、予てから欲しかったゲーム、恋人とのデート費用に全額つぎこんでしまったのだ。実家から離れて、親の監視も行き届かないことをいいことに、今日までだましだまし振舞ってきたのである。

 家族から私の携帯にメッセージが届いた。

『D、免許取得おめでとう。保険に加入してもらいたいので、免許証の写真送ってください!(^^)!』

どうやら年貢の納め時だ。当たって砕けようと私は決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る