第2話 風の冷たさ

 働く。それは、願いへの一歩であり、自分のためにしていること、最初の僕はそう考えていた。

 「いらっしゃいませ」

僕はレジに並ぶお客さんに声をかけた。声をかけたというより、この言葉は、今の僕に与えられた、選択肢でしかないような気がした。例え、そこにならんだのが誰であっても、この言葉は変わらない。だから、声をかけたのではなく、発した選択肢にしかすぎなかった。この一言だけで、そんなことを考えた。

 並んだお客さんは、かごをおいた。僕は、ここで働くとき、店長に習った接客の仕方通りにレジを打ち、決まったセリフを発した。

 「合計で527円になります。ちょうどお預かりします。ありがとうございました。」

人間でいながら、気持ちのこもらないフレーズ人間味をおびてないとおもった。

 時間は、20時。

「阿辺くんもうあがっていいよ。」

店長にそう言われた。自分では大人になった。そう感じていたとしてもこの言葉を聞くと、まだまだ未熟だと感じる。レジに並ぶお客さんを確認し身仕度をし、最初の「働く」をおえた。コンビニをでると、冷たい風が音をたてずに僕に当たった。

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