第6詩「星月夜の約束」

二人並んで足をぶらつかせ月を見上げた夜。

「月が落ちてきたらどうしよう」なんてわたしは問うの。

人差し指の先に三日月を転がして言葉を紡いだ夜。

「その時もこうして二人過ごしましょう」なんてあなたは答えたわ。


永遠はこの掌にないけれど


秤の月が傾くたびに


時間は薬のように世界を巡る


ねえ、あなたは小さく微笑んで目尻を優しく緩めるの。

その情けないけど愛らしい顔が大好きだったわ。

冗談でも嘘でも月が落ちてくればいいなんて私は思うの。

あなたに困ったように微笑んでいてほしいから。


魔法のように指先で


秤の月が傾くたびに


吐息がガラス玉のように煌いた


夜の帳が広がるこの部屋の中で寄り添うの。

細くて華奢で冷たくてそれでも感じていられるの。

叶わなくても夢であっても私が神様だったらなんて私は思うの。

あなたの痛みも優しさも全て背負っていきたいから。


瞳に零れて滴り落ちる


秤の月が傾くたびに


世界が揺られて崩れゆく


月のかわりにガラス玉をー全て真夜中の恋人たちへ届けましょう。

星のかわりにガラス玉をー全て愛する夢の人たちへ届けましょう。

まるで薬が溶けるように、この夜に全て消えるように。


今こうしてひとり月を見上げる。

あなたのいない孤独がじんわりと、じんわりと。

今こうしてひとり月を見上げるわたしに降りそそぐ。


「永遠なんてどこにあるのかな」


「魔法なんてどこにあるのかな」


私が神様だったらこんな世界は創らなかっただろうな。

永遠も魔法もあなたもわたしでさえも消えてなくなる。

まるで月が落ちてくるような、そんな星月夜。


まるであなたが傍にいるような、そんな星月夜。

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