第4詩「きみはかいじゅう」
ーいつか世界を救いたい。
ーいつかヒーローになりたい。
ーいつかみんなからありがとうと言われたい。
だから真っ赤な太陽めがけて俺は叫ぶのだ。
大きなお尻に大きなしっぽ。大きな頭に小さな心。
そう俺はかいじゅう、かいじゅうなのである。
「がおー」とまずは軽く叫ぶ。
「がおー?」と横のこいつは首をかしげる。
「がおー!」とお気に入りのポーズを決める。
「がおおー!」と横のこいつはきゃっきゃっとはしゃぐ。
「がおー…」としっぽをしょんぼり落ち込んでみる。
「がおぉ…」と横のこいつはまねをする。
小さなほっぺに大きなお目目、小さな頭に大きな心。
南の広い広い海からこいつはやってきた。
いやもっと言えばどんぶらこどんぶらこと流れてきた。
おおきなふねといっしょにぽつんとながれてきた。
しっぽをぶらぶらお尻をふりふりかんがえごと。
そうだ名前がないではないか、名前だ名前。
「がおー」ときいてみる。
「がおー」と横のこいつはこたえる。
なるほど…わからないではないか。
しょうがないがおーということにしよう。
「がおー」とよんでみる。
「がおー!」と横のこいつはこたえる。
「がおー?」とよびかけてみる。
「がおー!」と横のこいつはやっぱりこたえる。
よし名前がわかったからつぎはどこから来たのかきこうではないか。
「がおーお?」
「がおー」
ふむ…がおーというとこから来たのだな。
なるほどさっぱりわからん。
それならあっちへすいすいこっちへすいすい。
海をおよいで探そうではないか。
「がぼがぼ」とおぼれそうになる。
「がぼがぼー」と上のこいつは俺のツノをつかむ。
「ごぼぼ」とおぼれそうになる。
「ごぼぼー」と上のこいつは俺のツノをつかむ。
そうだ俺は泳ぎがとくいじゃないではないか。
いそいで陸にもどろうそうしよう。
しっぽをぶらぶらお尻をふりふりかんがえごと。
「がおがー」としっぽの上のこいつは笑う。
しっぽをぶらぶらお尻をふりふりかんがえごと。
「がーおー…」としっぽの上のこいつはあくびをする。
しっぽをぶらぶらお尻をふりふりかんがえ…
「「ぐー…ぐー…」」
ーいつもひとりぼっちだった。
ーいつもさびしくてさけんでいた。
ーいつもつよがってかいじゅうのふりをしていた。
そして上のこいつもひとりなのだと俺はしっているのだ。
だから真っ赤な太陽めがけて俺は叫ぶのだ。
大きなお尻に大きなしっぽ。大きな頭に小さな心。
そう俺はかいじゅう、かいじゅうなのである。
「がおー」とこいつがさびしくないように叫ぶ。
「がおー!」とこいつがはしゃぐようにポーズをとる。
「がおー…」といっしょにかなしんでやるのだ。
そう俺はかいじゅう、かいじゅうなのである。
世界も救えないヒーローにもなれないありがとうも言われない。
そう俺はかいじゅう、かいじゅうなのである。
「がおー」
「がおー?」
「がおお」
「がおーお」
「がお」
「がお…」
「がおー」
しっぽをぶらぶらお尻をふりふりかんがえごと。
きみは俺をこまらすちいさなかいじゅうなのである。
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