三、再会

 翌日。

 「いた」

 やはりティッシュ少女は同じ場所でティッシュを配っていた。

 って……。

 木崎社員が言い出した"ティッシュ少女"というあだ名が僕の中でも完全に定着してしまった……。

 まあこれはこれで便利だし、仕方ないということにしよう。

 「ティッシュ少女は……っと」

 駅前のメイン通りから改札口へ向かう下り階段に立って、ほんわかと穏やかな空気感を漂わせている。それこそ少女という言葉がしっくりくる彼女。

 年齢は僕より一つか二つ歳下といったところだろう。

 そのか細いシルエットを象っているのは、いかにもユミクロ御用達といったモノクロでシンプルな白シャツに黒ズボンというファッション。

 昨日は顔立ちこそしっかりと確認できなかったが、あの娘がティッシュ少女で間違いない。

 少女は頭の後ろで華麗に結びあげた短めのポニーテールを軽やかに上下させながら、道行く女性にティッシュを渡していた。

 それも、一人一人わざわざ両手を差し出して――

 なーんだ。あの渡し方は僕だけに対してやっていたわけじゃないのか。

 「って、おい……」

 それじゃダメなんだよ。

 これだと、僕の仮説が成り立たなくなる。

 少女は道行くすべての女性に、頭を深々と下げながらティッシュを手渡しているのだ。

 これは、あの懇切丁寧な渡し方を僕だけに対して特別にやっていたわけではないことを意味してしまうのだ。

 どうしてくれる。

 『……よろしくお願いします!』 

 また同じ渡し方だ。

 『……よろしくお願いします!』

 男性には絶対に渡さない。

 『よろしくお願いします!』

 やっぱりティッシュ少女は、僕を女性と間違えたのか?

 「そんなはずは……」

 とりあえず、確認は必要だ。

 もう一度、前を通りすぎてみよう。

 それでもし、また渡されてしまったらジ・エンドだ。


           ※    ※    ※


 彼女の直ぐ目の前まで近づく。

 「……」

 よし、もう少しで通り過ぎるぞ。

 「……よ、よろしくお願いします!」

 「あ……」

 終わった。

 彼女が僕の前に立ってティッシュを差し出している。

 昨日と全く同じ状況だ。

 「……ハックション!!」

 くそー木崎社員め。

 どうせ今頃、僕が女々しいって噂しているんだな。

 だからくしゃみが出たんだな? そうだろ?

 「あの、これ……」

 「いや、ごめん。その、覚えてないだろうけど、実は昨日も貰ったんですよ、それで――」

 「あの……覚え……ています」

 「あーでも僕、ほらこの通り男だからさ。そのティッシュ渡しても意味ないというか、渡されると困るというか……」

 「す、すみません……!」

 「いやいやいや……ん? あれ? 今、覚えてるって言った?」

 「は、はい。男の人には、基本的に渡さないことになってるので、印象深かったというか……」

 「男の……男の人には渡さないって言ったよね?」

 「はい。すみません……」

 「いや、謝らなくていいんだ。僕、男だから」

 「……ああ、そうですよね。それで、これどうぞ……」

 「え」

 「そ、その……ティッシュどうぞ」

 「だから何度も言うけど僕は男だからさ、それは受け取れないよ」

 「でも、あの……鼻水」

 「え?」

 言われて、とっさに鼻の下を人差し指で擦る。

 断じて垂れてはいないぞ。確かに少し出かかっていたけれど。

 「風邪、ひいてるみたいでしたから……」

 「え、ああ。そうそう! ちょっと最近風邪気味でさ! ありがとう、そういうことならこれはありがたく使わせてもらうよ!」

 「……どうぞ」

 「ありがとう。ははっ……(ッチーィーーンッ)」

 「……」

 「……」

 「……大丈夫ですか?」

 「……お、おかげさまで、すっきり」

 「よかったです」

 「うん。ああ、よかった」

 「……」

 なんだろう、この間は。

 「……あのさ」

 「はい?」

 「昨日のも、もしかして?」

 「……ああ。はい、そうです。風邪が辛そうだったので渡しました……」

 あ、ということは……。

 「いや、あーいいんだ。そっかそうだよな、そういうことだよな!」

 「私も悩んだのですが、不快な思いをさせていたようなら、すみません」

 よかった。

 これはどうやら完全に僕の勘違いだったということで良さそうだ。

 「いやいや気にしないでよ。好意でやってくれたんだから。寧ろありがとう」

 「はい……」

 僕は男だ! 正真正銘の男なんだ!

