第14話 常世封じの結界
京都は風水的に
「北(玄武)に 山があり、東(青龍)に河川があり、南(朱雀)に湖沼があり、西(白虎)に大道がある」というものだが、北に船岡山、 東に鴨川 、南に
平安京をつくった桓武天皇は新しい都を守護するために、さらに霊的結界を作ったという。
北の「大将軍神社」(京都市上京区西賀茂角社町)、東の「大将軍神社」(京都市東山区東山長光町)、南の「大将軍社(藤森神社)」(京都市伏見区深草鳥居崎町)、 西の「大将軍八神社」(京都市上京区一条通御前西入ル)と言われるものがそうである。
ところが、保津川地区方面にある嵐山はこの結界の外になってしまったために、さまざまな怪異の噂がある。「酒呑童子」の話も京都市西京区と亀岡市の境に位置する大江山、または京都と丹波国の国境にある大枝(老の坂)に住んでいた鬼であるし、この辺りは鬼や異民が溜まっている場所でもある。
古来からこの方向に天皇陵や貴族の墓も多く、それを鎮めるための寺社も多く建てられている。
京都の鬼門の方向は比叡山などによって堅く守護されているが、逆にこの方向が手薄になってしまって、黄泉の国への入り口になっているとも言われている。
「
天才陰陽師、安倍晴明は桓武天皇が施した結界の弱点を強化するために更なる結界をつくった。
「大江戸魔方陣」「東京魔方陣」の著者である作家の加門七海氏によれば、下鴨神社、平安神宮、清明神社で正三角形を成し京都御所を守護する結界を張り、晴明神社と下鴨神社のラインで鬼門の方向も封じているという。
さらに、晴明神社を起点として西側に位置している「北野天満宮」、「大将軍八神社」をラインで結ぶことによって末広がりの三角形のゾーンを形成して天皇陵を包み込んでいる。
そのために、晴明神社は西向きに建てられて、天皇の霊を鎮め、西からの鬼やもののけなどの侵入などを防いでいるという。
「さるや」で申餅を食べながら、そんな話をスマホで検索した風守カオルであったが、安倍晴明はやっぱり、不世出の天才陰陽師だなと感心していた。
風守カオル、悪童丸、雛子の一行は、下鴨神社の摂末社「河合神社」を右手に見ながら糺の森を抜けた。
河合神社の神宮の家系に生まれた鴨長明は重職に就くことができず、世を
おいおい、ただの愚痴だったのか!と突っ込みたくなったが、まあ、エッセイのほとんどが閑話、つまり無駄話であることを考えると、案外、そんなものかもしれないと思った。
某小説投稿サイトでも小説が評価されないのを嘆いたり、書けないので息抜きでエッセイ書いてる人も多いと聞くし、小説よりエッセイがメインになってる某小説書きも知っている。
賀茂川と高野川の三角州に建てられた下鴨神社であるが、ふたつの流れは京都の南北に流れる鴨川に合流してひとつになる。
景色がいいので、鴨川の東岸沿いに南下して、八坂神社を目指すことにした。
「カオルお姉ちゃん、何でそんな変な歩き方をするの?」
雛子がカオルの奇妙な歩き方に気づいて、不思議そうな顔をしている。
カオルは左、右、左足揃え、右、左、右足揃え、左、右、左足揃えでちょっと休んでは、また同じ足運びで歩いていく。
「これは
「え、難しすぎてわかんない!」
雛子は口をとがらせた。
「ごめん、ごめん、簡単にいうと『おまじないの歩き方』かな。八方塞がりになった時に、大地の地霊、神様にお伺いを立ててるの」
「何となく、わかった。魔法みたいなものでしょ」
「そうそう、魔法よ」
カオルは金色の瞳を輝かせて「まほうだ! まほうだ!」というはしゃぐ雛子を横目に見ながら、背中に背負った鞘から黒い直刀、
その姿は剣舞のようであり、雛子は「かたな! かたな!」と増々、はしゃいでいた。
カオルが用いたものは『奇門遁甲』、別名『八門遁甲』の八門が塞がれた際に突破口を開く秘術で、「
文字通り、八門(360度の全方位)が塞がれた八方塞がりを破る呪法でもあった。
カオルはひとしきりそれを続けていたが、
どうやら、八坂神社の方角は正解のようだ。
カオルは
この歩き方だと時間がかかるので、八坂神社に着くのは夕方ぐらいになるかもしれない。
どこかで夕食を取らないといけないけど、先斗町で「ひつまぶし」でも食べようかなと考えていた。
悪童丸の好物だったりする。
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