第10話
休憩の後、ダンジョン探索は再開された。ボス部屋の奥に隠し扉があり、それをルイが発見していた。
レンジャー技能でももってるのだろうか?
そのままその扉を入り、少し進むと部屋を発見。今までの同じように入ると、ルークとキングがいた。
しかし、クイーンよりも弱いルークとMPの減ったキング相手では勝負にならず、そのまま決着となった。
「なんていうか、最後あっけないな」
思わずつぶやいた言葉に全員が同意する。さっきのルーク戦で本来はもっと消耗させられたんだろうか?真相は運営のみが知り得ることか。
そのまま街へともどり、キングのドロップアイテムである『新規ギルド作成申請書』を役所に提出して晴れて『縛られた翼』は正式にギルドとなった。
なんでゴブリンキングからそのようなアイテムが落ちるのかはβの時からのプレイヤー全員の謎である。ほんと、役所で普通に渡せよ。なんでゴブリンキングしか持ってないんだ。
ちなみに、役所にギルド申請をしないと正式なギルドとして認められない。訳ではない。実は立てることはできるのだが、ギルドを建てた際の恩恵が少なくなってしまうのだ。申請をしなければ、ギルドチャットなどのメニューからできるギルドコマンドしかできないが、申請をした場合は街にある建物を1件、ギルドホームとして借り受けることができるのだ。しかも無料!
まぁ、別個にギルドホームを買うことも出来るんだけどね。
そのままギルドホームへと向かい、打ち上げをする。食べ物や飲み物は屋台やお店で買ってきたものと女性陣と、意外にもロックが料理したものだ。
「では!『縛られた翼』の設立が無事に済んだことに、かんぱい!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
ルイが音戸を取り、打ち上げが始まる。とりあえずそこにある骨付きの肉を食べるか。リアルでは絶対に食えないような、大きな骨付き肉を。
「もらい!」
「あ、ロック!てめ!」
「はっはっは!クロナよ!早い者勝ちなんだぜ!」
「おいこら!こすいぞ!」
「しらんしらん!」
手を伸ばしたところでロックがひょい、と横から取っていた。まぁ、他にも骨付き肉はあるしな。こっちでいいや。手を伸ばすと
「もらい!クロニャくーん、早い者勝ちだよ☆」
シエルに取られた。
「……」
い、いや。他にもあるからな。ここは年上として大人な対応を……。
まだ残る骨付き肉を取ろうとすると……
「では私も。早い者勝ちなんですよね?クロナ君」
「いや、いいでしたの俺じゃないから!」
言い出したのロックだからな!?
すると、そこで横からルイが話しかけてきた。
「いやぁ、ごめんね。クロナ」
「いやいいよ。まだ何本も残ってるし」
あやまってきたから笑って許し、残る骨付き肉に手を伸ばす。するとルイの手が伸びてきて横からその肉をかっさらっていった。
「まだ、残ってるもんね?クロナ」
ルイがニヤニヤしながら話しかけてくる。このやろう……!
「あ、ああ!まだ、一本あるし!?別に!いいからな!」
ていうか、なくなるの早いわ。ほかの料理一切減ってないじゃん!おいロック!お前の皿に骨が3本あるようにみえるんだが!?
シエルも!4本あるよな!な!自重しようぜ!?
「ほら、最後の1本さえ食べれれば別に……」
最後の1本に手を伸ばそうと、周りを見るのをやめてその1本を見た時には既に遅かった。誰かの手が骨を掴んでいた。
「あ!おまえら!何本も食わずに俺にも1本くらい!」
言いながら取った主をみると……リザだった。
「……なによ。私は一本目よ」
「う、でも俺ずっとほかのヤツに」
「無茶したくせに」
ぼそっと、つぶやかれたその言葉。ほかのみんなもじろーっと見てくる。いや!シエル!ロック!お前らがそんな目をするのはどうなんだ!?
「……すいませんでした。諦めます」
素直にここは引き下がるか。別にここで食べ逃したら一生食べれないというわけでもないだろうし。
「……ん」
「……ん?」
「仕方ないから、上げる。私はいつでも食べれるし」
リザがすっ、と肉を差し出してくれる。女神ですか!?
