第4話
肌を指す痛み、震える手足、噛み合わない歯。凄まじくリアル。視界に映る緑色、黄色、青色の3本のバー表記が無ければ、あるいはログインした記憶が無ければ正しく異世界と思ってしまうだろう。
だが。だが、である。
「なんで俺雪山にいんのぉぉぉぉお!?」
そう、何故か雪山にいる。なんでですかねぇ?
あれか、バクですか?死にそうなんですけど。
とりあえず下山しよ……。体が言う事を聞かないのを無理矢理に動かし、少しずつ下に降りていく。
幸いなのは見渡した感じで敵モブがいない事か。見方も当然のようにいないけどな!これあれだよね、明らかに死に戻ったほうが早いよね。さすがにそれはしないけどさ。
そう言えば見た目はどうなってるのだろうか。ゲームが始まっているならキャラクターが出来上がってるはずだ。
「たしかメニューを出せば外見が見れる、と白が言っていたよな」
我が妹はほんとによく調べているな。メニューの開き方はメニュー、という言葉を強くイメージするだけだ。メニューメニューメニューメニューメニューメニューメニューメニューメニューメニューメニュー……メニューがゲシュタルト崩壊してきたんだけどまだひらかねーの?
ピコン!
「あ、でた……けどなんだこれ?最終調整ステージのために開けません?」
最終調整ステージ、とは何のことなんだろうか。分からない。分からないが分かったこともある。今のこの現状がバクでもなんでもないということだ。なら、進めるところまで行こうじゃないか。
あ、それともう一つ分かることがあるな。現状ログアウト不可ということ、そして俺の今の体型はリアルに酷似してるということだ。
ログアウトは試してみたからわかる。まぁ、恐らくだがこの場所はかなりの倍率で時間が加速されているんじゃないだろうか。だってそうじゃないと大変なことになるしね。
そして体型だが、歩いていて違和感がないことからの推測である。さすがにリアル180の俺がいきなり150とかになれば歩く感覚が大幅に変わるだろうからな。そんなに大幅に体型が変わってまともに動ける人間なんていな……親父なら行けるかもな。いやあれ人間じゃないからノーカンで。
そんなこんなで1時間。ようやく雲を抜けた。そう雲を抜けたのだ。どんだけ高い山だったんですかね?そして滑らか過ぎる斜面だったな。普通の山ならここまでスムーズに移動は出来ない、というか素人の俺がここまで生きることはできないだろう。
雲を抜けたお陰で見えた、山裾に広がる広大な森林が。
「は、はははは。ここからさらに切れ目の見えないジャングルかよ……。けど、砂漠とかじゃないだけ全然楽だ」
砂漠が広がってたらまじで諦めて自殺してしに戻りするわ。
《最終調節終了。キャラクターの作成……完了。いまから30秒後に第一の街へと転送いたします》
どうやら終わったようだ。最終調整ってのはキャラクター作成の、って事か。にしてもやっとスタートか。これだけ期待させたんだ、楽しませてくれよ?
《転送を開始します。ようこそ、異世界Arcadiaへ》
その言葉が耳に届き、光が体を包み込んだ。堪らず目をつむり、次の瞬間。俺の周りに音が溢れた。
おそるおそる目を開くとそこは、街の中の広場であった。
◇
「すごい……」
思わず漏れでた言葉。周りの人を見ても同じような感想なのだろう。口を開いてポカン、としてる人やすげぇすげえ!と叫んでる者。微笑ましそうに見てる人はβ出身だろうか。
にしても、今も転移されて来る人がいるということは、先に行ってる人もいるということだろうか。そうならば完全に出遅れた。
が、出遅れたなら出遅れたで仕方ない。とりあえず見た目とステータスの確認が先決かな。
広場の隅にあるベンチに座りメニューを開く。
右に外見、左に上から、ステータス、インベントリ、装備、マップ、フレンド、ギルド、設定、ログアウトとなっている。
外見は……なんかほとんどリアルと変わらないんだがどうなってんだよ……。鎖骨くらいまである黒い綺麗な髪の毛、180cmほどの身長、細身の体。顔つきは普通だ。若干、目つきが悪く見えなくもない。若干だからな?
