第19限 成斗side: センチメンタルドリーマー
白い部屋での退屈すぎる静寂に、俺の心は腐りかけていた。
退院する日も決まり、みんなが喜んでいるというのに、一番嬉しいはずの自分が、そこにはいない。
命さえ落としかけた事故だったってのに、俺は今こうして、ちゃんと生きてるってのに……。
そんな自分を見せたくないから、みんなの前では笑ってるけど、俺は明らかに何かを失いかけていた。
その「何か」は理性、気力、体力、夢、希望……言い出したらキリがない。
一度だけ、それを吐きだした日があった。
ダンススタジオの仲間が見舞いに来た後、病室にやって来た音央ちゃんに。
それを後々ひどく後悔して、そんな胸の内を吐きだす事をやめた。そして俺の胸の中にだけ、静かに積もり積もるやるせなさ――
突然、俺の前に高く立ちはだかった壁を見上げて、呆然としているのが、正直、今の俺だった。
近付く冬の澄んだ青い空を、今日もベッドの上、ぼんやりと見つめる。
不意に病室のドアがノックされ、返事をすると、香耶が入って来た。
「あれ? お前、ひとり?」
いつも一緒に来る叶の姿がない事を、そんな言葉で香耶に訊く。
「アタシひとりですけど。何か?」
「何ムクれてんだよ?」
「アタシひとりじゃダメみたいな言い方するから」
「誰もそんな事言ってねーだろ。ただいつも一緒の叶がいないから、どうしたのかと思っただけだよ」
呆れた様に笑った俺へと、香耶はわざとらしい疑りの眼差しをしながらも、悪戯に笑った。
「バイトの買い出しがあるから、叶は明日来るって」
「そっか。それよりお前、良かったな」
「何が?」
とぼけてるのか、本当にわからないのか、俺の顔をポカンと見ている香耶に、今度はちゃんと分かる様に、主語を付けて言う。
「叶と付き合う事になって、良かったな」
「いきなり何? そんな事しみじみ言ったりして、変な成斗」
照れくさいのか、香耶は小さく吹き出して、おどけた。
「安心した?」
今度は香耶に突然訊かれて、俺が戸惑う。
「アタシが叶と付き合ったら安心だとか、成斗言ってたじゃん? だから、安心した?」
香耶に言われて、前に俺が、そんな言葉を言った事があったのを思い出した。
「おう。安心したした。俺はもう何も思い残す事はないくらい安心した」
おどけながら言った俺を、怪訝な顔つきで香耶が見る。
「せっかく元気になったとこなのに、死んじゃうみたいな事、言わないで」
俺は曖昧に笑ってみせ、さり気なく視線を外した。
「音央、頑張ってるよ」
突然話を逸らした香耶に、俺は独り言みたいに呟く。
「そっか……音央ちゃん頑張ってんだ」
俺を見て、もう一度夢を追いかけようと思ったと、音央ちゃんは言っていたけど、今の俺には、そんな音央ちゃんの方が、眩しく思えていた。
あんなに大好きだったダンスが、もうどうでもいいとさえ思える今日この頃。
「羨ましいな」
ポツリと言った香耶に、俺は視線だけを向けた。
「成斗にも、音央にも、追いかける夢や特技があって羨ましい」
俺はどうしてもそんな話の矛先を変えたくて、香耶をからかうことにした。
「俺はお前が羨ましいよ。叶みたいな彼氏がいてさ」
「成斗ってさ、ずっと彼女作らないと思ったら、もしかして、そっち系!?」
「だーっ。なんでそうなるんだよ。話ぶっ飛びすぎだろ!?」
「ぜんぜん繋がる話だよ」
「まぁ……確かに。って、ちげーよ!」
からかうつもりが、いつの間にかからかわれて、香耶も大笑いしている。だけど、シリアスな話をされるより、そんな何の取り留めもない話の方が、今の俺には気が楽だった。
そして迎えた退院の日。
まだ左足の骨折が完治していない俺は、松葉杖をついての退院になった。これからは通院しながら、リハビリをするとのこと。
俺は迎えに来てくれたおふくろの車で、約一ヶ月半ぶりに自宅に帰った。
