第3話 ぐにぃ ぐにぃ やめられないお
「人の家の前で何をやっておるんじゃ」
「ひぃいいっすいません」
いきなり死んでるはずの爺さんに声を掛けられ冷えた肉汁がどろどろ流れる。
流川 龍之介が此方を頭の天辺からつま先まで舐めるように見る。
鼻も動かしてまるで動物が匂いを嗅ぐような動きに辰一は身動きがとれないでいる。
「あぁ、御主か先ほどは助けて貰ったんだったな」
自分ではない自分の事を話すように言う。明らかに異常な状況に辰一は搾り出すように言った。
「あっあの、流川 龍之介さんでっですよね?」
「いかにも、儂の名前は流川 龍之介じゃ」
さっき会った時とは見違えるようにはきはきと話す爺さん。本当に他人なんじゃないかと思うぐらい違いじっと見ていたら、怪訝そうな目で見ていた事がばれたのか爺さんが半歩程出て来る。
「うむ、御主の名はなんと言うんじゃ?」
「えっと、嶺 辰一って言います」
「ふむ。辰一か良い名じゃな、まぁ言いたい事と聞きたい事があるんじゃろ? 中に入らんか? 何とって喰ったりはせんよ。茶を入れるからそこに座って待っててくれ」
断る事も出来ない辰一は部屋に入るしかなかった。
爺さんあんた死んでるんだからそんな事出来ないだろうに何言ってるんだ?
そんな事を思いながら言われたままに座布団の上に座る辰一。
爺さんを見るとなんと驚いた事に急須にお茶っ葉を入れお湯を注いでいる。
辰一はもうその辺りについて考える事を止めて爺さんを待つ事にした。
五分程して爺さんが湯のみを二つ持ってきてお茶を振舞ってくれる。
「まぁ茶でも飲んで一先ずは落ち着け」
ずずっとお茶をすすり飲む辰一の正面に座る龍之介は笑顔で茶を飲んだ。
「さぁ、話をしようかのまず何から聞きたい?」
質問されるであろう内容が分かっていると言わんばかりにそう言う。辰一は言葉を選ぼうと逡巡していると「なに普通に聞けばよいよ。気に掛ける必要もいらんよ」あっけらかんとした態度で話す。それを聞いた辰一は素直に聞こうと思い初めから話す。
「あの、さっき川の前で会いましたよね?」
「うむ。さっきは有難う助かったよ」
「集会場で流川さんの葬式やってるんですけど」
「龍之介でいいよ。そうだね、あれは儂の葬式だ」
辰一が思った疑問は全て肯定された。
「じゃあ龍之介さんはっおばお化けなんですか?」
「はっはは。そうじゃなそう言われるとそうなってしまうのう。じゃがな辰一君お化けであるなら物など持てぬし触れることすら儘ならん」
龍之介さんは全て分かってて答える。
辰一は混乱しそうになりながらも質問をぶつけた。
「川の前で会った時と今の龍之介さんはまるで別人みたいなんですけど?」
質問をした時、龍之介は湯飲みを机の上に置きふわっとした雰囲気をぴしゃりと止め真面目に言う。
「辰一君、今から話す事は信じられんと思うが全て聞いてほしい。今現在、儂の器はもう死んでおる。故に現状の儂は器を無くした言わば魂のような状態と言う事になるの。今この家の中でしか儂を儂として認識する事ができんのじゃ」
器? 魂? それに認識って?
辰一は理解出来ない。言ってる事がはちゃめちゃ過ぎる、でも目の前の龍之介さんが嘘を言っているようにも見えない。
「じゃあなんでさっきは川の前にいたんですか?」
龍之介は苦笑いになっている。
「うーむ。それなんじゃが……まぁ簡単に言うと興味本位じゃ!」
「興味本位って? どういう事なんですか?」
「まぁ、儂自身の器が死んで葬式を今やっておるじゃろ? 自身の式なんぞ見る事なぞできんじゃろ? じゃからこれも一興と思って外に出てみたんじゃがそれがまずかったんじゃよ。まさか外にでたら自身を自身として認識できぬようになるとは思ってもみなんだ!」
「自分自身を認識出来ないってどう言う事なんすか?」
「簡単に言えばじゃが、記憶喪失に近いと言った所かの?」
「でも、俺が住所聞いたらすごいつらつら言ってたじゃないですか?」
「それは、儂にとっての魂の位置がこの家と結びついておったからとしか言えんのう。しかし、辰一君のような人間のお陰でここに戻ることが出来た。本当に有難い」
つまるところ、この爺さんは自分が死んでいる事を理解している。そして自分の葬式なんて見れないから興味本位で葬式見たさに外にでたら自身の事を認識できなくてどうしようもない状態になってたと言う事か。
「じゃあ、俺はもう家に帰りますね」
これ以上付き合う理由も無いし、お腹すいたし、艦隊の指揮取りたいし。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ話には続きがあるんじゃよ!」
なんか面倒くさくなってきたな
「面倒くさいと思わんでこれも何かの縁じゃと思うて聞いてくれんかの?」
ばれてら、昔からすぐに顔にでるんだよな
「龍之介さんの死因ってなんだったんですか?」
「え?普通に天寿を全うしただけじゃが?」
「全うしたんならなんでここにいるんですか?」
「それについては今から話す所じゃよ。辰一君は異世界の存在を信じるかね?」
ぶっ飛んだ事を言い出した龍之介さんを凝視する。
「いや、そんな怪訝そうな目で見るのは止めてくれんかのぉ。そうじゃなでは魔法とかこの世界には無い理を信じるかね?」
冷やかされてるのか? 馬鹿にされてるのか? もういいや付き合いきれん!
