アセンション・プリーズ

20XX年 10月10日 1:50 京都府京都市左京区鞍馬寺



夜の秋風は冷たい。この日もそうだ。これは単に気温が低いという意味ではなく、その場を取り巻く情緒すべてに影響を及ぼしている。

独特な虫の声は小さくなり、空気は風船がしぼむ時のようにどこかへと抜けて行ってしまう。

そんな何かを諦めさせてしまいそうな空っぽな雰囲気がそこに存在し、夜の静けさを演出している。


「なぁ、頭は一体何を考えとるんや?」


「さぁな。わしら下っ端が知る由もないで」


スーツ姿の厳つい男が二人、何やら怪しげな話をしながら見張りをしているようだ。

 ここは豊かな自然がある山林の一角で、右にカーブしている道路沿いに石の階段がある。

男達の声はどうやらこの上の方から聞こえてくるようだ。辺りは真っ暗で人っ子一人いない為、階段の登り口まで響き渡ってしまっている。


「それにしてもアレやな。あの業火学会(ごうかがっかい)がここにまで手を出すとはなぁ....」


「しゃーないやろ。裏で手を引いているのがキングコングやからな」


男達の怪しげな声が響き渡っていた時、その話に割って入るかのように、一台の車がヘッドライトで闇夜を照らしながら通り過ぎて行く。

その車の特徴を確認するのに十分な灯りはその場にはなかったが、見える限りでは漆黒の闇に溶け込んで見えなくなりそうな群青色をしたセダン車だった。


「......一般人や。問題無さそうやな」


「あぁ、そうやな。まぁここでの“処刑”がバレるわけないで。今日の仕事は楽なもんや」


そんな自分達の役割を否定する言葉を述べて呑気に状況判断をしている男達だったが、階段の登り口に目をやると、

階段の両脇にある灯篭の一つが警告を鳴らすかのようにチカチカと点滅し出した。


「ん?なんじゃアレ......さっきまであんなんあった....ぁぶひぃぃいっ!?」


一瞬何が起きたのか分からなかったが、次の瞬間には誰かの片腕が分離してどこかに吹っ飛んでいき、男の一人が後方に倒れ込んだ。

そして、そのコンマ一秒後には遠方から到達した銃声が響き渡り、漆黒の闇夜を切り裂く。


「あっ....ぁぁあっ!?なんっ....なんじゃっ!?おっ....おいっ!おぃぃぃいっ!!」


自分のバディが倒れ、あたふたとうろたえることしかできない残りの男は何が起きたのかさっぱり分からず、キョロキョロと辺りを見回した。

すると、暗闇に紛れた人影が階段の登り口に飛び出して来て、両手に何かを構えながらこちらに迫って来る。

ズダダダッ!と短い連射音が響き渡り、残りの男は悲鳴を上げる暇もなくその場に倒れた。

 それは一瞬の出来事だった。そして、石の階段の両脇に並んでいる灯篭が何かに触発されて明かりを灯し、戦いの舞台とその主人公たちを照らし出す。

そこには“鞍馬寺”と書かれた大きな石碑が階段の登り口にあり、その先には朱塗りの仁王門が構えていた。

その不気味な夜の寺院に舞い降りたのは群青色のパーカーを纏った二人組の男女........


“Anonymous02 to Hawkeye,Targets are downed.Request order.”

(アノニマス02からホークアイへ、ターゲットを倒したわ。次の指示を乞う)


綺麗なシルエットの女が無線越しに話す声がその場に響き渡る。さらに雑音が聞こえた後、それに応答する声が聞こえた。


“Ragor,Bluebird,initiate Operation intercept. ”

(了解。ブルーバード、“阻止作戦”を実行せよ)


かなり訛りの強い、英語というよりは関西弁に近いアクセントのその声は二人の男女に指示を下す。


“Anonymous02,Ragor.”

(アノニマス02、了解)


“Anonymous01,Ragor.”

