第2話

 時刻は午前10時。

 ヘルメットのようなタイプのハードにカセットを入れ、電源をつける。

 少ししたのち、俺の意識は機械へと飲まれていった。


『本日のご要件は?』


 真っ白の空間に俺。そして頭に聞こえてくる女性の声。

 いつも通りだな。


 「anotherの起動を」

『かしこまりました。……オンラインであることの確認……完了。anotherを起動します』


 白い空間が揺らぎ、次の瞬間。俺はノートパソコンの前に座らされていた。

 んん?どういうこと?

 すこし戸惑っているとパソコンに文字が表示された。


『今から質問を表示します。見ていてください』


 答えなくていいのか?


『あなたはモテる?』

 クリぼっちだよちくしょうが。あ?喧嘩売ってんの?

『あなたはカッコイイ?』

 かっこよければクリぼっちじゃねぇよ?たぶん普通だろ。

『あなたは賢い?』

 おう、賢い。

『あなたは痩せてる?』

 まぁ、そこそこなぁ。

 ていうかなんだこれ。まじで質問出てくるだけだ。


 そして1時間ほどかけて質問が終わった。

 なげぇよくそが!いやまぁ、楽しかったけどな!


『楽しんで貰えたようでよかったです』


 ナチュラルに思考読まれるのは慣れてるぜ!


『さてさて、私はサポートAINo.23。通称アイニと申します。質問が終わりましたので、次は行動を見ることになります。いまからノートパソコンの置いてあるその机の上やその周辺に色々な物を出しますのでそれに対してなんらかのアクションを起こしてください』


 なるほど、つまりなにかすればいいのか。

 早速机の上に何かが現れる。これは……水?


『天然水』


 いや、どうすんの?飲むの?とりあえず飲んでみることにするか。……うまくね!?この水すげぇ!

 残ったコップが消え、机の上にまた他のものが現れる。なんだこれ?芋虫?


『虫』


 ですよねぇ。どうしたらいいんだ?とりあえず食べるか。……うまいな。うん。もう1匹食べたいくらいだ。あ、出てきた。親切設計だな。

 次は……?なんだこれ?木?


『木』


 え、どうしろと?いやわりとまじで困ってるんだけどさ?なんか作ればいいの?

 あ、ヤスリが出てきた。よし、削るとしよう。

 そして1時間。


 「出来た……」


 作ったのは木彫りの熊。なかなかの出来だな。


『無駄な技術ですね』


 うん、自分でも思う。

 あ、熊が……。次か……。


 そんなこんなで2時間。長いわ!だから面白いものだけピックアップ。


『血』

 一気飲みした

『デザートイーグル』

 頭を撃ってみた。死ぬほど痛かった。てか死んだ。

『食用うさぎwith狩猟解体包丁』

 とりあえず解体した。その後に美味しく頂きました。

『毒』

 一気飲みした。30分ほどのたうち回って死んだ。

『ヘリコプター内』

 もはや、場所移動してた。とりあえず紐なしバンジーした。死んだ。

『斬頭台with罪のない子供〜親と子供の命乞いを添えて〜』

 いや、そんな風にしてもオシャレじゃないです。あと子供泣き叫ぶなうるせぇ!首落としておいた。


 と、そんな感じだ。ふぅ、さすがの俺も疲れてきたぜ……!


『まぁ、終わりですけどね』

 「あ、終わりか」

『はい、あとは明後日のサービスまでお楽しみですよ』

 「まじかよ……。キャラがどんなのかすら分からないのか」

『楽しみにしていてください。あ、最後にお名前を決めてください。唯一自由に設定できる項目になっています』


 名前か。そんなものは決まっている。


 「クロナ、それが俺の名前だよ」



 ◇

 ということでログアウトした。

 4時間くらいいたからな……。だいたい2時くらいか。……あれ!?まだ1時間しか経ってないとか何事!?

 …...まさかあれか?ゲーム内時間が4倍とかいう胸熱設計か!?

 やべぇ!テンション上がるわ!!


 「テンション上がってるところ悪いけど。黒にぃご飯だよ」

 「白か。お前戻るの早くない?」

 「にぃが最後。むしろにぃ遅い。なにしてたの」

 「あー……あれのせいか。すこし木彫りの熊をな」

 「? 熊?」

 「まぁ、気にするな」


 熊1時間掘ってたからな……。むしろ1時間で済んだのが驚くわ。


 「ま、いい。早く来てね」

 「おう」


 にしても明後日かぁ、待ち遠しいな!

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