 「それじゃあ、僕はこれで」

 「はい……お大事に」

 ぎこちない笑顔を浮かべて、会釈をするティッシュ少女。

 その場を足早に立ち去る僕。

 なんとなく気になって路地を曲がる直前に振り向くと、相変わらず通りすがりの女性に両手で丁寧にティッシュを差し出している彼女が見えた。

 「ちょっと変わった子だけど、いい子だったな」

 僕はそう小さく声に出して、ティッシュ少女の健気な姿を何度も思い返しながらバイトに向かった。


          ※     ※     ※


 「へぇーよかったじゃないの。赤ちゃん」

 確かに僕の名前は“赤田”だけどさ……。

 「それ、この前のちゃん付けよりも相当悪化してますからね」

 「いいのいいの。今日から赤ちゃんで定着させるから。男女差別的な表現は良くないから止め。その代わり人間的にヒヨッ子って意味を掛けて、赤ちゃんでいきましょ~」

 「むしろ明確な悪口になってますよ……」

 バイトの昼休憩。

 今朝の出来事を木崎社員に説明した。すると、僕が女だと思われていなかったことが証明されたからか、木崎社員の機嫌がすこぶる悪くなった。

 「……も知らないくせして」

 「知らないって、何がですか?」

 「なんでもありませーん。というかね。赤ちゃん、今日は今すぐ帰りなさい」

 「え!? 確かに最近満足に仕事できてないですけど、ちゃんと頑張るのでクビだけは勘弁して下さい……」

 「まさか。そんな権力私にはないわよ」

 「どういうことですか?」

 「体調悪い人が厨房にいるのは仕事的に良くないって話。昨日は許容範囲だったけど、今日はダメ。赤ちゃんのくせに顔、青ざめてるわよー」

 赤のくせに青って。

 「上手いこと言ったつもりですか? これくらい大丈夫ですよ。色で言えば鼻はほら真っ赤ですし!」

 「鼻のかみ過ぎでね」

 「なんとかなります」

 「はぁ。じゃあそこ、カレンダーの隣。なんて書いてある?」

 「衛生第一、ですか?」

 「よくよめまちたねー。えらいえらいー」

 あやされてる……。

 「馬鹿にしてますよね」

 「で。衛生第一の場所で、赤ちゃんはくしゃみが出てちまいまちゅ」

 「……」

 「いけないことでちゅね?」

 「そうですけど……」

 「じゃあ言い換えます。帰りなさい。これは社員命令でーす」

 「でも仕事は……」

 「私を誰だと思ってるの。平日だし、一人で二人分の仕事くらい余裕よ」

 「本気で言ってます?」

 「もちろん」

 真剣な顔から察するに、どうやら決定事項のようだ。

 それに、強く反論できないくらい体調が優れないのも事実であって……。

 「本当に、すみません……」

 「別にいいわよ」

 「明日までに治してきます。必ず」

 「よろしい。それと今日もマスクあげるからしていきなさい。今度からは自分で買って、体調悪い日は外でもちゃんとしてくるように」

 「はい……すみません」

 「いい? "外"でもちゃんとするのよ」

 外でもちゃんと、か。

 「はい」

 見ず知らずの人に風邪の菌をまき散らすのはよくないということだろう。

 なんだかんだで正義感の強い人だ。そういうところは僕も見習わなければいけない。

 「ではお言葉に甘えて、失礼します……」

 「お大事に」


        ※    ※    ※



 「とにかく赤田君の分も頑張らなくちゃね。それにしても……」

 赤田君は"カゼ"を全く信じていないようだった。

 それどころか知ってすらいないのかもしれない。

 あり得ることだ。だって彼は県外から数年前、ここに引っ越してきたばかりなんだから。

 それはまずい。ここははっきりと明日、そのことを話したほうがよさそうだ。

 でないと、いつこのマスクを外してくれと言われるか分からない。

 「できれば、話題にすら出したくないんだけどねぇ……」

 とにかく今日のところはマスクをするよう強く言ったから大丈夫でしょう。



         ※    ※    ※



 歩くこと5分。

 駅前の商店街を通り抜け、浜竹公園の中へ入る。この公園に入り、道をそれて小高い丘を突っ切って行くのが、自宅への最短経路だ。

 「身体が、重いな……」

 一歩一歩、つま先に体重を掛けながら坂を登る。

 いつもは足腰にだけ負担がやってくるくる急勾配も、今日ばかりは全身に堪える。

 「よし、登り切った……」

 息を切らせながら、頂上に辿り着いた。

 喉の奥が締め付けられているように痛い。

 山頂はちょっとした空き地になっていて、見晴らしの一番いい場所に古びたベンチが一つ置かれている。

 たまらずフラフラと座り込み、もたれかかる。

 「やっぱこれ、早上がりさせてもらえてよっかったな……」

 顔を上げ前を見ると、浜竹市一番の住宅街が広がっていた。マンションの五階くらいの高さから見渡す、ありふれた街の風景。

 この街で一人暮らしをするようになってもう三年。こうしてみると、このなんてこと無い景色にもどこか愛着を感じるようになっていた。

 けれど……。

 変わったことは多分それだけ。

 僕は結局、未だに自分のやりたいことを見つけられていない。

 寧ろ、この街に甘えているだけで何も成長していないのかもしれない。

 こんなんだから木崎社員に馬鹿にされるんだ……。

 「くそ……」

 引きちぎるようにマスクを外すと、口周りにまとわりついた汗に、冷たい空気が張り付いてきた。

 ずっと布に締め付けられていたせいで、鼻の頭がむず痒い。

 「そりゃ息苦しくもなるか」

 そう声に出してマスクを取ってもなお、かなり息苦しい。

 鼻が詰まって、口で小刻みに息をすることしかできない。

 鼻をかもうとしてズボンのポケットに手を突っ込み、ティッシュ少女がくれたティッシュを取り出そうとするが……。

 「……っ」

 なぜだか手先が震えて、ティッシュを引っ張りだすことができない。

 何を手間取っているんだ僕は。

 「……っと、よし」

 やっとつまみ出し、それをそっと広げる――

 「あっ……!」

 次の瞬間、タイミングを見計らったように突風が吹き荒れ、指先からティッシュがすり抜けていった。

 それは空高く舞い上がり、ポッカリ浮かんだ真っ白な雲に吸い込まれるようにして消えてしまった。

 「……」

 どこか儚げなその現象をぼーっと見届ける。

 空はゆらゆらと遠ざかっていく。

 ああ、限界かもしれない。

 今はこのベンチの上に寝っ転がろう。

 ベンチに横になった途端、僕の意識は白いモヤの中にフェードアウトしていった。


 

        ※     ※     ※ 

 


