第2話 美少女魔導師とうじょう。
目が覚めたら、シュミの奴らは消えてた。
樫の木も、キレーな草原も、みんな俺様の大好きな姿のまんま無事だった。
ああ、すげー良かった、もう全身から力が抜けて、笑っちゃったね。
俺様の呪文も無事成功したみたいだし。
極破邪法レミアス、下手するとあれ唱えただけで一気にじーさんになっちゃう奴もいるらしいからなあ。
顔に手を当てて確かめて見る限り、俺様の肌はツルツルよ。
さっき唱えたのは、術者の命運を捧げて光の王っていうカザ最強の精霊神から邪悪な力を正しいに還元する魔法を発動するという、正法の中でも最も難易度の高い『極大破邪魔導中和法レミアス』っつー今の世では殆ど唱える者のいない魔法なんだ。
とんでもなく強力な中和魔法であるそれは、その効果と引き換えに術者の運命が無茶苦茶になってしまうという。
喜劇になるか悲劇になるかはその人間の持ちうる資質次第とかいうけれど、俺様どうなっちゃうんだろうなあ。
自分を待つ運命に少し不安になってため息をつく。
「あー…アアッ?」
耳に聞こえる声に、俺様確信する。
うん、無茶苦茶になったね!
「あああああーあー」
声を出すと、慣れ親しんできた俺様の少年らしいアルトボイスは鈴を転がすようなソプラノになってる。
少し視線を下にやると、なにやら胸元に膨らみが!
ぎゅっと掴むとオッパイの感触ダヨ!柔らかいヨ!でも揉まれる感覚も自・分!
「うああああー…なんだよこれー!」
ああ、叫び声まで可愛いとか!さすが俺!
とりあえず様々な問題はおいといて、樫の根本に置いた学生カバンから遠視用の手鏡を取り出す。
丸い鏡面に映った俺様は、
「おおおおお…」
すっげー美少女だった。
例えるなら、ほら、睡蓮の精っているじゃん。 薄い緑のヴェールに、乳白色の細い身体を包んでさ。 潤んだ薄い緑の宝石みたいな大きな瞳に、桃色の唇。
人形みたいな可憐な姿で、艶やかな若葉色の髪をしてるってやつ。
あれを、空色のキラキラした目とツヤツヤキューティクルな銀髪に変えたのが俺! ザ・俺様サキちゃん!
いやもー、安心した!ばあちゃんが誉めてくれた俺様の美貌は損なわれてない!
でもなー、これずっとこのままなのかな?
一生このままだと女の子と付き合えないジャン!女の子でもいい女の人もいるけど、やっぱ男の子の身体で女の子とね!ね?ねえ!
俺様みたいな美少年が一人消えてしまうなんて世界の損失だよね!
で、俺様決めた。
「メルセラに会って、何とかしてもらおー!」
会った事ないけど、謁見はいつでもしてくれるらしいし。
それでいて大魔導師の姿をちゃんと見た人っていないらしいんだけど、まあ近くに住んでるんだから頼っていいだろ。
なーんて、お気楽に考えてたんだけど。
あの頃の俺様は、ホント全てにおいて子供だったよなあ。
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