第10話 遅れてきた英雄
「カオルちゃん、ありがとう。ほんと、命拾いしたわ」
神楽舞の言葉に風守カオルは静かにうなづいた。
「間に合って良かったわ。まあ、このビルの七階にいたんだけどね」
風守カオルはいつもの黒のジャージにスニーカーという軽装で椅子に座っている。
ショートカットの黒髪に大きな瞳、何気ない仕草に黒豹のようなしなやかさがある少女である。
黒い直刀を杖のようについていたが、
神楽舞は勤務していた小説投稿サイト『作家でたまごごはん』のあったビルの7階にいた。
そこは公安を隠れ蓑としている秘密結社≪
今風に言えば「セーフハウス」というのかな。
左手のケガは銃弾がかすめただけだったようで、公安の救急医の応急処置を受けて帰ってきていた。
「しかし、今回のファインプレーは何と言っても飛騨君ね。飛騨君が神沢社長に電話連絡してくれたお蔭で助かったようなものだもの」
珍しく飛騨をほめる舞であった。
「いや、俺ももう間に合わないと思ってたよ。舞さんが無事で良かったよ」
飛騨もちょっと照れている。
サイバーグラスは今日は胸ポケットに入っていた。
「私も東京でいろいろあったので、ほら、京都でお花見でもしようと思ってここに来てたのよ。もちろん、京都府警から要請があった『雛流しの呪法事件』の捜査の指揮もあったりして、カオルちゃんに来てもらっていたのも良かったのだけど」
ダークレッドのサイバーグラスをした神沢優は事情説明をしてくれた。
黒いコートの下に軍隊の制服のようなものを着ていている。
が、日本のどの組織のものとも違っていた。
飛騨君のサイバーグラスは神沢社長の影響かしら?
でも、会ったのは最近のはずなんだけどね。
すでに京都府警が現場検証に入っていたが、マスコミへの公式発表はテロ事件ということで落ち着いていた。
「だけど、あの襲撃者は一体、何者なんですか?」
飛騨は当然の疑問を尋ねた。
「あれね。彼らは《ある組織》によってこの世界のどこかや異世界から転送されてきて、デスゲームに強制的に参加させられてるのよ。東京でそういう事件があったんだけど、その組織と公安というか、≪
神沢優はトンデモナイ真相を語った。
「いや、それって……」
飛騨は絶句した。
「やっぱり、そういうことだったのね」
舞はうすうす予想してたことだったので驚きもしなかった。
「ということで、飛騨君、この秘密を知ってしまったからは、明日から公安というか、≪
神沢優は当然のように言った。
「それって、半ば強制では?」
飛騨はあきれた。
「職務は、そうね、複垢調査官っていうのはどう?」
神沢優の口元が笑っていた。
「それ、いいわね」
神楽舞もくすりと笑った。
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