第2話 暗側

「いらっしゃいませー」明るい声だ、どんだけ性格が前向きなんだ?という位のものを感じさせられる声だ。この声には何故か何時も得体のしれぬ圧力めいたものを感じる。

「何時ものお席空いていますよー」まあ、何時もそこが空いているからそこに座れって事だな、席に座ると直ぐに水とお絞りが出てくる、何時も通りだ。

にしても、本当に明るい娘だな、只その場所に居るだけでその周りまでパーっと明るくなる様な・・ストレスとか感じる事を想像させないイメージだな、見てくれも十人並みでは在るが、肉感的でプロポーションもまあまあ良い、あれじゃさぞここの客として来ている男どもは頭の中でこの娘を犯す妄想なりを繰り返したで在ろうよ。

まあ、実際の彼女はどんな性癖かも知らずに、えっ?実際を知って居るのかって?

勿論

薄暗い部屋の中、暗くて何も見えない、が、音が幾つかしている、ぎゅっ、と何かを縄か何かで縛る音、ぎゅっ、ぎゅっ、その度に聴こえる甘く切なそうな吐息の音、ぎゅっ、ハアハア、ぎゅっ、あ~、とか、明らかに女が喘ぐ声、ぎゅっ、という音の後に必ずこれが聴こえる、そして

俺は訊く、「どうだ、今日の締まり具合はよ?縄を新調したから肌に食い込む感じが堪らないだろ?」すると、女は「うん・・・もっとキツく、が、イイ・・」本当に好きだな美紀はよ、男に縄で半裸の女が縛られて居る、相当無理な姿勢で、真白い肌にまるで獲物を締め上げている蛇の様に食い込んで行く、胴と言い腕と言い太股と言い、とにかく全身を荒縄で締め上げられている。

が、相当に苦しい筈では在るが、その表情は恍惚の極みを見せている、真っ赤な口紅を引いた唇は半開きになり、だらしなくも愉悦の垂涎さえも・・

俺は更に訊く、昼間は喫茶店であんなに明るい笑顔と元気な笑顔を客達に与えているお前が一度縄が肌に食い込めばこの乱れ様、誰もお前がこんな性癖とは想像も付くまい、どうだ?お前自身はこんな自分をどう思っているのだ?

そう、この女美紀は昼間は喫茶店のウェイトレスをしている。その元気さと明るさが評判のあの店の看板娘だ、が、夜はこの俺の奴隷同然の女だ、どんなプレイも拒まず、何でも受け入れる、いや、寧ろ貪欲に貪っているのはこの女の方かもな、両方の顔を知る俺は何時も思う、本来の美紀は今俺に縛られて居るこの女で、昼間のウェイトレスをしている美紀が偽りの美紀だと。

「早く・・焦らさないで下さい・・」

そうねだる美紀を俺は後ろから貫く。

「ああ・・ああ~」と一際激しく喘ぎ声を立てる美紀の縄が食い込んだ背中をじっくりと冷静に見下しながら腰の注挿をくりかす、暗い部屋に美紀の肌の色だけが蠢き、何ともようえんに見えた。

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