後日談 (終話)
「なんだぁ、また戻ってきやがったのか!?」
懐かしいと感じさせるハングアップの声が、あたしの耳に突き刺さった。
「なによ、いいじゃない。どうせ空室だらけなんだから!!」
あたしもオヤジに混ぜっ返す。
そう、ここはクランタの街にあるあのボロ宿だ。
「まあ、いいけどな。そっちのかわいこちゃんは誰だ?」
ハングアップのオヤジがそう聞いてくる。
「あたしの護衛よ。セシルっていうの」
「護衛だぁ?ずいぶん出世したもんだな」
ハングアップのオヤジはそう言って鼻を鳴らした。
……そう、『ルクト・バー・アンギラス』の一件が片付いたあと、あたしは正式に魔道院院長の座をマリアに譲り、再び野良魔道師に戻った。
前にも述べたが、魔道院院長は自分の意思では辞められない。だから、例外事項を使ったのである。「酷い病気、また死亡」。公的には「病気で執務不可能のため」となっている。これも、渋々ながら協力してくれたマリアのお陰である。
しかし、病気なのに魔道院にいるというのもおかしな話だし、なによりもこうして外の世界にいる方が性にあっている。
そんなわけで、こうして再びクランタに戻ったのだが……。
なぜかセシルまで付いてきてしまった。「看病」という名目で。家庭は大丈夫なのかと思ったのだが、そこは上手くやるらしい。
「ほれ、ぼけっとしてないで中に入れ。さっそくだが、実は一つ仕事があってな……」
ハングアップの声に、あたしは我に返る。
こうして、あたしはお気楽魔道師へと再び戻った。
やはり、外の空気の方が美味い。
あたしは思い切り自由の空気を吸い込んだのだった。
(完)
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