第14回

桜木美春「『前回の反省』また、スタッフが更新時間になっても原稿を上げられずにおよそ30分後に当たり前のように更新をした。もう2年目なのだから気を引き締めなさい」


桜野美沙「それじゃあ、早速始めるよ。『川野流の中波放送 春直前スペシャル~流くんがいないなら別番組のような気がするけど気にしない~』スタート」


美春「サブタイトル長過ぎよ」



美沙「川野流の中波放送 この番組は黒さならどこにも負けないラーメン屋『黒一点』と水守プロダクション、和水プロダクションの提供でお送りいたします」




はじまりは苦労だらけだった 右も左もわからずに

頼りの綱などなかった 1人で挑んでいた


2度目の挑戦 助けがやって来た

気休め程度の 助けだったけど

気休め以上に 頼りになった


3度目の挑戦 嬉しいサプライズ

嬉しさで 真っ白になるほど

そのメールは 励みになった


喜怒哀楽 すべてが思い出

皆で喜んで

スタッフに怒って

時に哀しんで

だけど今この時間は楽しいよ


春夏秋冬 歩んできた

はじめは1人で

1人が2人になり

2人から3人へ

そして4人へ


これからも続いていく この挑戦

春夏秋冬 歩んでいく




美春「こんばん波~スプリングスの桜木美春です」


観客の歓声


美沙「こんばん波~より今日はこんにち波~の方が良いかな? スプリングスの桜野美沙です」


観客の歓声


美春「大きな声援ありがとうございます。という事で、タイトルコールでどこの構成作家が考えたのか分からない長いタイトルにもあった通り春直前スペシャルという事で、今回の中波放送は番組史上初公開録音の模様をお届けしています」


美沙「わたし、まさか人が来るとは思わなかった」


美春「リスナーが基本的に番組にメールを送ってこないものね」


美沙「隠れリスナーさんがこんなに大勢いたんだね」


美春「あまり言いたくはないのだけど、1つ観客の方たちに質問しても良いかしら?」


美沙「折角の公開録音だから良いんじゃないかな?」


美春「じゃあ、聞くわよ。この中に春直前スペシャルだけにスタッフの仕込んだサクラだという偽リスナーは素直に手を上げて」


十数名の挙手


美沙「……」


美春「緊急会議よ。真矢さん、出てきなさい」


真矢咲「はい」


美春「謝罪の言葉を」


咲「まさか、隠れリスナーさんがこんなにも大勢いるとは思ってもいなくて、スタッフ全員で知り合いを数名ずつ呼んだらこんな結果になりました」


美沙「でも、よく来てくれたよね」


美春「そうね。私なら絶対に呼ばれても行かないと思うわ」


美沙「ちなみに、サクラの人たちの中で中波放送を聞いてくれている人は居ますか?」


十数名全員挙手


美春「どうしてサクラを頼むようなスタッフの知り合いなのか疑問に思うほど優しい人たちね」


美沙「美春ちゃん、普通のリスナーさんが置いてけぼりになっているから普通のリスナーさんにも質問をしてみようよ」


美春「本来ならそっちを先にすべきなのよね。あ、咲さんは戻って良いわよ」


咲「はい、失礼いたしました」


美沙「じゃあ、どんな質問にしようか?」


美春「まずは、無難な質問からじゃない? 例えば、この中で中波放送を聴いたことがない人は?」


全員挙手


美春「予想外よ」


美沙「忘れがちだけど、わたしたちはいつも声を収録しているけどリスナーさんの所に届くのは咲さんが文字に起した文章だからじゃないかな?」


美春「そう言えばそうだったわね。改めて聞くけれど、中波放送を見たことがある人は?」


全体の8割が挙手


美沙「今日初めて見る人もいるみたいだね」


美春「台本にも書いてあるから、初めての方向けに私たちでこの番組について簡単に説明をしましょうか」


美沙「台本通りに美春ちゃん、紹介をお願い」


美春「仕事モードで読むからいつもの私を知っているリスナーはキャラの違いで笑わずに聞くこと。それじゃあ、行くわよ。

『川野流の中波放送』とは、昨年2月から更新されている川野流くんという男性がメインパーソナリティ―として放送しているラジオです。ただ普通のラジオとは違って音声が一切無く、収録した会話を文字に起した『読むラジオ』をコンセプトとして毎月最終日曜日の午後11時59分に更新しています。

流くんの他に水守プロダクションという事務所に所属している私、桜木美春と桜野美沙のユニット『スプリングス』と流くんのお友達のデスティニー田中くんがパーソナリティ―として出演しています。

 先日めでたく1周年を迎えたこの番組は先ほどのように出演者とスタッフでケンカのような事を度々していますが、基本的には仲良く番組を作っています。これから2周年へ向けて新たな事に挑戦していく(?) 『川野流の中波放送』を是非ご覧ください」


美沙「美春ちゃんお疲れ様」


美沙「私なのにいつもの私と違い過ぎていて誰かを演じているのかと思ったわ」


美沙「でも、そのおかげで初めての人にはこの番組がどんな番組なのか伝わったと思うよ」


美春「どうかしらね? ただ一つ言えるのは、今の音源は編集されて何かしらの形で使われると思うわ」


美沙「うん、番組の関係者の人たちが一斉に目を逸らしたから絶対に使うと思うな」


美春「番組の宣伝のために使うのなら私は文句を言わないけれど、悪意のある編集だった場合は許さないわよ」


美沙「美春ちゃん、いつもと違って今日はリスナーさんに見られているからその怖い笑顔はやめて」


美春「そうね。うっかりしていたわ」


美沙「それ以前にわたしたちはアイドルなんだから人前でそんな怖い顔しないでよ」


美春「今、何人か『えっ?』って言っていたけれど、私たちは女芸人ではないわよ」


美沙「気になった人は現在絶賛発売中のCDを聴いてみてください」


美春「さて、色々話している間に時間が押してきているみたいだからこの辺でオープニングトーク兼フリートークは終了らしいわ」


美沙「いつもと違って2人だから話すタイミングとか考えないで喋っていたから時間が経つのを忘れちゃった」


美春「私もカンペ見るまで忘れていたわ。で、オープニングトークを終わる前にここで1つお知らせです。今まで積極的に募集してこなかったメールですが募集します。流くんやデスティニーくん、私たちスプリングスに質問したいことや相談したいことを送って来てください。2年目にしてようやく本気を出してきたわね」


美沙「メール待ってま~す」




スプリングス「川野流の」

観客「中波放送」




美沙「はい、ありがとうございました。さて、ここからは特別コーナー『新コーナー考案会議』このコーナーは事前にわたしと美春ちゃんがそれぞれ考えた新コーナーをプレゼンしてここに居るリスナーの皆さんにどちらのコーナーが面白そうかジャッジしてもらいます。票数の多かったコーナーは実際にコーナー化します。とのことです」


美春「この番組の事だから信用性は無いわよ」


美沙「そんな事言わないで。まずは美春ちゃんが考えた新コーナーの発表をお願い」


美春「仕方ないわね。パクリというか、オマージュというか、リメイクというか、とりあえず考えるのが面倒くさくなった結果こうなったわ」


フリップ『ゲストを演じきれ!』


美春「第1回からの古参リスナーなら知っていると思うけれど、流くんが極悪非道なスタッフに無理矢理やらされていた『ゲストを作り出せ!』とかいうエアゲストと会話をするコーナーがあって、流石に出演者が4人もいてエアゲストの相手なんて滑稽以外の何物でもないと思ったから毎回4人の中からゲスト役を決めてトークをするとういうコーナーよ」


美沙「それって『ゲストを作り出せ!』の時みたいにリスナーの皆から設定とかを募集するの?」


美春「来たときはその設定にそってやればいいし、来ないなら普段通りやればいいと思うわよ。私のプレゼンは以上だから、次は美沙の考えた新コーナーを発表して」


美沙「わたしの考えた新コーナーはコレ」


フリップ『嘘つきはダレ?』


美春「あえて予想はしないから、どんなコーナーなのか教えて」


美沙「ちょっと美春ちゃんのコーナーと似ちゃったけど、このコーナーは4人の中から回答者を1人決めて、回答者は残った3人に『好きな食べ物は?』とか『好きな曲は?』に質問をして、3人はそれに対する回答をします。回答者は3人の中から誰が嘘をついているのか見つけ出すコーナーです」


美春「1つ質問しても良いかしら?」


美沙「いいよ」


美春「回答者が嘘つきを見つけたら何かご褒美はあるのかしら?」


美沙「美春ちゃん、わたしがその部分を決めていないのをわかっていて聞いているでしょ?」


美春「えぇ、もし決まっていないのなら私がここで決めてあげようと思って」


美沙「嫌な予感しかしないけど」


美春「そうね、回答者が噓つきを見破れたら『一問十答』のポイントを5ポイント加点、見破れなかったら回答者以外の3人に2ポイント加点でどうかしら?」


美沙「美春ちゃんにしては普通な提案だね」


美春「普通ってどういう意味かしら?」


美沙「きっとスタッフの奢りで美味しいケーキとか言うと思ったから」


美春「それも考えてはいたけれど、そうなると見破れなかったときに罰ゲームが必要だと言われて自分の首を絞めることになるし、ラジオ的にそれは面白くないと思ったのよ」


美沙「じゃあ、ご褒美はそうすることにして、わたしのプレゼンは終わりです」


美春「さて、それぞれのプレゼンが終わったところで会場にいる皆さんに私と美沙どちらのコーナーが面白そうだったかジャッジしてもらいます」


美沙「まずは美春ちゃんの考えた『ゲストを演じきれ!』が良いと思う人は手を上げて」


全体のおよそ5割が挙手。


美春「なんか嫌な予感がするけれど、美沙の『噓つきはダレ?』が良いと思った人は挙手」


こちらも全体のおよそ5割が挙手。


美沙「同じくらいだね」


美春「そうね。台本にはこうなった場合スタッフの独断で決定すると書いてあるから結果としてこのくだりは無駄だったという事ね」


美沙「と、取りあえずみんな協力してくれてありがとう。以上、特別コーナー『新コーナー考案会議』でした」




美春「川野流の」

美沙「中波放送」

観客「春直前スペシャル」




美春「さて、公開録音もそろそろ終了の時間よ」


美沙「楽しかったね」


美春「そんなに楽しかった記憶はないけれど」


美沙「そんな事言わないでよ。折角の公開録音でこんなに多くのリスナーさんが来てくれたんだから」


美春「その中の十数人はスタッフの用意したサクラよ」


美沙「サクラと言えば次回の更新は4月だからわたしたちの季節だね」


美春「もうそんな時期なのね。個人的な話だと私たちのライブもあるわよ。レッスンが大変なのよね」


美沙「美春ちゃん、一緒に頑張ろうね。という事で『川野流の中波放送 春直前スペシャル~流くんがいないなら別番組のような気がするけど気にしない~』お相手はスプリングスの桜野美沙と」


美春「やっぱりサブタイトルが長過ぎよ。スプリングスの桜木美春でした」


2人「ばっ波~」




さぁ、決めようか 最強のラーメン

賽は投げられた 激アツに大ゲキトツ


「さて、今日わたしたちが来たのはお馴染みスタジオ近くにあるラーメン『黒一点』さんではなくて中波放送の公開録音」

「結局歌わされるのね」

「収録中はいつものエンディングが流れていたからホッとしていたけど放送するときはこれを流すらしいから元気よく行くよ」


塩なんて薄い味 誰が求めるの?

醤油が濃すぎて 味が分からなくなっているだけだよ

ケンカね?

良いよ

激アツに

大ゲキトツ


塩 塩

醬油


醤油 醤油


私も

わたしも


後には引かない


「さぁ、ここからはスポンサーに媚を売る時間よ。『黒一点』名物の黒い塩ラーメンは麵まで黒い徹底ぶりよ。見た目の黒さから濃い塩味を想像すると思うけれど、あっさりとしているから女性にもお勧め出来るわ」

「わたしオススメの人気のメニュー醤油ラーメン。メニュー名はどのラーメン屋でも見かけるけどその違いは一目瞭然。美春ちゃんの紹介した黒い塩ラーメンにも負けない黒いスープには田中くんの大好きな煮卵が乗っていて夜空を思い浮かばせてくれるよ」


醤油の美味さは 塩には出せないよ

あっさりとした味を 醬油は出せるの?

良いよ

そういう事ね


交換


実食して

比較しよう

激アツに

大ゲキトツ


塩 塩

醬油


醤油 醤油


わたしも

私も


後には引かない


「悔しいけれど人気メニューというだけあって醤油ラーメンも美味しいわよ」

「悔しいけどわたしもこの黒い塩ラーメンの虜になりそうだよ」


激アツに

大ゲキトツ


塩 塩

醬油


激アツに


醤油 醤油


大ゲキトツ


塩 塩

醬油


醤油 醤油


この勝負

この勝負


引き分け!




美春「さて、ここからは停波放送よ」


美沙「公開録音直後の楽屋からお送りしているよ」


美春「まさか、激アツラーメンまで歌うことになるとはね」


美沙「フルバージョンだったね」


美春「リスナーが楽しんでくれて、帰りに黒一点でラーメンを食べに行ってくれたら私たちとしては満足よ」


美沙「美春ちゃん今日はいつもと違って優しいね」


美春「疲れているのよ」


美沙「じゃあ、停波放送はこの辺で終わろうか」


美春「以上、停波放送でした。次回は通常放送よ」



美沙「川野流の中波放送 この番組は黒さならどこにも負けないラーメン屋『黒一点』と水守プロダクション、和水プロダクションの提供でお送りいたしました」

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