中学生1
「よろしくね」
と先輩に言われても、ショックから立ち直れなかった。
なんで、フルートを希望してたのになれなかったのか。
こんなことなら吹奏楽部になんて入らなければよかった。
「ねえ、君返事ぐらいしよう?」
先輩のとがった声に胸がキュっと縮まる。
「すいません」
私が入ってしまったファゴットパートは、北校舎の3階の1年8組でパート練習をする。隣の7組では私の入りたかったフルートパートの笑い声が響いている。
「まず楽器の組み立て方ね」
ケースの蓋が開けられ赤茶色のいかにも古そうな楽器が4つのパーツに分かれて並んでいる。先輩はパーツの名称を言いながらカチャカチャと乱暴に組み立てていく。そして、もうひとつのこれから私が使うと思われるケースから
「やってみて」
4つのパーツを渡してきた。へこんだ筒、だ円の筒、長い筒、短い筒。それぞれにたくさんのキーが付いていて、どこをもてばいいのかわからない。
「あんたさ、」
ドキリとする。
「説明聞いてないよね?」
その通りなのだが、まさかそうですなんていえない。
「あーあ・・・なんでこんなの入っちゃったかなあ」
先輩はそうつぶやくとケースのそこに埋まっていた銀色の細いs字のつつをとりだすと、それを自分の楽器に組み立てて、
「これ見て適当に組み立ててよ」
といってどこかにいってしまった。
私は無言で組み立てはじめた。
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