「そう言った話とかはゲームとかで知ってはいますけど所詮は作り物。ではこれで失礼しますね」
死んだというのも全部嘘だったんだろうと思う事にした。
玄関まで行こうと立ち上がり振り返った瞬間。
ぐにぃ。
「ひあっ!」
尻餅をついた辰一の顔は相当に驚いた顔を貼り付けていた。
「ふふふ。これの説明はいらんかの?」
「!」
「このぐにぃってするのは龍之介さんがやったんですか?マインドコントロールとかですか?」
「これが一応は魔法に順ずるものじゃ。儂には魔法は使えんがの」
魔法? このぐにぃが?この地味なのが?
「地味とか思っておるのじゃろ。じゃがの辰一君このぐにぃはハマるじゃろ?」
この爺さん心を読むのか!!
「顔にでとるぞい」
「このぐにぃが魔法だって言うんですか? こんなにぐにぃ……」
あっやばい一生触れていたい。いやもう揉みたい。揉みたくて仕方ない
「っ! もしかしてこのぐにぃはまっまさか!」
「気が付いたかの? この魔法の使用用途は別にあるんじゃがどうじゃ?」
「俺は魔法を信じるしかありませんね。どうぐにぃしたってこれはもう完璧におぱーいですね」
こんなにエッティな魔法があるだなんて、もしかしたら俺にも使える?
「まぁなんじゃ辰一君には魔法は使えんがの」
「あjどいsふょおおおs」
「なんちゅう声出しておるんじゃ。そのままぐにぃしてて良いから話を聞いてくれんかの?」
「しっしか仕方ありませんね。聞くだけですよ?」
やったあああああああおっぱいだあああああああ!
「辰一君聞きにくいんじゃが童貞なんじゃな?」
「どっどどどど童貞ちゃうわ!」
「まぁ話を聞いてくれるならなんでもいいんじゃがな、儂はそもそもこの世界とは別の理で成り立っておる世界から来たんじゃ」
もう俺は龍之介さんの話を無条件で信じるようになってしまった。
「パラレルワールドって言うやつですか?」
「いいや。パラレルワールドは軸となる世界を鏡に写すように出来た世界じゃ。儂が来たのは文字通り異世界じゃ。この世界とは理が法則が全てが違うんじゃよ、似たような文明様式はあるんじゃがの」
「あの質問なんですけど龍之介さんはこの世界にいつ来たんですか?」
「正確には七十年程前にに転生したんじゃよ」
「転生って事はこの世界で生まれ直したって事ですよね?」
「そう言う事じゃ。ただ儂はこの世界に着たくて来た訳ではないんじゃ」
「どう言う事なんですか?着たくて来たんじゃないって……」
「儂は元いた世界では転生を司る存在じゃった。とは言っても別の世界に干渉することなぞ本来であれば出来んのじゃよ。じゃがある時、儂はそれに巻き込まれたんじゃ」
「転生を司るって事は(ぐにぃ))神のような存在ってことですか? (ぐにぃ)巻き込まれたっていったいなんだよ? (ぐにぃ)」
「神ではないぞい。あの世界には神は存在せぬ。その代わりに多くの龍が存在しとる。それをこの世界で言う神という定義には当てはまらんの。巻き込まれた事に関して言うならば、恐らく違う世界が消滅した余波のようなものに巻き込まれたと言う所かの。儂は元いた世界の輪廻の輪を守る為に儂の魂の一部を切り取りそれを余波にぶつけて中和しようとしたんじゃ。結果的には中和し切れず巻き込まれたんじゃが」
「へーそりゃまー(ぐにぃ)凄く(ぐにぃいい)大変だったんですね」
「辰一君、儂の話分かっとるのか?ぐにぃぐにぃばっかりでこれだから童貞は困るんじゃ」
どどどど童貞ちゃうわ!むしろ童帝じゃ!
「危険は回避出来たんじゃが、切り取った儂の魂の一部はこの世界に流れ落ちたんじゃよ」
「じゃあ別になんの問題もないじゃないですか?天寿まで全うして他に何かあるんですか?」
「儂のような存在の魂は本来この世界の理の中には入れん。もし仮に儂の魂がこの世界の輪廻の輪に入ろうとすれば恐らくこの世界は終わる事になる。儂は元いた世界の本体と言えるあるべき所に戻らねばならん」
「世界が終わるって何言ってるんですか!?」
「あくまで予測じゃが、儂がいた世界に来た余波は儂のような存在が別の世界にもいて違う世界の輪廻の輪に入ろうとしたじゃろう。結果、世界が耐え切れず終わったんじゃないかと思っておるんじゃ。つまり儂がこのままこの世界にいると同じ事が起こる可能性が高いと儂は答えを出したんじゃよ」
なんかすげーダイナミックな話になってるな。いまいち良く分からんけど。
辰一はぐにぃする事に頭の八割を費やしていた。
「そこで辰一君に頼みがあるんじゃよ」
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