生まれてこの方、健康だけが取り柄だった俺は、生まれて初めての入院生活と松葉杖生活に、ストレスが溜まりまくりで。悪いと思いながらも、ついおふくろに八つ当たり。
いったいいつになったら、こんな生活から抜け出せるのだろうと考える。病院のベッドから、自宅のベッドに変わっただけで、俺の生活はまったく何も変わってやしない。俺がこんな風に腐ってる間にも、みんなはどんどん、先に行ってしまうってのに……。
生まれて初めて味わう挫折に、俺の心はがんじがらめに抑えつけられていた。
そんな日々の中やって来た、音央ちゃんが出場するというピアノコンクール。
迎えに来てくれた叶の車に乗り込み、香耶も一緒に、三人で出掛けた。
「結構、デカイとこでやるんだな…」
辿り着いたコンクール会場を、運転席のフロントガラスから、覗きこむように見て叶が言う。
「ホントだ……しかも、すごい人だよ!?」
すでに行列を作っている入口に、香耶は圧倒されて、ポカンと口をあけた。
「俺、松葉杖だけど、こんなんで会場入れてもらえんのかな?」
「大丈夫。ちゃんと一番後ろの端の席、音央がとっててくれたから。チケットに座席が書いてあるって言ってたから、昨日ネットで席調べておいた」
「一番後ろの席って、生田の顔とかわかんねーじゃん?」
突っ込みを入れた叶に、得意顔から一変して、香耶がぴしゃり言う。
「みんなが前で見てると思うと、緊張するから、一番後ろで聴いててほしいんだって」
なんだかすごく音央ちゃんらしいと、俺は小さく吹き出した。
座席はもう決まっているというので、会場入り口の混雑が落ち着くまで、俺達は車の中で待つ事にする。
「演奏前とか、音央に会う事出来ないのかなー?」
「出来るかもしれないけど、生田もそれどこじゃないだろ」
「そっか。なんかアタシまで緊張してきちゃったよ」
「なんで、お前が緊張すんだよ。その辺で漏らすなよな」
そんな香耶と叶の何気ないやりとりを聞きながら、あぁ、こいつ等本当に付き合いだしたんだなーなんて、しみじみ思ったりして……。
でも、香耶が幸せそうに笑っているのを見て、俺は心から本当に良かったと思った。
「あれ? 成斗、随分大人しいじゃん? あ、もしかして、成斗も緊張してんの?」
助手席から後ろを振り返って、悪戯な眼差しで訊いた香耶に、
「香耶じゃあるまいし。俺は漏らさねーよ」
叶のネタを拝借して、先に香耶にお見舞いした。
「何、この二人の連帯感。やーな感じ」
香耶のふくれっ面に、俺は叶と目配せをして笑い合う。
「さて、そろそろ行くか」
叶のそんな一言で、俺達は車を降り、松葉杖で歩く俺の速度に合わせて、ゆっくり会場に向かった。
ピアノのコンクールなんて初めてで、慣れない会場の空気に、なんとなく落ち着かない。のは……どうやら俺だけじゃないらしい。隣に座る叶も、その隣の香耶も、どこかそわそわして、落ち着きを無くしていた。
香耶の話によると、演奏順は応募順らしく、ぎりぎりに応募した音央ちゃんは、最後から二番目の演奏とのことだった。
会場に座っている俺達がこんなに緊張しているのに、ステージの真ん中に設置されたピアノにひとり座り、演奏する音央ちゃんの緊張は、いったいどれだけのものなんだろうと思う。
やがて会場のライトが消え、ステージだけにライトが当たり、コンクールが開演された。
正直、ピアノのことは、俺にはよくわからないけど。本当にピアノを好きな人達が、一生懸命に課題曲を弾いている姿に、俺は見入っていた。
同じ曲でも、弾く人の解釈で、まったく違う曲の様に聴こえたりするのには、俺も驚いた。それと同時に、音央ちゃんが、どの曲をどんな風に弾くのか、俺の中で、そんな興味がわく。
「プログラム21番。生田音央。演奏曲はショパンのワルツ Opus42」
会場に音央ちゃんの名前が流れ、舞台の袖からドレスアップした音央ちゃんが出て来た。
一礼をする音央ちゃんに拍手をしながら、俺は掌に妙な汗をかいていた事に気付く。
――なんで俺が、こんなに緊張してんだ?