唯一違うところがあるとすれば、瞳の色が青色になっているところだろうか。
周りを見渡してみる。頭の上に耳をはやした人や長い耳を持った人、リザードマン、ワーウルフなども多種多様な種類の人がいる。
なんで俺普通なんだよ……。つまんねぇ。
ま、いいか。次見てみよう。ステータスだ。
こんな感じだった。
名前 クロナ
性別 男
種族 ヒューマン
ステータス
LV1
HP 150
SP 120
MP 110
STR 15
VIT 20
INT 11
MIN 13
AGI 17
DEX 16
称号 なし
二つ名 なし
スキル
銃Lv1
錬金Lv1
鍛冶Lv1
格闘Lv1
種Lv1
という感じだ。
ステータスのSPとMPの違いは、近接職が使うのがSPで、魔法職が使うのがMPだ。細かくいうと違うのだが、大雑把にはそんな感じ。
称号はまぁ、ないよな。二つ名?というのはよく分からないけど始まった時からある訳もない。
スキルの説明だが、詳細を見てみるとこんな感じである。
銃Lv1
銃を扱えるようになるスキル。銃使用時に補正がかかる。補正はレベルに依存。
使用可能アーツ
爆裂弾
バーストバレット
そのまんまだな。
ちなみにアーツとは、まぁあれだ。必殺技的なあれだよ。
次。
錬金Lv1
錬金術が行使できるようになるスキル。レベルにより錬金難易度への補正が入る。
うん、よく分からない。この錬金術とはあれなんだろうか?よくある、魔術的な錬金術なのだろうか?
分からないな。次。
鍛冶Lv1
鍛冶を行うことができるようになるスキル。鍛冶を行う際補正がかかる。補正はレベルに依存。
うん、そのまま。次。
格闘Lv1
自分の体を武器としての先頭を行えるようになる。武器を使用しない攻撃にダメージ補正。補正はレベルに依存。
使用可能アーツ
爆裂掌
雷脚
これも特にいうことないな。次。
種Lv1
全プレイヤー共通スキル。プレイヤーの行動により独自の成長を遂げる。一つとして同じものは出来ないオリジナルのスキル。
気になっていたが、胸熱スキル来たな!これはロマンがあり過ぎるぞ!ヒャッハー!
……テンションが上がりすぎて世紀末化してしまったわ。いや、にしてもこのスキル、凄いな。
どう成長するか、楽しみだ。
さて、こうして見てみたが、木工が無いのはなぜなんだ!あんなに頑張って熊を彫ったのに!
というか!アイニ!許さんぞ!俺の力作、熊の木彫りを慈悲もなく奪いやがって!
……いや、考えても仕方ない。
インベントリに入ってるものを確認するか。
まず、所持金。50000gとなっている。物価が分からないからなんとも言えないな……。
そして持ち物をスクロールしていく、といっても数も少ないが。
初心者用自動小銃、初心者用中折れ式リボルバー。これは武器だろうな。
ポーション類に携帯食料。あとは初心者用の防具が一式。銃の玉。玉あんのか。説明を読んでみると玉は強く思えばインベントリを開かなくても出せるらしい。ポーション類も同様に可能のようだ。
そして、インベントリの最後にこれがあった。
木彫りの熊
作成者 クロナ
クロナにより作られた木彫りの熊。作りは荒いが作成者が一生懸命作ったことが伝わってくる品。
評価2
うぉぉぉぉぉぉぉお!!アイニ!!ありがとう!!慈悲がないとか思ってごめん!!
軽く泣いてしまった。通行人が見てきたがそんなことはささいなことだ。ちなみに評価2、がどのくらいの高さかは分からないが初心者用装備は全て評価1だった。
落ち着いてきたから装備品見てみよう。というか今の俺装備してる物あるのか?服は着ていたが。
どうやらしっかりと装備していたようだ。初期の服というシリーズを。シャツとズボン、そしてサンダルの3つだけだが。
装備画面を見たところ、20こまでならなんでも装備ができるようだ。部位が分けられてる、という事もないらしい。極論言えば頭装備20こ付けても問題なしのようだ。
ヘルメットが無ければ即死だったができるな!むしろヘルメット以外に当たっても即死だけど。
一様初心者用防具一式と銃2丁を装備しておく。
マップは、俺の見える範囲で埋まっているが他はグレーアウトしている。1度見る必要があるらしい。
で、フレンド0、ギルド所属なし。設定はとくに気になることもないしログアウトも普通にできる。
うん、確認終わり、と。
「確認も終わったし……そろそろ狩りに行っちゃおうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます