違和感

━━最近おかしい。


「……なぁに、浮かない顔してんの? 」


「多実子ぉ……」


「ええー? 一体なに? こゆい"夢"でも見すぎたかい? 」


頷くと、目を丸くされた。


「……寝過ぎ、とかではなさそうだね? 」


「うん、それはおなじ」


◇◆◇◆◇◆◇◆


お昼休み、多実子と屋上下の階段に座り込む。


「ふむふむ……。"アリス"ねぇ。江梨子がエリスは分かりやすい。"アリス"ってどんな感じ? 」


「んーと……柔らかい淡い銀色の長い髪で……前髪が一部赤い……」


「それって、プラチナかなぁ。プラチナに赤メッシュ? 中々個性的だね」


そこに着目はしていなかったけど、よく考えたら確かに目立つ。


「それに続き物? 」


「うん、それから……"初めて人が死んだ"……」


前回行方不明になった女の子が、今回亡くなっていた。


「……ただの夢ではなさそうだ。江梨子、もしかしたら……バラバラの夢には"繋がり"があるのかもしれない。……違和感を感じたのはいつからだい? 」


そう言われたら、もっと前から変だったきがしてくる。


「君は夢をすべて覚えているわけじゃないだろう。でも、あまりに細かく覚えている夢は、他にもあるんじゃない? 」


◇◆◇◆◇◆◇◆


━━バラバラに見る夢。まるでジグソーパズルのよう。


お兄さんに恋をして、待ち合わせ場所に"お兄さんが来なかった"夢。……途中で弾き出された感覚。


まるで多実子が好きな二次元のような学園で、アリスという女の子の親友になり、イジワルなクラスメイトのカリーナが行方不明になる夢。そこですれ違った男子生徒に既視感を感じる。そして……その夢の中で、悪寒に似た感覚を感じた長い黒い髪の女性を見た。ここだけは曖昧。どこで見たか"覚えていない"。


蜂蜜色の髪をした、ふわふわしたイケメンにキスされた気がする夢。空間までもがふわふわしていて、彼が現れる前から夢と認識。


アリスと花畑で昼休みを過ごすところから始まる夢。この夢から、現実の私と夢の私が両方現れる。カリーナを心配するアリスの言葉が切っ掛けだ。直後に学園から呼び出し。アリスが詳細を聞きに言って、カリーナが死んだことを告げられる。一気に空気はお通夜モードだ。


それから……今朝見た夢は夜店と花火のお祭り。夢の中の黒髪の恋人と過ごす、ベタな夢。……何故か"恋人"として以外に、彼を"知っている"気がする現実の私が現れていた。


最近なので、この"順番"で見たことは明白だ。内容を考えると、学園以外は関係ないきがするけど……。


「んー、これだけ細かいと更に細かい内容もサルベージ出来るかもしれない。それに……だ。内容はともかく、何かしら繋がっているとしたら……"見た順番"と"発生した順番"が違うかもしれない。ほら、一見関係ないのに、"男性"はすべて"違う"のに"知っている"感覚がある。一度見た夢を何度も見るケースもよくあるからね。……すべての"男性"が、"おなじ"男性だったら? 」


「え? 」


━━「夢の中の"江梨子"は等身大の江梨子かい? 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る