(アノニマス01、了解)


綺麗なシルエットの女に続いて応答したのは、彼女と同じ群青色のパーカーを纏った男。


“優二、マスクから発せられる電波のお蔭で階段がライトアップされてもうたわ”


例の調子で、そう呟く関西弁は今日の主人公にさりげなくスポットライトを浴びせた。


「景色はいいんやけどな」


優二は黒いアノニマスマスクに装備された無線越しに応えを返すと、前方にいるバディの方を見た。

するとクリスティーナも彼の方を見て、マスクを外すとウィンクをする。

彼女はバディが親指を立てて自分の気持ちを理解したことを確認すると再びマスクを被り直して、無線でこう言った。


“ Yuzi-san,I leave that entirely to you.”

     (優二さん、お願いね)


作戦開始。クリスティーナは優二の前方を進んで行く。

“スプレッド”と呼ぶこの隊形は、彼女と一緒に何度も訓練したアノニマス(匿名集団)の基本隊形だ。

最前列で戦うFIGHTER(戦闘者)を後方からサポートする。それは彼女の死角から攻撃を仕掛けてくる敵を排除するだけではなく、

戦場の状況を冷静に判断し、彼女に指示を与えるという役割も優二に与えた。

つまり、実際にクリスティーナをリードするのは他の誰でもない優二なのだ。

その意味は彼らのコールサインにも表れている。アノニマス01は優二であり、アノニマス02はクリスティーナ。

そう、この二人が前線で戦う“スパイ”。コールサインはブルーバードだ。

 

 ブルーバードの二人に与えられた初のミッションは通称“Operation intercept(阻止作戦)”。

円卓のあるHQ(本部)で三井が彼らにブリーフィングを行った、この作戦の概略はこうだ。


 キングコングの中間管理職にあたる社員が某新聞社に内部資料を提供しようと試みたが、そのことが同社の上層部に露呈。

その資料には同社の悪行が全て記されているという。暴力団との関係、政界との癒着、そして裏の人脈を繋ぐ「フィクサ―」の存在....

そして、この件に最も絡んでいるのは、日本国民なら誰でも知っている大手銀行、友住第三銀行だ。

そんな日本の闇社会に関する重要資料を握った当該人物の男は一週間前から連絡が途絶え、行方不明になっていると某新聞社からアプロ―チがあった。

 そこで、南野(ホークアイ)が同社と関係の深い暴力団のサーバーに侵入すると、京都府左京区の山林に奴らの“処刑場”が存在し、

内部告発者の処刑が行われていることが明らかになる。つまり、暴力団は民間企業からの殺人請負をしていたということだ。

ただ、京都府左京区の山林はだだ広く、一体どこにその“処刑場”があるのか見当がつかなかったが、

暴力団のサーバーから奪い取った情報には名簿のようなものが含まれていて、そこには見覚えのある名前があった。

盧正泰(ノ・ジョンテ)、林まりな、そして林実(はやしみのる)だ。

 材木町で暴力団と何かの密約をしていた林実はその場に拘束して置いてきた。今頃、警察やら救急車が到着して大騒ぎになっているだろう。

先程手に入れた情報によると奴らは鞍馬寺にある通称“木の根道”で処刑を実行するようである。

 ブルーバードのミッションは処刑の阻止及び内部告発者の保護、そして重要資料を回収すること。


本部で行ったブリーフィングを頭に叩き込んだアノニマス小隊ブルーバードの二人は灯篭に照らされた石の階段を登り、

朱塗りの仁王門を通り過ぎた。“鞍馬寺”の入り口には小さな観音がいる蓮華水あって身を浄めるように促していたが、そんな時間はない。

 二人は、再び、両脇に赤い灯篭が並んでいる石の階段に出くわした。

そう、鞍馬寺は深い山の中にあるのだ。尊天(千手観音・毘沙門天・魔王尊)が奉安されている本殿金堂までは険しい山道を登って行かなければはならず、

“処刑場”のある“木の根道”はそこからさらに上部にあり、貴船に向けて下る道に広がっている。

マスクから発せられる電波に刺激されて明かりを点した灯篭によって映し出されたクリスティーナの綺麗なシルエットを前方に確認しながら、

優二は今回の作戦において一番厄介な問題を思い出した。

これまで彼女や南野、そして三井と訓練を重ねてきたのは平地を想定してのものであり、このような険しい山の斜面を駆け上りながら戦うことなど全く予想していなかったのだ。

しかも初陣で、ぶっつけ本番で挑まなくてはならない。


“優二、しっかりお姫様を守ったらなアカンで”