 「……大丈夫ですか?」

 かすかに聞こえる優しい声。

 「……」

 目の前にぼんやりと浮かび上がった、人の顔。

 ピントが合った瞬間、息を呑んだ。

 「……あ」

 間違いない。ここ2日間顔を合わせていたにも関わらず、気がつくのに数秒かかったのは、上目遣いの彼女しか知らなかったからだった。

 「……よかったです」

 こちらを上から覗きこんでいる彼女が、ほっと安堵の息をつく。

 「……」

 ゆったりとしていた意識がハッキリとしてくる。

 硬いベンチに横たわっているはずなのに、首下の感触だけ普段愛用している低反発まくら並に心地よくフィットしている。

 「……って、ごめん!」

 咄嗟に、上半身を起こす。

 そうだった。めまいがしてきたからここで横になって……。

 どうやら僕はベンチの上で、少女に膝枕をしてもらっていたようだった。

 そう。

 このティッシュ少女に。

 「私は大丈夫です……あの、ティッシュ君は大丈夫ですか?」

 「……え?」

 「あ……っ。ごめんなさい、つい……」

 「え……」

 「……私、あなたの名前知らなくて。それで、あなたにはティッシュを配っている時に会ったから……」

 「いやいいんだ。驚いたのはそういうことじゃなくてさ」

 「はい?」

 「僕も君のこと、勝手にティッシュさんって呼んでたから……」

 正確には"ティッシュ少女"なのだが、なんとなくそれは恥ずかしくて言えなかった。

 「……ええ? ああ……」

 「……」

 「同じ、ですね……」

 少女の声と表情が少しだけ明るんだ気がした。

 「そうですよね……私達の接点って、このティッシュだけですもんね」

 少女はおもむろにポケットからあのティッシュを一枚取り出し、それを両手でひょいと持ち上げ、風になびく白い繊維を少しだけ満足げに見つめた。

 「そういうことになるかな」

 「なんだか、おかしい」

 丸みを帯びた息遣いで、ふふっと笑みをこぼす少女。

 「そうだね」

 僕もたまらず笑ってしまっていた。

 何ていうか、こんなこともあるんだなって。

 


              ※    ※    ※

 


 それから数分の間、僕と少女はベンチに座ったまま寄り添えるわけもなく、なんとも言えない距離感を保ったまま、無言で景色を眺めていた。

 街はすっかり夕暮れ色に染まっていて、数羽のカラスが鳴きながら飛び去っていった。かれらが鳥の形のシルエットから単なる黒点に変わった時、僕は口を開いた。

 「どのくらい寝ていたか分かる?」

 「私が来た時には、もうぐっすりだったので……あ、今は夕方4時半です」

 「そっか」

 ということは、かれこれ6時間くらい寝ていたということになる。

 「ごめん。もしかして結構ここにいたかな?」

 「お昼すぎくらいからなので、大したことないです」

 ざっと3~4時間はここにいる計算になる。

 なのに、少女はそれを大したことないと表現した。

 そんなはずはない。

 「わるい。すぐ行こうか」

 立ち上がると、何かが僕の膝上をすり抜けて地面にドサッと落ちた。

 「あ……」

 水色の毛布だった。

 僕としたことが、全く気づかなかった。思った以上に重病らしい。

 「冷えちゃうといけないので……ああ、汚れてもいいやつなので、気にしないでください」

 「本当ごめん」

 「体調悪いんですから仕方ないです。それよりもこれ、してください」

 そう言って、少女はポケットの中から――

「マスク……?」 

 真新しいマスクを差し出した。

 木崎社員といい、最近の女性はマスクの予備を携帯しているのか?

 確かにマスクが流行っているだなんていう特集を前にニュースで見た。

 実際に街中でマスクをする人を、僕が子供の頃よりもずっと多く見かけるようになった気もする。

 これは案外、女性の間では常識なのかもしれない。

 「ああ、ありがとう。そうだよね、うつしちゃうもんね」

 「それもそうかもしれませんけど。食べられてしまうからですよ」

 「食べられる?」

 目の前の親切を一般化しようと考えていた矢先、全く見当違いのことを少女は言った。

 どういうことだ?