そんな突っ込みを心で入れながら、ステージのピアノに座る音央ちゃんをまっすぐ見つめていた。
そして始まった演奏。
それは音央ちゃんらしい、優しく軽やかな曲。
音央ちゃんが生み出す透明なピアノの音に、鍵盤の上を滑る様な魔法の手に、ただただ深く感激した。
言葉を知らない俺は、そんな説明しか出来ないけれど、今、ステージの上で演奏しているのは、音央ちゃんであって、音央ちゃんじゃない気さえする。俺の手の届かない様な……遠い遠い存在――そんな不思議な気持ちになった。
出場者すべての演奏が終わり、残すは一次予選通過者の発表。
その呼ばれた名前の中に、音央ちゃんの名前はなく……。
いったいどんな言葉を音央ちゃんにかけたらいいのかと、俺だけじゃなく、きっと叶も香耶も同じ思いだったと思う。
「音央のこと待って、一緒に帰ろう」
そう香耶が言い出さなかったら、俺がそう言っていた。
俺達は出場者が出てくるという出入り口の少し離れたとことで、音央ちゃんが出てくるのを待つ事に。
「ここで三人で待ってても、逆に生田、困るんじゃねぇ…?」
煙草を吸いながら、叶が言う。
「じゃあ、俺が待ってて、音央ちゃん車のとこまで連れてくよ」
俺の申し出に、叶も香耶もすんなり同意して、俺を一人残し、先に車へと戻って行った。
ぞろぞろと出場者が出てくる中、音央ちゃんの姿はまだない。なかなか出てきそうもない音央ちゃんを、俺は近くにあった花壇の縁に腰掛けて、待つ事にした。
「俺が待ってる」なんて、格好つけて言ったものの、音央ちゃんに何て声をかけていいのか、俺はまだわからずにいた。
カツン、という音に振り返ると、座った横に立てかけておいた松葉杖が地面に倒れている。
俺がそれを、不自由な体で、拾おうとした時だった。
「成斗くん?」
突然、後ろからかけられた声に、俺はバランスを崩して、そのままこけた。
「イッッッテ…」
てか、こんな大事な時に、めちゃめちゃ、かっこわりぃ……俺。
「成斗くん、大丈夫!?」
駆け寄って来た音央ちゃんが、俺の顔を心配そうに覗きこんだ。
「ノープロブレム。とかつって……めちゃめちゃかっこわりぃー俺」
俺はおどけるしか出来なくて、松葉杖につかまって立ち上がると、そんな俺を見て、音央ちゃんが小さく吹き出した。
「わざわざ待っててくれたの?」
「俺だけじゃなくて、叶と香耶も車の中で待ってるよ。大勢で待ってたら……」
俺はそう言いかけて、思わず「ヤベッ」と、口を噤む。
「大勢で待ってたら、一次予選に通過できなかったあたしが、どんな顔していいのか困るから……でしょ!?」
音央ちゃんは、俺の言葉の先を言い当て、無邪気に笑うから、俺は心の中にあった言葉をストレートに言った。
「ずげぇ、いい演奏だった」
「成斗くん、耳、大丈夫? あんなミスタッチだらけの演奏が、いい演奏なんて」
「正直、俺、ピアノの事、まったくわかんねぇけど……音央ちゃんのピアノの音、また聴いてみたいって思ったよ」
お世辞でもなんでもない、それは俺の素直な感想だった。
「ありがと。お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞なら、俺だってもっと、うまい事言うよ」
音央ちゃんが、照れ臭そうに笑う。
「でも……残念、だったな」
音央ちゃんの胸の内を察して言葉をかけた俺に、音央ちゃんは「ううん」と、首を横に振って言った。
「残念じゃないよ。当り前だよ。みんな必死にこの日の為に毎日練習してきてるんだもん。あたしがたった二ヶ月弱練習しただけで、敵いっこない。でもね……」
音央ちゃんは少しの間を空けると、また話し出した。
「今度は負けないって思った。あたしも毎日ピアノ練習して、今度こそ一次予選通過するぞって」
やけに清々しい顔をして、そんな話をする音央ちゃんの横顔に、思わず見惚れる。
「だから。成斗くんも一緒に頑張ろう!! あたしはピアノ。成斗くんはダンス。それぞれ立つ土俵は違うけど、夢に向かって頑張るのは一緒でしょ? ね?」
言って俺を見上げた音央ちゃんを、俺は無意識にも抱きしめていた。
俺の脇から離れた松葉杖が、左右それぞれ、アスファルトに倒れた音が響く。
俺の胸の中、まるでフリーズしたみたいに、音央ちゃんは動かない。
今、この感情をどう表現していいのか、俺自身もよくわからない。わからないけど……音央ちゃんを、とても愛しいと思った。輝きを纏って、どこか遠くに行ってほしくないとも思った。そう思えば思うほど、音央ちゃんを抱きしめる腕に、力が増す。
「成……斗くん?」
音央ちゃんの頼りない声に、そっと口を開いた。
「俺の……傍にいて。それで俺の事、ちゃんと見てて」
俺の腕の中、音央ちゃんが、コクリと小さく頷く。
「もう少し……このままでいて」
そんな俺の我儘にも、音央ちゃんが、ゆっくり頷いた時だった。
「ハイ、カーーット!」
いきなり映画かドラマの助監督の様な声がして、慌てて抱きしめていた音央ちゃんから離れた俺は、体を支えるものが何もなくなり、そのままアスファルトに倒れ込んだ。
「痛っ」
「成斗くん、大丈夫!?」
音央ちゃんが、慌てて俺に駆け寄る。
って……さっきも、こんなシーンなかったか!?
「はいはい。お二人さん、続きは誰も見てないとこで、お願いしま~す」
お呼びでない助監督叶が、パンパンと手を叩きながら、俺達の所にやって来た。その後ろには監督香耶もいて、何か言いたそうに、ニヤニヤとした意味深な笑顔を浮かべている。
音央ちゃんを抱きしめてたところを、こいつら二人に見られた!? 俺はすこぶる恥ずかしくなって、思いっきり開き直る作戦に出た。
「いきなりなんなんだよ。車で待ってたんじゃねぇーのかよ!?」
吼えたてた俺に、叶も香耶も、ニヤついた顔のまま言う。
「だって……ねぇ。あんまり遅いから……」
と、香耶。
「そうそう。そういうこと」
と、叶。
音央ちゃんはと言えば、恥ずかしそうに顔を赤くして、俯いている。
「音央。これから、みんなで音央の頑張ったね会するよ? 行こ! 行こ!」
香耶が俯いていた音央ちゃんの肩を抱き、音央ちゃんを連れて歩き出した。
そこに残された俺と叶。
「わりぃ。ジャマして……」
倒れていた松葉杖を俺に渡しながら、さっきとは正反対のシリアスモードで叶が言う。
「ホントだよ」
俺はわざと軽めに言って、「気にしてねーよ」と言う様に、叶に笑ってみせた。
「ホント、わりぃ……」
やけに真面目な顔をして謝る叶が、気になったけど、そこは敢えて深追いせず、俺はその場をやりすごした。
「じゃあ、音央の健闘を祝して、カンパーイ!!」
そんな香耶の音頭で、みんながグラスを合わせた。と、言っても、アルコールを飲んでいるのは香耶だけ。
音央ちゃんは、アルコールが飲めないし、叶は運転、そして俺は骨折中。叶と俺は気分だけ味わう事にして、ノンアルコールビールを飲んでいた。
四人掛けのテーブル席。叶の隣には香耶。俺の隣には音央ちゃん。
叶と香耶が二人で仲よく話しているというのに、俺は今更さっきの突発的な行動が恥ずかしく思えて、音央ちゃんと何を話したらいいのか、わからなくなっていた。
話題を探しながら、俺の頭はフル回転。何か話さなきゃと思い、俺はあまり知らないピアノコンクールの話を持ち出す事にした。
「ピアノコンクールってさ、毎回あんな感じ?」
アバウトすぎる俺の質問に、音央ちゃんが、「あんな感じって?」と、小首を傾げる。
俺はない頭を必死に回転させて、話を続けた。
「俺、ピアノコンクールとか行った事ないからさ。今回みたいにいつもチケット購入しなきゃなんないのかなーとか思って……」
「ううん。今回のコンクールは、今年が初めてで、ちょっと特殊っていうか……主催によってそれぞれ違うんだ。例えば新聞社主催とかだったら、無料。チケットなんかなくて、入口でパンフレット貰うだけとかね」
「ピアノの演奏聴くのにタダ!?」
俺の驚いた声に、音央ちゃんは笑って、「うんうん」と、頷いた。
「へぇー。なんか、ピアノのコンクールっていっても色々なんだな」
そんな会話を音央ちゃんとしていた時。
「もう、ほっといてよ!!」
いきなり香耶のキレた声に、俺も音央ちゃんも、目の前の叶と香耶を見る。
「どうした?」
「どうしたの?」
俺と音央ちゃんが、それぞれ香耶に訊ねたけど、何があったのか、香耶は苛々した顔つきのまま、押し黙っていた。
さっきまで仲よく二人で話していたのに、いったい何があったというのだろう?
「叶、どうしたんだよ!?」
「わりぃ。香耶このまま、俺が連れて帰るからさ。成斗、タクシーで帰れるか?」
「おう。俺は構わないから、気にすんな。日曜だから兄貴がいるし、迎えにも来てくれると思うから。そしたら、音央ちゃんは俺が送ってくからさ」
「ホントわりぃ……じゃ、行くわ。生田も、ホント、ごめんな」
「ううん。気にしないで」
先に席を立った香耶を追いかけながら、叶は俺に一万円札を渡して、居酒屋を出て行った。
なんだか、嵐がさった後みたいに、静かになる。
「本当にごめんな。何があったか、わかんねぇけど…ったく、香耶の奴、どうしょうもねぇな」
ひとりっこ特有とでもいうのか、少しわがままなところがある香耶を、事の経緯を何も知らない俺は、そんな言葉で非難した。
「きっと何かあったんだと思う」
香耶を弁解する様な言葉を発して、音央ちゃんは二人が出て行った入口を心配そうに見つめた。
俺も音央ちゃんも、香耶と叶の事が気がかりで、二人で呑気に話なんて出来そうもない。
「俺達も……帰ろうか?」
俺の言葉に音央ちゃんが頷き、俺は兄貴の携帯に連絡をして、迎えに来てくれる様に頼んだ。
コンクールの後、俺が取ってしまったあまりに中途半端な行動が、後々音央ちゃんを悩ませる事になるなんて、思いもしない俺だった。
そして、香耶や叶の心に何が起きているのかも――
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