第17話

「さ、作り始めましょう。申し訳ないのだけれど私が防具を作る工程は見せることはできないわ」

 「そうか、まぁいいよ。種スキルなんだろ?」

 「ええ、私の少し特殊なのよ……。ま、いいわ。銃なんて鍛冶でつくれるものなのかしらね?」

「そうだよなぁ…...。それが一番の問題なんだよなぁ…...」

 「正直、あんな小さなパーツを狂いなく作るのは不可能にしか思えないのよね」

 「だよね、俺もそう思う」

 「まぁ、ものは試しに作りましょう」


 結論から言おう。無理です、はい。いやいや、あれ作るの無理じゃね?流石に、うん。

 だって、指先くらいの大きさのパーツとかさ、まだまだ設備も整ってない現状の鍛冶場では流石に正確に作ることは不可能だろ?ね?


 「こうなると……こういう事に特化した種スキル持ちに頼むしかないわね……」


 リザが悔しそうに呟く。あ、それ、行けんじゃない?


 「なぁ」

 「なにかしら……」

 「何かいらない武器持ってない?」

 「適当な武器で戦う気……?まぁ、いいわ。この剣、試しうちしたものだから」

 「おっけ、ありがとう」


 すっ、と目を閉じる。パーツをイメージしろ。確実に足りうる量だけでいい。イメージ……。


 「ちょ、ちょっと?どうしたの?」


 無視。集中。持った剣が動いた。


 「え…...?」

 「ん、上手くいった」

 「な、何今の……」

 「え、俺の種スキル」


 パーツが剣から切り離され、床に落ちている。剣の刀身が半分ほどになっていた。


 「種スキル…...!?まさか戦闘系じゃなくて生産系よりのスキルだなんて…...。いえ、そうじゃなくて!そんな簡単に他人に見せちゃダメでしょう!」

 「んー、いやまぁリザにならいいかと。ほかの人にはみせねーよ?」

 「あぅ……。い、いいかと、じゃないわよ!他人の種スキルとか戦闘系ならまだしも生産職は見せるものじゃないのに…...」

 「勘違いしてるんじゃないか?俺、これ戦闘系だぞ」

 「は......?どこが」

 「いや、武器にじゃないとこれ使えねーからな」

 「だーかーらー!そういう条件気軽に言わないの!」

 「さーせん」

 「ていうか…...戦闘系の種スキルに負けた…...」


 あ、なんか落ち込んだ。俺が悪いの?違うよね?俺悪くないよね?


 「あなたが悪いのよ......!」


 俺が悪いみたい。なんかナチュラルに思考読まれるのも慣れてきた。もうこれで会話が成立しそうな勢いだよね。喋らなくていいかな?


 「良い訳ないでしょう。もう、いいわ。残りのパーツも作ってちょうだい。これ、いらない武器」


 ドチャ、っと武器が出てきた。いや比喩でもなく。工房に付けられた無限収納から出したのか。


 「さ、さっさと作りましょう」

 「割り切るの早いなおい。さっきまで見せるなとか云々言ってたのに」

 「もう見てしまったものは仕方ないわ。なら使えばいいじゃない。それと、もう誰にも見せちゃダメよ。特に生産職には」

 「なんで」

 「どんななまくらでも名刀に引き上げることができるような能力だもの。今はまだギルドの数が少ないけれど、増えてくれば引き抜きが、ね?」


 あー......引き抜きとかあるのか。ていうかそんなのの標的になる可能性あるポジションになるとか俺考えてなかったわ。ていうか考えれるわけないだろ。

 その後パーツを全部作り出し、リザに組み立てられて出来たのは長大なスナイパーライフル。


 「作ってから言うのもなんだけれど、これ完全に遠距離でしか使えないわよね」

 「うん、けど組み替えればいいからな」

 「もう、最初から剣を銃に変えた方が良かったじゃない、それ」

 「いや、そんなことないぞ。試したけど、武器の分類は変化しないから剣扱いだった」


 不便すぎる。銃の形した剣。しかも切れない。だれが使うんだよ。


 「え、これって全部剣から作られたパーツよね」

 「うん」

 「なら…...なるほど。そういうこと。パーツだから組み立てた時の武器種になるってことね」

 「そういうわけ」


 なんで俺がそんなことしってるのかって?ググッたからだよ。グー〇ル先生ありがとう。


 「次は防具作りだけど、私だけ見せないのも不利よね」


 いや、そんなことないけどな。俺気にしない。


 「私が気にするのよ。だから、少しだけ見せてあげるわ。ただ、誰にも言わないでちょうだい。それこそギルドメンバーにも、どういう感じかすら」


 そこまでか。まぁ、いいよ。


 「分かった、約束しよう」

 「ならいいわ。といっても最初は普通に防具を作るんだけどね」


 防具作りってなかなか時間がかかるようだ。全員分できるまで2日かかったぞ。ずっと横で見てた。凄いな、生産職の人達。

 ちなみに、俺のは見た目完全にタダの服。ルイは軽鎧、ラウェルナはローブ、シエルは体の局所のみのプロテクター、ロックはフルプレート、リザは見た目は完全に服だな。というかドレス?


 「ここから見たことは他言無用よ」


 そういって無限収納になっている物入れから取り出したのは、宝石?


 「そ、宝石」


 宝石をすり鉢でゴリゴリと剃り始めた……ん!?

 たしかに純度低かったし、小さかったけどそこそこ高いはずなんだが!

 すり潰され、宝石が粉になった。そして防具をなんか机の上に並べると粉をそこにばら蒔いた。

 防具にかけられた粉が輝き始める。どうなるんだ……?

 あ、輝きが消えた。


 「終り」

 「何したのかわかんねぇ」

 「まぁ、ほんとに宝石の粉かけただけなんだけれども」


 それだけのようです。けどそれに意味あるんだろうなぁ……。


 「はい、これ」


 俺の防具が手渡される。真っ黒のフードまで付いたコートだ、そしてその中に着るためのシャツとズボン。全て真っ黒。完全にフード付けたら怪しい人だな。お巡りさんに捕まる。


 「着てきて、サイズの微調整なんかもするから」


 ということで着てみた。ギルドにたまたまいたギルドメンバーのドン引きしてた。リザだけ満足そうな顔してた。引くなよ……。

 まぁ、これでゴリラにリベンジマッチ仕掛けれるな!


 ピコン!


 ん?運営からの連絡か。

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