第3話「俺が守る」
翌朝
窓から差す朝日の光を浴びてガイストは目を覚ました。
「う~ん、もう朝か」
ガイストは上半身を起こして大きく腕を伸ばした。
「すーすー」
ガイストの横ではセリスがまだ寝ている。
てか一緒のベッドで寝てたんかい、腐女子が鼻血出すぞ。
「一人じゃ寝れないって言うんだもんなあ」
ガイストはセリスの寝顔を見ていた。
「ぱっと見だけじゃ女の子にしか見えん。けど」
そ~っとセリスの……に手をやった。
「やっぱりあるよなあ。つかいっちょ前に元気になっとる」
何しとんじゃおのれは。
「う~ん」
セリスは目を覚ましたようだ。
「あ、起こしちゃったか」
「おはようお兄ちゃん」
「おはようセリスちゃん。じゃなかった、セリスくんか」
「セリスでいいよ」
「じゃあセリス、顔洗って着替えてから朝ごはん食べに行こうか」
「うん」
二人は身支度を済ませてから食堂へ行った。
朝食を食べ終わって
「さてと、これからどうするかな」
「ちょいとちょいと、お兄さん」
女将さんが声をかけてきた。
「あ、女将さん、何か?」
「あんたその子の家探すんだろ? だったらいい手があるわよ」
「え、どんな手ですか?」
「町の裏通りによく当たる占い師がいるんだよ。あたしはよくそこで無くし物の在処とかを教えてもらうのさ」
「占い師、ですか」
ガイストは訝しげに女将さんを見つめる。
「まあ、騙されたと思って行ってみてちょうだいな」
「うーん、他に手がかりもないし、行こうかセリス」
「うん、お兄ちゃん」
ガイストとセリスは裏通りに行った。
そこは表通りとは違って暗く薄汚れた感じではあるが、通りゆく人々は皆明るい表情をしていた。
「えと、ここか」
二人はいかにも占い師の館という感じのテントの前に来ていた。
「さてと、すみませーん」
「どうぞ入ってくださいな~、ガイストさん」
中から声がしてガイストの名を呼んだ。
「!?」
ガイストは驚いて後ずさった。
「あ~ごめんなさいね驚かせて~。さ、中へどうぞ~」
「は、はあ」
ガイストとセリスはおそるおそる中へ入った。
中は何やら怪しげな雰囲気だった。
そして奥にいたのは黒いローブを身に纏った銀色の髪のややぼーっとした顔の女性だった。
「ようこそガイストさん、セリスさん。あなた達が来るのはわかってましたよ~」
女性はのんびりとした口調で言った。
「じゃあもしかして、俺が何を聞きに来たかもわかってます?」
「ええ、セリスさんのお家がある場所ですよね~」
「……あの、占いってそんな何でもはっきりわかるんですか?」
ガイストがおそるおそる尋ねると
「あ~、私のは占いって事にしてますけど、実は違いますよ~」
「え、じゃあ何ですか?」
「それは言えませ~ん。禁則事項です~」
「あなたはどっかの巨乳未来人ですかい」
「ま~私も巨乳ですけどね~、見ます~?」
そう言って女性はローブの胸元を広げようとした。
「いや、教育によろしくないので。それより」
「はいはい、お家ですよね~セリスさんのお家はここから東へ五百キロほど行ったところにあるタカマハラってとこにありますよ~」
「……あの、セリスは昨日迷子になったみたいなんですが? そうだよね?」
ガイストがセリスに尋ねる。
「そうだよ、昨日お家を出て森の中に入ったらね、魔物に追っかけられちゃって、それでお兄ちゃんに助けてもらったの」
「それじゃあどうやってもそのタカマハラからここまでは?」
「ああ、セリスさんの力が一瞬だけ目覚めてたようですね~、だからワープしたんでしょ、魔物も巻き添えに~」
「は? セリスの力?」
「そうですよ~。セリスさんはガイストさんが探している人ですよ~」
「え、セリスが勇者!?」
ガイストは驚いてセリスを見た。
「違いますよ~、優者ですよ~。勇ましき者じゃなくて優しき者です~」
「へ?」
「読みは同じだから間違って伝わったんでしょうね~。優者、希望の優しき者。武力じゃなくて心の力で闇を払い、世界を救う者ですよ~」
「そうなんですか……あの」
「はいはい、これからどうすればいいかでしょ~」
「はい」
「あのですね~、ガイストさんの他にセリスさんの元に集まる三人の仲間を見つけてくださいな~」
「えと、その三人はどこに?」
「……すみません。それは私にもわからないの」
女性はのんびりした口調をやめて普通の口調になった。
「え?」
「ただ、タカマハラへ向かえばその途中で他の三人に出会う。それだけはわかるわ」
「そうですか。とりあえずセリスの家を目指せばいいのですね?」
「そうですよ~、お家へ行けばわかりますよ~」
口調がのんびりに戻った。
「わかりました。どうもありがとうございました」
「いえいえ~。ああ、ちょっと待ってください~」
そう言って女性は奥に置いていた道具箱から何かを取り出した。
「セリスさん、そんなフリフリじゃ旅しにくいでしょうからこっちの服をどうぞ~」
女性が出してきたのは真っ黒なゴスロリ衣装だった。
「あの、それじゃあまり変わらないような」
「あ、違った。こっちでした~」
それは女の子用の白いスクール水着だった。
「これをセリスさんに着せて……ハアハアハア」
女性はヨダレを垂らしながら呟くと、ガイストは無言で剣を抜こうとした。
「もう~、冗談ですよ~これですよ」
そう言って出してきたのは白いコートに黒いシャツとズボンだった。
「最初からそれ出してくださいよ。さ、セリス。着てみて」
「うん」
「お、よく似合ってるな」
「ホントですね~よかった~」
「えへへ」
セリスは嬉しそうだ。
「それではお世話になりました」
「気をつけてくださいね~」
「お姉ちゃんまたね」
「はい、またね~」
ガイストとセリスはタカマハラへと旅立っていった。
「セリスが優者、希望の優しき者か」
「ん? 何お兄ちゃん」
「いや、何でもないよ」
「ふーん」
(しかしあの女性はいったい? とにかくセリスは俺が守る)
「ふう~、このくらいいいですよね~。でもあんまりやったらアマテラス様に怒られちゃいますね~……まあ、セリスさんの着替えシーン写真に撮ったからこれ見せれば……ハアハア」
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