第24話「完全覚醒、そして」
「全て滅ぼしてやる、この体を使ってな」
サキの声色が変わった。
「い、いったいサキちゃんに何が!?」
ガイストはサキの変化に驚きながら言うと
「あれはサキさんではありません、妖魔です」
エミリーはサキを見つめながらガイストに言った。
「え? もしかしてサキちゃんが取り込んだはずの妖魔が」
「ええ、妖魔の意識は完全には消えてなかった……そして」
「この娘の心の隙をついて乗っ取り返したのだ。俺の意識はあと少しで消えそうだったがな。運がよかったわ」
妖魔が後に続けて言った。
「う、そんなのないよ」
「マジかよ、くそ」
イリアとバンジョウは歯ぎしりしていた。
「さて、せっかく生き返ったところ悪いが、死ね」
妖魔が大きな黒い光を放った。
だが
「何だと!?」
「そんなことさせないもん」
セリスが放った光が黒い光を消し去った。
「え? なあ、もしかしてセリスは?」
バンジョウはセリスを指さして皆の方を向いた。
「ああ、そのようだな。セリスは」
ガイストはセリスを見つめていた。
「うわ、ちょ!? やば、なんかセリスが男らしくかっこ良く見えた!」
イリアは顔を真っ赤にして慌てていた。
「ええかっこいいですよ~だってわたしの旦那様ですもん~」
セイラはもう決定事項と言わんばかりにそう言った。
「セイラあなた……あ、セリスさんが義理の息子ってのもいいですね~。母娘一緒にしてもらうのも、ジュル」
エミリーはヨダレを垂らしながらっておい。
「ほう。希望の優しき者、優者の完全覚醒か。だがその力も俺が取り込んでやるわ!」
妖魔が先程よりも数倍大きな黒い光を放つ。
「やあっ!」
それに対するかのように、セリスの全身から神々しいまでの光が放たれる。
そしてそれは黒い光と互いの中央でぶつかり合い一進一退となった。
「う……」
「ぐ、そりゃああ!」
妖魔が更に力を込めてセリスの光を押し返し始めた。
「ん~~~~!」
セリスはなんとか踏ん張っているが苦しそうだった。
「ああ!? セリス!」
「どうするよ!?」
「あたしにわかるわけないでしょ!」
「お母さん、どうすれば?」
セイラがエミリーに尋ねると
「守護者四人も覚醒してセリスさんに力を送れば。でも今の私では一度に二人を覚醒させるのが精一杯なの」
エミリーがそう答えた時
なら拙者が男二人を受け持ちましょう。エミリー様は娘御とイリア殿を。
突然どこからともなく声が聞こえてきた。
「え、誰だ!?」
「バンジョウ、この声の主はセリスのご先祖の彦右衛門様だ」
「ヒコエモン? ……まさか!?」
「知っているのか?」
「ああ、御伽話に出てくる英雄の名前だよって、実在してたのかよ!」
詳しい話は後でな。
さあガイスト殿、バンジョウ殿。拙者が気を送るから目を閉じられよ。
「はい!」
「ああ!」
ガイストとバンジョウは目を瞑った。
すると、二人の体が光輝きだした。
「おお、これは」
「すげえ」
ガイストとバンジョウは自身から湧き出てくる力に驚いていた。
「え? ひ、彦右衛門さんってもしかして」
エミリーは彦右衛門の力を見て何かに思い当たった。
「ってそれは後ね。さ、セイラとイリアさんも目を閉じて」
「ええ!」
「うん、お母さん!」
「じゃあ、はあっ!」
セイラとイリアの体も光輝きだした。
「うわ、あたしからこんな力が」
「ひゃあ~!?」
「さあ皆さん、セリスさんにその力、心の力を!」
「はい!」
ガイスト、バンジョウ、セイラ、イリアはそれぞれの思いを込めて、セリスに向けて手をかざした。
すると四人の手から光が放たれ、その光はセリスの体に吸い込まれていき
セリスは更に光輝きだした。
「な、何だ!?」
「……サキお姉ちゃん、今助けるね、やあっ!」
セリスの光は妖魔の黒い光を消し去った、そして
「ギャアアアアーーー!」
妖魔はその光をまともに浴びた。
そしてサキの体から黒い霧のようなものが出てきた。
あ……俺は。
「ねえ、もういいんだよ」
セリスはその黒い霧、妖魔に語りかけた。
もういい?
……何だ、この暖かさは?
心が……少しずつ癒やされている?
「うん、そうだよ。わかるよね?」
……ああ、今ならわかる。
これで全ての闇が、悪しき縁が。
「そう、これで全部終わりだよ。もう妖魔さん達も苦しまなくていいんだよ」
そうか……俺達をも救ってくれたのか。
……ああ、本当に、これで終わりだな。
……ありがとう、優者達よ。
妖魔は光の粒となって天へ昇っていった。
それと同時にサキの姿は元に戻った。
「う、あれ?」
「お姉ちゃん!」
セリスはサキに駆け寄った。
「う、うええぇ~ん!」
サキは大粒の涙を流しながらセリスに抱きついた。
「ごめんなさいセリス、皆さん……うぇ~ん!」
「お姉ちゃん、ボクもごめんね。今まで辛かったでしょ、よしよし」
セリスはサキの背中を撫でて慰めた。
「これで終わったんだな」
バンジョウは目を潤ませていた。
「そうよねー、ああ、あんなカッコいいんじゃもう勝ち目ないわ」
イリアは涙目で冗談混じりに呟いた。
「セリスく~ん、わたしにもよしよしして」
セイラはそう言いながらも今はこのままでと思いじっとしていた。
「これで……あ、皆、あれを見ろ」
ガイストは空を見上げながら言った。
「世界を覆っていた黒い霧が消えていく」
これでこの世界は、いえ全てが救われましたな、エミリー様。
「ええ。ところで彦右衛門様、あなたはもしや」
拙者はそんな器じゃないと言ったんですがねえ。
いつの間にか力を授けられてこうなりました。
「そんな事はないですよ。あなたは私なんかより、いえどこの世界のよりも立派な守護神様ですよ」
エミリーは彦右衛門にそう言った。
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