ひつじ

@Garuda

第1話

「ただいま…」玄関の扉を力なく開け、誰もいない部屋に向かってつぶやく。


森はるか、45歳。半年前に離婚した3児の母である。仕事は飲食店で副店長をしている。

長男は半年前の春に結婚して独立しており、次男と末っ子は同じく半年前の春に県外の大学に進学。

それを機に、モラハラの夫とやっとの思いで離婚をした。


長い間、恵まれてるとは言えない夫婦関係だったこともあり、離婚したら婚活をする!幸せな恋愛に憧れてると周囲の友人にも意気込んで話していたくらい、離婚後は自分のために楽しもうと期待していたはるかだった。


でも実際は日々の仕事に追われ、家に帰ると微動だにできない。仕事は好きだし楽しいけどこんなはずではと思いながらも日々が過ぎていく。

婚活どころか、趣味もする余裕がない。


「はぁ…今日も疲れた。でも、もうそろそろ彼氏が欲しいなぁ。」婚活パーティーに行きたくても、サービス業をやってる現状では行く時間がない。

今日こんなことあったよ!っていう話を一緒にしながら夜ゆっくりご飯が食べられる彼氏がいたらいいのに。


と、何気なく開いたスマホのニュース画面の下に「素敵な人と出会える!あなたもパートナーを探しませんか?」という広告が目に入った。


怪しい?怪しくない?でも、大手のところが運営してるサイトだし、変な人だと思ったらすぐ気付くよね。


これなら夜寝る前でもやり取りできるし、いい人がいるかもしれない。とりあえず登録を、っと。


登録を済ませたはるかは、いつものように疲れから深い眠りに入り込んだ。


朝、目を覚まし、いつものように身支度をし、朝ごはんを食べながら「そういえば昨日登録したやつ…」とサイトを開いてみると、16件のメッセージが着ていた。


「あなたのことが気になります。まずはメールからはじめませんか?」とどれも似たようなメッセージ。


どれどれ。と、メッセージをくれた人たちのプロフィールを見てみる。

どの人も将来結婚をにおわすようなプロフィール。みんな一人は嫌なバツイチの人たちがこんなにたくさんいるんだ。文面もどの人も真剣に書いてるように見える。

私も出来れば次は幸せな再がしたい。

真面目そうだけど、遊び心のある、趣味を持っている人がいい。

元主人は趣味がなく、友達も作らず休日は一日中テレビを見て過ごすような人だったから。


絶対に違うタイプの人にする。

そう思いながら、一人の人に返信を送ってみた。

これがとんでもないことに巻き込まれる幕開けだったとは、このときは知るよしもなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひつじ @Garuda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る