第19話

 とりあえず適当なベンチに腰掛け、武器、防具の性能を見ていく。


 武器

 黒甜・秋

 作成者 クロナ リザ

 クロナが製作した部品をリザが組み立てた合作。

 評価4



 うん、全然情報無いですね。いや、少なすぎるだろ?これはひどい。なんだこれ。

 評価4だから初心者シリーズよりはだいぶ強いんだろうけどさ。まぁ、いいわ。

 次、防具。正直期待してない。性能ではなく詳細のほうを。


 防具

 黒甜・冬

 作成者 リザ

 熊の革をベースに作られた真っ黒の防具。コート、シャツ、ズボン、この3点で1つの扱いとなっている。

 評価4


 おおう!?装備枠3つ使ってると思ってたけどまさかの1つか。どうなってんだろう。不思議防具だな。そしてまぁ、予想通りなんもわかんねぇっすわ。3点1セットってことと武器とシリーズっぽいことしかわからない。

 というか春と夏はどうした。すごく気になるんだけど。将来的に増えるのか?アクセサリーとかで。

 まぁ、考えても仕方ないから考えなくていいか。

 さて、これで確認も終わったし……1回ログアウトして飯食べて寝よ……。その後にゴリラ!うん!

 あ、けどリアルの明日って家族とのリーグ戦だわ。ならその後に行こ……。仕方ない、うん。それまでに誰にも狩られないことを祈るしかないな。

 そう願いログアウトした。


 そして、ゲーム内2日後。広場で待ち合わせをしている。見たら気づく、などと全員が言うものだから広場で、としか場所の指定はない。いや、気づくわけないだろ?

 ちなみに流石にスナイパー持ち歩くのはアレなのですでに拳銃2丁とあるものに変えている。

 ん?広場の隅が騒がしくなったな。なんか起きたのか?

 とりあえず向かってみる。いや、人多くて分かんないわ。隣に立っていた男性に声をかける。


 「なにごとなんだよこれ」

 「ん?ああ、どうも星王が来たみたいだぞ」

 「だれそれ」

 「は!?知らないのか!?周りを取り巻くストックされた発動前の魔法は星のごとく!全てを把握し、操る者!星々の王!」

 「いや、しらん。だれそれ」


 いやまじで、そんな恥ずかしい知り合いいないからな俺。むしろゲーム内の知り合いとかあの5人と教官くらいだぞ。リーシェ?しらん。


 「あ、おい!星王がこっちにきたぞ!」

 「ゆするな!俺待ち人いるから!離せ!」


 なんか嫌な予感しかしねぇよ!?恥ずかしい知り合いできちゃうかも知れないだろ!?だからお前俺の肩離しやがれ!!

 力強いんだよ!


 「クロ兄、でしょ?」


 ほら......出来ちゃった。いや、どの道出来るわけだけどさ、もっと目立たない方法でがお兄ちゃん良かったよ……。


 「よう……シロ」


 いたのは白髪紅眼のシロ。いや、うん。見た目コイツ現実のままだな。なんて言うかシロだわ。


 「クロ兄も見た目そのまま。ヒスイとハイカは?」

 「まだ、だけど嫌な予感する。兄ちゃん逃げていい?」

 「ダメ」

 「だよねー……」


 でさ、隣のお前。いつまで俺の肩もっとくつもり?なんなのホモなの?離せよ!

 また違う方向でざわめき起こってんだよ!また変な知り合い増えるから!ほら!さっさと離せ!

 なんでこんな力強いの!?


 「ん、来た」

 「おそらくお前達であろう?」

 「……」


 周りでは、「神速夫妻だ!」とか呼ばれてるしさぁ。なんでこんな有名人のオフ会みたいな雰囲気になっちゃってんの?ねぇ!

 ていうか夫妻って、バラしてるのかよ。


 「ん?クロナよ、隣の肩を持っている人は知り合いか?」

 「は、はい!自分はただの見物人です!ええ!」


 あ、逃げた。俺をそんな恨めしい眼で見てこられても何とも言えんのだが。

 今回は俺のせいじゃないって言えるって!俺が声掛けて……シロがきて……ハイカとヒスイがきて……。

 あ、やべ。俺のせいだったわ。いやでもほら、けど俺離してもらえるように頑張ってたし?わるくないよね?


