第27限 【side:叶】
桜の木の下に敷いたレジャーシートの上、落着かない様子で、香耶が言う。
「成斗、遅いね? やっぱり駄目だったのかなぁ?」
「じゃあ、賭ける? 成斗が生田を連れて来れるか? 来れないか?」
からかって笑った俺に、香耶は呆れ顔を向けると、何かを思い出した様に叫んだ。
「あ、そうだ」
「ん?」
「そう言えば、アタシと叶が付き合うってなった日。橋の上で、叶はなんの賭けしてたの?」
「香耶が振り向くか、振り向かないか。もしあの時、香耶が振り向かなかったら、今の俺達はなかっただろうな」
そう、俺は……あの時、ひとつの大きな賭けをしていた。
香耶が振り向いたら、自分の気持ちを告げようって――
「じゃあ何? 振り向かなかったら、叶は気持ち伝えてくれなかったってこと?」
「でも、香耶は振り向いた。それで、今の俺達がある。結果オーライだろ?」
「そんなもん!?」
「そんなもんだよ。恋愛なんて危ういもんは、ちょっとした事で、どっちにだって転ぶ。逆に考えれば、それでもこうして一緒にいる今があるんだから、俺達はスゲーってこと」
俺はむくれ気味だった香耶の頬を、指で小突いて笑う。すると香耶も、満開の桜の下、向日葵の様な眩しい笑顔を俺に向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます