第24話 安倍晴明の出生の謎
風守カオルと神楽舞、飛騨亜礼の三人は雛御前の陽動作戦により、JR太秦駅で一度、電車を降りた。そこで雛御前がつくった身代わりの
そこから
安倍清明の出生については諸説あり、各地に清明伝説が残るが、こういう場合、その各地にその人物の逸話が残っている理由というものがある。全く根拠のないものではない。
かつて桃太郎の伝説の地を調べたことがあるが、香川の桃太郎伝説は桃太郎のモデルと言われる吉備津彦の弟の皇子である
桃太郎伝説発祥の地である奈良県磯城郡田原本町には孝霊天皇の宮である
愛知県犬山市の桃太郎伝説、桃太郎神社(岐阜県加子母)については、どうも秀吉の四国征伐の際に、讃岐(香川)の一ノ宮である田村神社の宮司さんが戦に敗れて、縁者を頼って滋賀県の田村神社に逃れたらしく、岐阜の桃太郎神社の創建に関わっていて香川の桃太郎伝説をモチーフに神社を作ったという話を聞いたことがある。
安倍晴明の場合も、出生地は和泉国の阿倍野(現在の大坂)と言われていますが、父は安倍保名で、母親が保名に信太の森で助けられた白狐が化けた葛の葉という美女であったという「信太の森の白狐伝説」があり、実は常陸国(茨城)の信太の出身で、平将門の息子であるという異説もあります。
安倍氏の出身地そのものが東国に多く、おそらく彼の出身地は東国で、実父は安倍保名で公式には京都の安倍朝臣家に養子に入ったのではないかと思われます。出生自体が何らかの「訳あり」なのは確かなようです。
讃岐(香川)出生説もありますが、東国の安倍家が讃岐の領地に移封されたという話もあり、それで伝説が広まったという愛知県の桃太郎神社と同じパターンかもしれません。
岡山県の金光町の占見に占い師が集まっていたり、芦屋道満が晴明に弟子入りしたりという話もあったり、晴明は若い頃、浅口郡占見の里に住んでいて、備中国下道郡の賀茂忠行のもとに通い、陰陽道の術を学んでいたというエピソードもあったりします。
岡山県の鴨方町に阿部山があり、晴明屋敷跡もあって晴明が天体観測をしていたという話もありますが、これはかなり信憑性があって、この近くに現在、天文台も出来ていて美星町という町があったりして確かに天体観測には最適な土地のようです。総社市富原には晴明の子孫と称する陰陽師の集落があったようです。
陰陽道の開祖と呼ばれる吉備真備は、吉備国(岡山県)の真備町出身であり、晴明の陰陽道の師である賀茂保憲の系図を辿ると祖先は「賀茂吉備麻呂」であり、備中国下道郡、つまり、今の鴨方、笠岡、金光町、総社などに地域が集中しています。
吉備真備が陰陽道の賀茂氏の祖先というのは正確には間違いのようですが、吉備の賀茂氏(鴨、加茂)が多いのも事実です。
古代には天皇家との繋がりもある鴨別という姓もあり、735年(天平7年)から747年(天平19年)までの平城京跡出土の木簡には「備前国児嶋郡賀茂郷・鴨直君麻呂調塩三斗」と書かれていて、奈良の鴨神社の荘園が備前にあって塩を送ったという記録があります。
宇喜多氏の系譜を汲むとされる加茂次郎の名前もあり、備前児島半島を三分する東児島、中児島、西児島の中児島に住んでいたとされています。
実は筆者の近所の庄内村(上加茂郡と下加茂郡が合併した)にも加茂神社がありますが、どうも加茂神社の荘園とかだったらしいです。
晴明が京都で天文博士になるのが50歳で、40歳ぐらいから活躍していますが、30歳ぐらいまでどこにいたのかが謎に包まれていて、どうも吉備で賀茂忠行や保憲と陰陽道を学んでいた可能性が高いです。
もっと若い頃には関東にいて、比叡山でも修業したという話もあります。
陰陽師といえば神社というイメージがありますが、初期の陰陽師は遣隋使、遣唐使や渡来した僧侶が陰陽道を伝えたりしていて、空海などに伝えられた密教や役の小角なども陰陽師だと言われているので、修験道の九字の印なども芦屋道満などが使っていたし、陰陽道、その起源である道教とも関係してると思われます。
名古屋にも晴明神社がありますが、晩年に晴明が政治的に失脚して左遷された時期に住んでいたという言い伝えがあり、花山天皇が退位した後に晴明と共に東下りした話もあって、長野だとか、愛知県の漁師町に晴明塚があったりします。名古屋などもいろいろと歩き回ったようです。
こういう風に全国の安倍晴明伝説を丹念に拾っていくと、安倍晴明の出生から若い頃、京都デビューまでのエピソードや晩年の話も見えてくるかもしれません。
話が長くなったので、次回に続くということで、この辺りで終わりたいと思います。
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