 「はいはい。注目集めてるから場所を移動しましょう」

 「おう!そうだな!」


 うん、俺も早くここからいなくなりたい……。場違い感凄いもん……。



 ◇

 場所は移って、西門と北門の中間当たりの城壁のそば。野次馬が半分位付いてきてるけどいいのだろうか?


 「さて!始めようではないか!順番はどうする!」

 「俺はいつでも」

 「なら、男対決から行くか!」

 「いいよ」


 ハイカからPVP申請が来た。HPが全損する、もしくは降参で決着か。いいね。


 「さぁ!準備はいいか!」


 ハイカが拳を構える。やっぱり格闘なんですね……。


 「おーけ」


 カウントが始まる。30秒か、長いな。


 「《雷脚》」

 「なんだと!?」


 俺が雷脚を発動した瞬間野次馬がざわめき、ハイカが驚愕する。30秒の間に攻撃したら負けなんだろうが。攻撃しなければ何してもいいんだろう?

 ハイカに背中を見せ、後ろに全力で走る。

 周りから逃げたぞ!などの声が聞こえるが無視だ。真っ向からやって勝てるわけないだろう?

 300mほど間が空いた所で地面に向かい《爆裂掌》を打ち込む。

 これで土煙で俺が見えなくなっているはず。残り10秒か。充分だな。


 「《解除》」


 黒甜がもとの状態に戻る。つまり、スナイパーにだ。


 「《追尾弾》」


 カウントが終わると同時に打ち出す。轟音。

 くそ、終わってないってことは仕留め損なった。

 スナイパーを投げ捨て、横に全力で飛ぶ。するとさっきまで俺が伏せていた場所に拳が突き刺さった。ハイカだ。

 その状態は右腕を失い、血が急速に失われている。


 「よく避けた!!いい攻撃だったぞ!」

 「銃弾よけた奴に言われても嬉しくねぇっての!!」


 すでに雷脚を発動し、逃げに回っている。

 速度ではあちらのほうが若干早いな。後ろから迫る音を聞きながら走る。足音が消え……!!

 全力で前に飛ぶ。無様に地面に滑り込んだが、お陰でハイカの拳を避けれた。足音が消えたのは飛び出したからだ。

 すぐに立ち上がり走る。このままではそのうちハイカの攻撃を受けることになるだろうが、ハイカは血が失われていっているせいで動きが鈍くなってきている。逃げ切れる。


 「この……っ!!」

 「俺は俺の戦い方で戦う!はっ、わざわざあんたの土俵で戦うわけないだろ!」

 「だが、勝つのは俺だ!」


 ハイカの速度が上がった……?雷脚か!

