第10話
「地磁気のみだれは活火山の多い北の地域では普通に見られるが、他ではほとんどない現象だ」
リキュウは花崗岩がむき出しになっている山塊に目を移す。
「物理学的に考えると空間の歪みが引き起こしている現象、ということになる」
「空間の歪み……」
「質量とエネルギーの等価性とその定量的関係が……」
「リキュウ、要するにこの土地は、『空間の歪み』を発生させるほ
どの質量のある物質が存在する可能性がある土地、ということか」
「まあ、そう言うことになる」
「ブラックホールのような、高い密度及び質度を持つ物質がここには存在するとしたら、いわゆる『空間の歪み』が生じてもおかしくはないということだ」
リキュウはおもむろに特殊相対性理論の公式E=mc2を地面に書き出した。
「ブラックホールだって?ここにいる俺たちどころか、光まで飲み込んでしまう天体だぜ?そんなものが、この島のどこかに存在するなんて。リキュウ、気は確かか?」ゲンジは頑として信じようとはしない。
「まあ、信じようが信じまいが、わたしたちはもはや少しもそれについて考えるゆとりはないようだ」星ヶ城山の頂に立ち、笠ヶ瀧のほうを見やると、広大な暗黒の覆いが天上に広がっているのが見える。
「ブラック……ホール」
ゲンジは思わず息を呑んだ。
「ゲンジ、これを見てくれっ」
リキュウの持つ携帯端末のカレンダーが1575年を示している。
「わたしたちはどうやら、戦国時代に迷い込んでしまったようだ」
「戦国時代……だと?」
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