南野(ホークアイ)から無線が入ると、僅かな不安を抱きかけていた貴公子は、自分のバディである“お姫様”の柔らかい笑顔と透き通った声を思い出し、

それらを心の内に燃え滾る蒼い炎へと変えて、両手に持つスナイパーライフルH&K MSG90 を強く握りしめた。


「了解。分かっとる」


クリスティーナの戦闘能力は相当なものだ。男を相手に華麗な格闘戦を展開できるだけではなく、彼女が日々の訓練で見せていたのは総合的な「戦闘力」だった。

身軽な彼女は俊敏な動きで素早く敵の懐に潜り込み、その細身のカラダを華麗に動かしながら両手に持つMP5サブマシンガンで敵を攻撃する。

だが、そんな強力なFIGHTER(戦闘者)にも限界がある。それはどんなに訓練を重ねようと優二の助けが必要なことは明白であった。

そう、戦場で彼女を守り抜き、二人で無事に本部へ帰還することができるかどうかは優二にかかっているのだ。


石の階段を登り終えると、登り斜面が待ち構えており、これから果てしなく続く暗闇の道のりに二人をいざなっているようだ。

 右手にケーブルカーがある建物を見て、そこを通り過ぎた優二はその建物に奇妙な垂れ幕が掛かっていることに気が付く。

それには「業火学会(ごうかがっかい)の援助に感謝」と大きな文字で書かれていたが、そんなことを気にする余裕もなく

前方を進むクリスティーナから無線が入る。


“Enemies are identified.Anonymous02,Engage! ”

(敵を確認、アノニマス02交戦!)


ブルーバードの二人が被っているいる黒いアノニマスマスクには暗視装置がついており、夜間の戦闘でもしっかりと視界を確保することができる。

その暗視装置を通して緑色に変わった景色に映ってきたものは、前方を行くクリスティーナの綺麗なシルエットと、そのさらに先に現れた四人の人影........

スーツ姿の男達が山道の上から走り降りて来る。直後にサブマシンガンの連射音が響き渡った。


“Anonymous01,Engage!”

(アノニマス01、交戦!)

 

クリスティーナが戦っているのが見える。一人目が倒れた。二人目も。そして、三人目と四人目が拳銃を構えようとしている......ズダンッ!!

その瞬間、優二が持つH&K MSG90が火を放ち、銃火(フラッシュライト)が暗闇を照らしたかと思うと、

照準(レティクル)の真ん中に捉えたターゲットが吹っ飛んだ。

彼のスナイパーライフルに装填されているNATO弾が敵に命中し、射抜いたのだ。

そして、残された一人はあたふたとしている間にクリスティーナから距離を詰められてしまい、みぞおちに強烈な蹴りを食らうと、その場に倒れ込んで動けなくなってしまう。


“I'm sorry for my offensive”

   (ごめんなさいね)


なぎ倒した敵に対して、彼女が非礼を詫びる声が聞こえる。無意味な殺戮行為はブルーバードの任務ではない。

それはターゲットがどんなものであれ同じだ。例え、ヤクザが相手でも犠牲者は最小限に抑える。

彼らの任務はあくまで情報収集や破壊工作活動の阻止であるので、自分達の身に危険が及ばない範囲で配慮をする必要があるのだ。

とりわけ、“お姫様”に至っては、その戦闘能力の高さとは裏腹に、あどけない少女のようなピュアなハートの持ち主であるので、

彼女に負担をかけすぎないように気を遣ってあげる必要もある。似た気質を持つこの二人だからこそできる共同作業。

情報収集のプロであり、陰謀論者でもあるMr.三井のマッチングは実に絶妙であったのだ。


これならいける。優二は株式会社ジェネラル・プリンセスで過ごした一か月間を思い出し、心の中でそう呟いた。


“....System is all clear.データリンク完了”


