第二章 巨大小説投稿サイト<作家でたまごごはん>

第12話 巨大小説投稿サイト<作家でたまごごはん>

 謎のリアルサバゲー軍団に襲撃され、運営のほとんどが病院に入院している巨大小説投稿サイト<作家でたまごごはん>であるが、再建の中核だった運営の神楽舞とIT企業『カレイドスコープ』からフォローにきていた《複垢調査官》飛騨亜礼が失踪して暗礁に乗り上げていた。


 だが、ここにふたりの人物がIT企業『カレイドスコープ』から派遣され、ついに本格的再建がはじまろうとしていた。


「マリアさん、また、規約違反の通報メールが来てますよ。『サブチャンネルの規約違反スレ』から」


 坂本マリアはメガネ君こと、派遣社員の服部新三郎はっとりしんざぶろうに報告を受けてうんざりした顔をした。


「どんな内容よ?」


 メガネ君がメールの内容を読み上げる。


「え-と、要するに完結済み連載小説の仕様のスキをついて、完結済みにすることで、トップページに載る時間を意図的に増やすユーザーがいるが、規約違反じゃないかという内容です」


「あ、それね。確かに、連載小説の場合は時間が短いけど、頻繁に連載小説→完結済みにすることで、トップページに載る時間を意図的に増やすことができるのよね」


「それって、仕様変更すればいいのじゃないですか? 完結の日付が古い完結済み小説を最初に持ってきて、あたらしいやつは後の方に表示されるようにすれば」


「あ! メガネ君、あなた、なかなか使えるわね。ああ、そうしましょう。そうしましょう。メガネ君、頼むわ」

 

 坂本マリアは急に上機嫌になった。 


「はい、了解です」


 でも、メガネ君の報告はまだ続くのだった。


「それと、神楽坂舞子の『お嬢様は悪役令嬢』が、日間ランキング入って、ブックマーク一万五千、評価ポイントは40000ポイントで五芒星出版から出版依頼が来てるみたいです。確か、失踪中の運営の神楽舞さんの作品だと引き継ぎ書に書かれてますが」


「げ! 舞さん、そんなもの書いてたの?」


 坂本マリアは本当に驚いているようだった。

   

「ファンからも100通ほど更新はまだか! 神楽坂さんはどうしたのですか?というメールも殺到してます」


 メガネ君も困った顔をしていた。


「うーーーーそうだ! ゴーストよ。これはメガネ君がゴーストライターになって適当に更新しておいて」


「そりゃ、さすがに、まずんじゃないですか?」


「メガネ君、あなた、『二―ト忍者の戦国転生記』を書いてるでしょう。ブックマーク3000、評価ポイントは10000ポイントついてるでしょう! 書けないとは言わせないわ! 書いてちょうだい! それと五芒星出版には出版OKと伝えておいてね」


「確かに、舞さんの引き継ぎ書には出版依頼が来たら出版OKとか書かれてますが、なんでこんなことを書いたのかは謎ですね」


「やはり、ワナビ―が高じて<作家でたまごごはん>に入社しただけあって、ワナビ―魂が騒いだのよ。そうに違いないわ!」


 何がどうなのか、意味不明だが、メガネ君的には上司の命令なので納得せざる負えなかった。


「それと、飛騨さんの『聖徳太子の志能便しのび』は………」


「あんな底辺作家の駄作は更新の必要なしよ!」


「了解です」


 そうはいいつつ、歴史小説ファンのメガネ君は、飛騨の『聖徳太子の志能便しのび』の方がむしろ書きたいのであった。


 結局、やはり、飛騨の引き継ぎ書に従い、更新することになって、『二―ト忍者の戦国転生記』の更新頻度がガタ落ちになるのだった。


 面倒な仕事は僕に振るんだからマリアさんは!と途方に暮れるメガネ君であった。 


 しかし、規約違反の通報メールはまだ序の口であった。

 坂本マリアとメガネ君の苦闘は続く。

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