第5詩「ラヴソング」

「嫌なことがあったら日記を書くことにしたの。」


「へえどんなことを書いているんだい?」


「色々よ、色々。明日のお見舞い品はプリンがいいなぁとか。」


「…そんなこと直接言いなよ。」


「今日お見舞い品は何もなかったとか。」


「…明日プリン買ってくるよ。」


「昨日は晴れだったとか、明日は雨らしいとか、今日は風が強いとか。」


「台風が近いからね。」


「一昨日と昨日は来てくれなかったなぁとか。」


「仕事があったからね…ごめんね。」


「好きな音楽とか、作家とか、食べ物とか。」


「モードスタイルのジャズに、山田詠美に、温いコーンポタージュね。」


「小学校の頃の運動会とか、中学生の頃の卒業式とか。」


「君は一番で僕はビリッケツ。在校生代表の君はスピーチで泣いてた。」


「私たちの馴れ初めは?」


「なんで疑問形なの。高校二年の雨のバス停で僕が告白しました。」


「ふふ…ぼろぼろ泣いてたね。男らしさとか微塵もなかった。」


「…小っちゃい頃から君の方が男らしかったじゃないか。」


「ほかには?書き足すわ。」


「中学校の頃の部活とか、高校の頃の文化祭とか、大学での勉強とか。」


「サボり気味の合唱部、不味い喫茶店、私は現代文学あなたは古典。」


「あとは…君が名前を変えた日。」


「『け、けけけ結婚しないか。』でしたっけ。」


「そんなに『け』は多くなかった、はず。」


「『はい喜んで!』って返したわね。」


「どこのお店だよって思わず口に出したよ。」


「今も昔も私に夢中なんだから。」


「それは否定しないよ。」


「ふふ…。」


「他にも何か書いてるのかい。」


「うん。余命はどのくらいだろうなぁとか。」


「…。」


「あと何回お見舞いに来る君に会えるかなぁとか。」


「…。」


「もっと生きたかったなぁとか。」


「…うん。」


「近くてもいいからハネムーンの旅行に行きたいなぁなんて。」


「…うん。」


「それから、何日も何日も考えて子供の名前を考えるの。」


「…。」


「仕事から帰ってきて、お互い疲れてて家事を押し付けあうの。」


「…。」


「うふふ楽しいんだろうな。」


「…うん。」


「ありふれたことって、すごい幸せなんだね。」


「そうだね…。」


「当たり前のことって、明日も当たり前かわからないんだね。」


「うん…。」


「だからね、忘れないように日記を書いてるのよ。」


「…。」


「今までとこれからを、限りある未来を書いてくの。」


「…うん。」


「忘れないで、とか。さよなら、とか。言いたくないの。」


「…。」


「けど忘れないでほしいの。矛盾してるけど、さよならも言いたいの。」


「…うん。」


「哲学的なわがままでしょ?」


「うん。君らしいよ。」


「あなたのこと愛してるけど愛してないわ。」


「知ってるよ。」


「あなたのこと愛してないけど愛してるわ。」


「それも知ってる。」


「…I just wanted an excuse to talk to you.

I had no idea about the side of my personality until I met you.

I didn't know the meaning of my love and happiness until I met you.

I've never really liked anyone before I meet you.

You gave your heart to me, so I'm gonna give you mine

You are my first love and will be my last.」


「…懐かしい歌だね、とても。その歌、嫌いだったじゃないか。」


「あら、つれない反応ね。乙女の気持ちは日々変わるものよ。」


「じゃあその歌を小学生の頃に君に捧げた僕の献身性たるや。」


「君が折に触れて歌うから覚えたの。」


「久しぶりに歌おうか?」


「ふふ…そうね。その愛の歌も日記に書いておくわ。」


「ねえ。」


「うん。」


「今までもこれからも、何度でも歌うよ。」


「ありがとう。」


「…I promise I'll make you happy.

I think of you even in my dream.

Please keep holding my hands.

Only you can make me happy or cry.

I'll stand by you all the time.

Your smile is my happiness.Yes,I'm just sweet on you.

Just be close at hand,I'm the more involved with you.

Let me love you,I love you now and forever.」



………………………………………………………………………………………


『My dear』

I just wanted an excuse to talk to you.

I had no idea about the side of my personality until I met you.

I didn't know the meaning of my love and happiness until I met you.

I've never really liked anyone before I meet you.

You gave your heart to me, so I'm gonna give you mine

You are my first love and will be my last.

I promise I'll make you happy.

I think of you even in my dream.

Please keep holding my hands.

Only you can make me happy or cry.

I'll stand by you all the time.

Your smile is my happiness.Yes,I'm just sweet on you.

Just be close at hand,I'm the more involved with you.

Let me love you,I love you now and forever.


「親愛なる君」

ただ君と話す口実が欲しかった。

君に出逢うまでは、こんな自分がいるなんて知らなかった。

君に出逢うまでは、愛と幸せの意味を知らなかった。

君に出逢うまでは、本気で人を好きになったことなんてなかった。

君が君の気持ちをくれたから、私は私の気持ちをあげる。

君は私の最初で最後の恋人。

必ず幸せにすると誓うよ。

夢の中でも君を想ってる。

どうかこの手を離さないで。

私を幸せにできるのも泣かせられるのも君しかいない。

私はいつだって君の傍に居るから。

君の笑顔が、私の幸せ。そうさ君に夢中なんだ。

ただ傍に居るだけで、どんどん君に夢中になっていく。

ねえ君を愛してもいいかな、今もこれからもずっと君を愛してる。

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