 判断すると同時に練気を発動し、全力で飛び上がる。


「ぐぅっ!!」


 ハイカの蹴りを右足に食らい、吹き飛ばされる。まだ、まだ無くならないのか。

 空中で体制を整え、片足で着地。右足は使い物にはならないだろう。

 そして、逃げることはもう不可能だろう。


 「よく頑張った!だが!俺の勝ちだ!」


 ハイカが猛烈な勢いで掛けてくる。おそらく、あと数秒耐えれればハイカのHPは尽きる。だが、その数秒はこのままなら訪れないだろう。


 「《爆裂掌》《練気》」

 「当たると思っているのか!」


 思っているわけない。あんたにまともに攻撃を当てる手段は持ち合わせてない。けど、俺は今回に限り、あんたに攻撃を当てなくとも勝つことが出来る。


 「当てるのは、俺に、だ!!」


 自分の胸を打ち付ける。爆音、衝撃、激痛。そして、吹き飛ぶ感覚。ハイカが拳を振り抜いて倒れる気配を感じる。


 「ざまぁみろ……」


 おそらくコンマの差、ハイカのHPが先に尽き、俺の勝ちになった。

 勝敗が決まり、開始時点での位置に戻る。


 「おい……あいつ、最初何したんだ……?」

 「わかんねぇ……。神速がいきなり避けたと思ったら腕が吹き飛んでた」

 「ていうか、あいつ勝っちまったぞ!?誰だ!?」


 うん、なかなかにギャラリーには衝撃的な結果だったようだな。


 「まさか自爆とはな」

 「くっそいてぇわ、もうやんねぇ」

 「無茶しすぎ、黒にぃアブソーバ付けてないのに」

 「素が出てるぞ。イントネーション。てか、ハイカもどうせ付けてないだろうしお互い様だろ?」

 「まぁな!」


 いやぁ……勝ててよかった。ほんとに。


 「さて、次は私達女性勝負かしらね?シロノの土俵で戦ってあげるわ」


 ん?ヒスイも魔法職、シロも魔法職なら土俵も何も、最初から同じだろう?


 「クロ兄、やればわかる」


 俺のそんな疑問はシロのその一言で解決した。したというか思考を放棄した。うん、俺難しいこと考えるの好きじゃないし。


 「じゃ、始めましょうか」


 ヒスイとシロが距離を置いて、お互いの得物を構える。シロが指揮棒のような棒を2本。ヒスイは杖だな。

 そして始まったのは凄まじい魔法の打ち合い。

 シロは星王の由来となった、詠唱済みの発動前魔法を周りに浮遊させ、さらに新たに魔法を行使し打ち出している。同時にいくつもの魔法を行使しているようだ。

 対してヒスイは凄まじい速度で魔法を組み立てて対抗している。

 マルチタスクと体感時間の加速か。なんというかチート過ぎるのではないだろうか。

 使っているのが最初歩の魔力を打ち出すだけの魔法とはいえこれは異常だ。


 「むぅ、ジリ貧。勝負に出る」


 シロが周りに滞空させていた星の如き魔法を一つにまとめあげていく。今までの星とは比べ物にならない大きさ。さながら恒星と惑星。

 ただの魔力弾だが、この大きさでは当たるとつむだろう。


 「やっぱり撃ち合いじゃ勝てないわよね」


 ん?撃ち合いじゃ?ヒスイ魔法職だろ?もしかして一撃に特化している、という意味であろうか?

 シロが魔力弾を放つ。


 「『 神速』が本気を出すぞ!」


 野次馬が叫んだ。

 巨大な魔力弾とそれまでに繰り出せれていた魔力弾の弾幕がヒスイに向かい飛んでいく。これは無理だろう。


 「勝負には負けるけど、試合には勝たせてもらうわよ」


 ヒスイが前に向かい歩き出す。ふらふらと、まるで酔っ払っているかのような足取り。しかし、当たらない。魔力弾が自らヒスイを避けているかのように。

 巨大な魔力弾も避けられる。いや、あのさ。うん、ヒスイ後衛じゃないの……?

 シロに近づくにつれて物理的に避けられない弾が増える、が全てを撃ち落としながら歩み寄る。


 「むぅ……」


 一瞬、シロの周りに浮く魔力弾が揺らぐ。集中力が乱れたな。追い込まれて焦ってるな、あれ。


 「まだまだね。戦い方が大雑把。『 星王』なんて呼ばれているみたいだけれど、名前負けね」


 シロの胸にヒスイの杖が叩き込まれ、〇距離で魔力弾が直撃。勝負ありか。

 なんていうか、人外すぎるだろ。


 「『 神速』も『 星王』も人外すぎるだろ……。俺らと差ありすぎね?」

 「それだよな、ていうか『 神速夫婦』も『星王』も人外だけどあの黒いのもやべぇ……。運営調整下手くそかよ……」

 「なんか……悲しくなってくるわ……」


 野次馬、盛り上がるんじゃなくて盛り下がるんだよ。おかしいって。そして運営調節ヘタクソは激しく同意する。


 「無理、あれは反則」

 「シロおつかれ」

 「クロにぃ、あれは反則だと思う」

 「シロも充分反則だからな」


 割とマジでお前もヤバイ。


 「おお......!あの黒いのまともだ!」

 「『 神速(夫)』は基準おかしいからな!」

 「なんか……親近感が……!」


 変なところで親近感持つな。帰れ。そこでヒスイも帰ってきた。


 「さて、次はだれがやる?」


 ……忘れてた。

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