ホークアイの声が聞こえると、倒れた敵が落したスマートフォンが奇怪な雑音を発しているのが分かった。

筒抜けになった情報が、彼らの被る黒いアノニマスマスクを経由して衛星に送られ、本部に向かっているのだ。


 二人は山の香りを感じながら急激な山道をさらに登っていく。すると、「由岐神社」と書かれた鳥居が見えてきた。

鳥居の向こうには五十メートルはあろうかという巨大な杉があり、優二とクリスティーナを見下ろしている。

スプレッド隊形の最前列を進むアノニマス02が、奥深い山の寺院に存在するにはあまりにも不自然な神域への入口に差し掛かったその時、

雑音とともに関西弁混じりの英語が聞こえてきた。


“アカンっ!....Bluebird,This is Hawkeye.Close,Formation Element!....優二、上におるっ!上やっ!!”

      (ブルーバード、こちらホークアイ。エレメント隊形を取れ。)


前方にいるクリスティーナがビタリと立ち止まった。その刹那、彼女の足元に小さな穴がビシッと現れ、銃声がする。

ツインの愛銃を斜に構えて発砲しながら後退するバディの姿をみとめた優二は、全速力で彼女の方へ駆け寄る。

“エレメント”は、FIGHTER(戦闘者)に対処不可能な要因が発生した際に取る隊形(フォーメーション)だ。

どだい、MP5サブマシンガンの射程距離は長くなく、近接戦闘を行う彼女は敵から狙撃されてしまうリスクも大きい。

その際には互いの距離を最小範囲まで縮めて脅威に対処することが必須になるのだが、そこからは蒼い貴公子の独壇場になる。

 お姫様の息づかいが聞こえる距離まで近付いた彼は、暗視装置を通して見える景色の中に二つの不気味な影を発見した。


「やぐらかっ!....二人っ!やぐらに二人おるっ!!」


“あほかっ!お前、あれは「お社」(おやしろ)っていうねんっ!!”


クリスティーナは同僚のアホ男二人が繰り広げる漫才を理解できるほどの日本語力をまだ備えていないようだったが、

とりあえずの安全地帯をいち早く見抜いたバディに手を引かれた。優二の向けた視線の先にあるのは鳥居の前にある手水舎だ。

それは神域に至るまでの石の階段があるちょうど左横に位置していて、その狭間に僅かな隠場がある......

と一瞬のうちに数秒後の動きをスローモーションで再生したが、クリスティーナの左胸にレーザー照射を受けた小さな赤い印が表れていることに気付く。

くそ....と呻く暇も無く、自分のバディを強引に抱き寄せる。すると、彼女も同じことを考えているとでも言うかのように不気味な笑みを浮かべた最新鋭マスクの下から彼を見つめた。

山の香りに混じって少し遠慮気味な香水の匂いがしたかと思うと、お姫様の顔を右手で自分の胸に精一杯うずめてやり、

そのまま柔道でする前回り受け身の要領でその隠場に転がり込む。


ズドドドドッ.....キーン!!!!


いくつもの鉄塊がさっきまでいた場所に着弾して、奇怪な連射音と共に地面を弾き飛ばす。

あと二秒、いや一秒遅れていたら二人で蜂の巣にされていたところだ。

女と手を繋いだこともないのに、こんなにも大胆な行動に出れた理由は考えるまでもないが、

人間は窮地に立たされると性別の違いによる距離を限りなく近づけることができるらしいことは確認できた。


「くそっ....何だ、こりゃ....機関銃っ!?..まだ...ぁあっ....くそっ!!」


“What!?....uhhh!....Yuzi-san”

(何これっ!?....ぅぅう....ゆうじさん)


