第3話 小説
「飛騨君、読んだわよ、飛田礼の新作。『聖徳太子の
神楽舞はいつもやられてる腹いせとばかりに飛騨にツッコミを入れた。
「いいんですよ。ブックマークが5つで、評価ポイントが30ポイントで、日間ランキングなんか載らなくても。楽しんで書いてるんだから」
Skype越しの声はいつになく弱々しい。
「そうね。元々、『作家でたまごごはん』の潜入調査が目的で登録したんだから、小説の内容は関係ないしね」
嫌味を言ってやった。
はあ、すっきりするわ。
「舞さん、そんなことより、神楽坂舞子の『お嬢様は悪役令嬢』は好調じゃないですか! ブックマーク5千オーバー、評価ポイントは12000ポイントだと、もうすぐ書籍化あるかもしれませんよ」
「いやー、困ったなー、ちょっと趣味で書いただけなのに、才能って恐ろしいわね。ほほほほほ」
いや、笑い方が悪役令嬢になっちゃった。
「しかし、運営スタッフさんはみんなアカウント持ってるのですか?」
「そうね。小説投稿サイトを作るぐらいだから、みんな小説が好きなのよ。ほとんどの人が小説書いて投稿してるのよ」
「そうなんだ。運営も中の人は人間ですし、規約違反だとしても、苦労して書いた投稿小説を削除する時はつらいでしょう」
「正直、つらいわ。でも、規約違反を放置するとこのサイトの公平性が保てないし、仕事だと割り切ることにしてるわ」
ふと、ため息がでる。
「そうですね。まあ、僕も仕事ですし、仕方ないと思っています」
今日はなんだかいいことを言う飛騨君だわね。
「あれ、これは………」
「どうしたの? 飛騨君」
「いや、複垢のアカウント削除したら、僕の作品のブックマークが2に減って、評価ポイントが10ポイントに減っちゃいました」
飛騨の声に力はなかった。
「飛騨君………」
ちょっと切ないわね。
三月初旬である。
春のBAN祭りは、まだまだ続く。
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