「頂きます!」
肉にかぶりつく。うわうま!ピリ辛の味付けがされた肉は、噛み付いた瞬間に口の中に肉汁を大量に流し込んでくる。中までしっかりと焼かれているが、パサつく、なんてこともなくに旨みが全て凝縮されている。なんだこれうまいな!
「すげぇうまいな!やば!」
「そう?ありがとう」
なぜかリザが感謝の言葉を述べた。ん?これってリザが作ったの?
「なによ、その意外そうな目は。私が料理できることがそんなに驚くようなことかしら?」
「いや……。なんというか、リザはこう、箱入りそうな雰囲気があったからな」
「まぁ、ある意味間違いではないのかしらね」
「にしてもあれだな。これなら毎日食いたいな」
「何を馬鹿なことを。お世辞はもういいから食べなさい」
お世辞じゃないんだけどな。残った肉を味わって食べる。チラチラリザがこちらを見てくる。なんだ?やっぱり食べたかったのか?
それなら譲ってくれなくても良かったのに。
「やっぱり食べたかったのか?悪いな」
「違うわよ!そんなに食い意地は貼ってないわ」
何故か怒られた。まぁ、女性にこんなこと言った俺が悪いよなぁ。デリカシーが無かったか。
ほかの料理も食べつつ、みんなと喋ってわいわいと楽しむ。
「ん?このローストビーフうまいな」
「おう、よかったな」
「買ったやつか?誰か作ったやつか?」
またリザだったりしてな。というかあの短時間の調理でローストビーフ作るってどうなってんだろう。やはりスキルがあってそれでどうにかしてるのだろうか。
「それか?それは俺が作ったやつだな!気に入って貰えてよかった!」
まさかのロック!?今まで食べた料理で一番美味かったぞ!?意外過ぎてなんも言えないんだけど!!
そんなふうに食べて飲んで。全ての料理が無くなった。18時くらいから打ち上げしていたが、すでに22時か。4時間も経ってるんだな。
「そして!最後にデザートだ!」
ロックが台所に引っ込み(ギルドホームは台所に風呂場、鍛冶場などなんでもある)ケーキを持ってきた。すごいな、お店に置いてあっても違和感のないレベルだぞ。だれが作ったんだろうか。ラウェルナとかかな?そういうのできそうだしな。
「さぁ!我がギルドのマスターよ!切ってくれ!」
「え、僕が切るの?」
「ま、だとうだよねー」
「そうですね、適任かと」
「いいんじゃないかしら?」
「ああ、異論ない」
全員が同意し、ルイに包丁が渡る。緊張した面持ちでそれを受け取ったルイ。いや、そこまで身構えなくてもいいと思うぞ。思わずに苦笑いしてしまう。
そして、ケーキが6等分に切られ、全員に配られる。
そして、1口食べてみると。
「は!?うまいな!!」
思わず口に出てしまう美味しさだった。このギルド確実に料理の道で店出せるぞ!!レベル高いわ!
「お?ほんとだ。すごく美味しいね。だれが作ったのか?買ったやつにケーキはなかったよね?」
ルイも思わず、といった感じで感想を口にする。何を買ったかまで覚えているとはさすが過ぎる。ちなみに打ち上げの料金はギルド資金から出されていたりする。
ギルド資金は今回のクエストのドロップを売ったお金を全部あてて、あとは各自で余裕があるときに入れていく方針だ。
「ああ。ケーキはロックが作ったんだよー。すごいでしよう?」
シエルが何故か胸をはって自慢げに答える。いや、なんでお前が自慢げにしてるんだよ。
というかロック料理美味すぎるだろ!?
「恥ずかしい話だが、リアルではお菓子作りが趣味なもんでな!」
「「「「……」」」」
沈黙が降りる。
「ふふふふ。似合わなすぎますよ!あはははは!」
ラウェルナが笑いだし、それをきっかけに全員が笑い出す。
ああ、楽しいな。この世界は、すごく楽しいな。
そう考えながら、俺も心のそこから笑っていた。
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