これまで冷静だったクリスティーナが、自分の胸に顔をうずめて悲鳴を上げている。

それほどまでに敵の攻撃は強力なようだ。

しかも、本来であれば神を奉ってある筈の神殿は彼らを射撃する為の高楼として機能しているので、

ブルーバードの二人に降りかかる脅威は、さらに勢いを増していく。

 お社の中央には石の階段が貫くように通っており、その左右に彼らの位置を見下ろすことができる矢倉のような親切で最悪な場所がある。

優二は目を閉じて、既に確認した敵の位置を映像として再生した。左右に一人ずつ。スナイパーライフルH&K MSG90で仕留めるには近すぎるほどの距離だ。

 その時、やかましい連射音が鳴り止み、雨のように降り注ぐ弾幕が終わりを迎えた。敵が銃弾を装填(リロード)している姿が目に浮かぶ。

そして、クリスティーナのサラサラな金髪を一回撫でると、そのまま伏せておくように促して、隠場から身を乗り出した。

......ビンゴ。敵はその位置から全く動いていない。そのまま素早く愛銃を構え、照準(レティクル)の真ん中に一人目の獲物を捉える。

だが、撃ち尽くした銃弾を補充している筈のその獲物は、予想に反する動きでこちらに銃口を向けていた。

その瞬間、何か大きなモノを射出する奇妙な音が聞こえてきて、クリスティーナが横腹に抱きついてきたかと思うと、

そのまま押し倒される。愛銃の引き金をひいたのと同時だった。


「ユウジサンッ....ダメッ!!」


銃口から放たれたNATO弾が敵を仕留めたかどうかを確認する暇もなく、

再び隠場に倒れ込むような形で伏せた二人の間近で何かが炸裂して大きな爆発音がした。

それがグレネード・ランチャーの類であることは容易に推測できる。

そして、さらに追い打ちをかけるかのようにもう一発の炸裂音が響き渡り、その衝撃によって弾け飛んだ土壌が二人に降りかかる。

このままではまずい。敵が持つ武器といい、ポジションといい、圧倒的に不利だ。

 底なしの沼にはまってずるずると引き込まれ、何とか脱出しようと試みているような感覚を味わいながら、

蒼い貴公子は微かな希望の光である自分のお姫様を、お世辞にも頼りがいのあるとは言えない厚さの胸板に埋めて思考を巡らせる。


「ユウジサンッ....ワタシッ......ダイジョブッ!」


クリスティーナの透き通った声が耳に入って我に返った優二は、右手で抱きかかえていたバディの顔が真っ直ぐこちらを見つめているのを見て、

お互いに考えていることが同じであることを悟った。次の砲撃は確実に自分達がいる隠場を射止めてくるだろう。

やるしかない。そうなる前に決着(ケリ)をつけなくては........


“נסיגה”


「.....え?」


その刹那、雑音混じりに無線から聞こえてきたのは関西弁でもなく英語でもない、独特の発音をする奇怪な言語。

そして、予想していた脅威は訪れず、耳をつんざくような銃声や爆発音が銃撃戦によって著しく重苦しくなってしまった歪な闇夜を切り裂くことはなかった。

 つかの間の安堵が訪れて胸を撫で下ろした二人は、場違いで聞き慣れた関西弁訛りの声を受け取り、脅威が完全に去ったことを知る。


“Bluebird,this is Hawkeye.Are you normal?”

(ブルーバード、こちらホークアイ。無事か?)


“Clear”

(大丈夫だ)


“優二、何か妙や。奴ら撤退していきよった”


「あぁ、俺らが無事やからな。」


“上に向かっとる。何や、おびき寄せられとる感じがするわ”


「......どういうことだ?さっきの奴ら、明らかに今までのチンピラと違うぞ」


“優二、ここからは気を付けろ。解析したデータの中に気味の悪い数字が混じっとる”


「...........?」


“666や”


その時、鞍馬山の北方で雷雲が立ち込め、轟音と共に稲妻が走った。

それが悪魔かも鬼かもしれない得体の知れない妖怪が降臨してしまったことを示唆しているのかは、人間であれば知る由もないであろう。





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