風の名前

Writer bear

第1話 風の形

 大人でも子供でもない。外に出ればいつもこう言われる。そんなことにはなれている。年齢のせいだろうか、風貌だろうか。とりあえず、社会から見た僕は未熟者だということだ。

 時間があった。時間の余裕があった僕でも、金銭的な余裕は全くなかった。そんな僕は、行ってみたい、見てみたいものがあった。東京にいる今、味わうことのできないような、大自然から、東京を見たい。そんなものを求めていた。それが今の願いであった。

 時間はある。だから、その願いを叶えたい。そう思う時間は増えた。お金はない。願いへの距離を縮めるため、何か始めたい、僕の中の風はひとつの形になろうとしていた。家の近くのコンビニでは、アルバイトを募集していた。時間は、もっている。十分に。

 僕は今、働くことになった。今の働く理由、願いのため。それだけは強く思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る