 「よく親とかお祖母さんに脅かされませんでしたか? 鼻水のたまった鼻で外に出ると"ハミカゼ"に鼻を喰われるぞって」

 なんだそれ、知らない言い伝えだな。

 「言われたことないな。初めて聞いたよ」

 「この町では有名な話なんです。どこかから引っ越してこられたんですね」

 「数年前に」

 「どおりで無防備に鼻をすすりながら歩いてるわけです……」

 「そんなにこの地域では良くないことなの?」

 「良くないこと……というよりも、この街の当たり前だと思います。子供の頃からみんな言い聞かされるので」

 「そうなんだ」

 ということは……。

 『いい? "外"でもちゃんとするのよ』

 木崎社員はこの街の出身のはずだし、あれはそういう意味だったのか。

 「あのさ、それって鼻をかむっていう方法でも回避できるのかな。鼻水がたまってなければいいんだし」

 「もちろんです」

 「ってことは、君が昨日と今日僕にティッシュをくれたのも、そういうことだったわけか」

 「そう……かもしれません」

 「(チーィーーンッ)」

 「……」

 「あースッキリした」

 それこそ色々ときれいさっぱり納得した。

 少女が僕にティッシュを渡してくれたのは、単なる優しさだけではなく、ましてやラブレター的な所謂"好意"なんてものは全く関係なく、地元特有の伝承からくるものだったと分かったのだ。いやーよかったよかった。

 だって、理由のない親切を受けたら、男っていうものは勘違いをしてしまう生き物だろう?

 そう自分に言い聞かせる。

 それでも、ほんの数秒経っただけで鼻の中はすぐにムズかゆくなってきてしまう。

 どうやら完全に風邪を引いてしまっているらしい。

 「でもどうして、ここまでしてくれるんだ?」

 頭では分かっているのに、何かを期待してしまう僕。

 彼女と僕の関係は、ティッシュ配りとそこを通りかかったただの通行人で。

 伝承からくる親切な行為も、本当ならあの場だけで済んでいるはずで。

 それなのに何故、と少女に聞いてしまった。

 これ以上踏み入れない方が身のためだと知っているというのに……。

 「そうですね。ハミカゼを実際に見ているので。というのはどうでしょう」

 「なんだって!?」

 返ってきたのは予想外すぎる答えだった。

 「冗談ですよ」

 って、冗談か。まあ、そりゃそうだよな。

 「脅かさないでくれ……」

 「そうですねー。では、ここまでする理由は……うーん。一度助けてあげたと思っていた人が実は助けきれていなかったと知って、いてもたってもいられなくなったからということで」

 「そっか」

 理由としては不十分な気もするが、不思議としっくりきていた。

 きっと彼女はそういうことを放っておけない本質的に優しい人なんだろう。

 そして、それでいて会話にちょっとしたジョークを混ぜられる少しお茶目な人なのだ。

 「とにかくありがとう」

 「ふふ、行きましょうか。歩けますか?」

 「ああ、なんとか」

 立ち上がると、頭の奥にガツンと鉛みたいな重みがのし掛かってきた。

 これは歩くのがやっとだ。

 少女には他にも色々と聞きたいことがある気もするが、とにかく今はそんなことよりも家に帰ることを考えるだけで精一杯だ。

 「毛布、もちます」

 「ああ、大丈夫。持ってたほうが暖かいし」

 「……なら、お願いします」

 少女は何故かちょっとだけ嬉しそうに声色を明るくして、僕と並んで歩き始めた。



          ※    ※    ※



 それからのことはよく覚えていない。

 少女との会話が持たなくて、意味も無くバイトの話を延々とした気もするが、定かではない。

 そして次に目が覚めたとき、そこは自室の布団の上だった。

 公園での出来事があまりにも出来過ぎた記憶だったので、僕はまずあれは夢だったのだと考えた。

 しかし、作り置きしてあったお粥を温め直して完食したところで、あれは夢ではなかったという結論に至った。

 こんな美味しいお粥を無意識のうちに作って置いておけるほど、僕には料理の才能がないし、あの少女以外にこれを作ってもらえるような人が思い当たらないからだ。

 それにしても出来過ぎた話であることには変わりないけれど。

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