リリカ1

リリカはフルートに口をつけると、教室に美しい高音を響かせた。

「すごいねリリカちゃん。私よりうまいんじゃないの」

上条先輩だ。

「いえ、そんなことないですよ。」

「フォローしないでいいよ。上条はドベだよ」

三井先輩の冗談にフルートパート6人全員が笑う。1年の安藤が、

「ねえ、フルート経験者じゃないんでしょ?じゃあ、沢山練習してるんだよね?えらいなあ」

「そんなことないよ。15分くらい。アパートだから。」

そういうと、上条先輩が驚いて、

「ええ?それなのにどうしてそんなにできるの!」

と目を丸くした。

「上条先輩のおかげですよ。」

「正しくは三井先輩だよ」


パート練習が終わり、楽器を準備室にしまいにいく。

「リリカ。今日一緒にかえろ」

安藤が笑顔を向けてくる。

「ごめん、またこんど・・・」

と言いかけると、

「じゃあ、私と帰ろうよ」

と美咲が声をかけてきたので、

「ごめん。杏奈、美咲。またこんどさそってね」

と手を振って、その場を抜ける。

「ごめんカナちゃん。友達と話してて」

「う、うん・・・」

カナちゃんは、リリカの友達だ。自分からは話すタイプではないため、独りぼっちになってしまったところをリリカが「友達になって」と話しかけたのだ。

カナちゃんにはリリカしか友達がいないので、もしかしたら親友だとおもっているかもしれない。

「お疲れ~」

リリカに声をかけてきたのはカナちゃんのパートの樹先輩だ。

多分だけれど、リリカはこの先輩に好かれている。

「お疲れ様です。」

挨拶をして、カナちゃんと歩き出した。




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