第22話「母娘の再会」

「フフフ。さあ、どっちにしようかなあ」

 サキは妖しい笑みを浮かべた。


「あ、あ」

 セイラはまだ立てずにいた。

「く、セイラちゃんを庇いながらでは逃げ切れん、こうなったら」

 ガイストは剣を構えた。

「へえ、どうする気?」

 サキは構えも取らずに立っていた。

「でりゃああああ!」

 ガイストはサキに突撃して斬りつけたが。

 

「な、残像!?」

 サキはそこにいなかった。


「捕まえた」

「!?」

 声がした方を見ると

「ひ、あ」

 サキはセイラに馬乗りになっていた。

「セイラちゃん!」

 ガイストが駆けつけようとしたが

「ハッ!」

「ウワアアー!」

 ガイストはサキが放った爆風で吹き飛ばされた。


「後はあんた一人ね、えい」

「ひゃっ!?」

 サキはセイラの服を破り捨てた。

 そこには小柄ながらも女性の裸体があった。

「その体でセリスを誘惑したのね」

「そ、そんな事」

「……ただでは殺さないわ」

「え?」


 サキはセイラの秘所に手を当てた。

「ひ、何を」

「めちゃくちゃにしてから殺してあげるわ」


 その時、突然どこからともなく放たれた光線が轟音を立ててサキに直撃した。


「……誰?」


「はあ、はあ、それっ!」

 セイラはサキの下から消えてテレポートした。


「セイラ、大丈夫!?」

 その人物はセイラに自分が着ていた上着を被せながらそう言った。

「あ、はい。あの、あの時の占い師さん?」

「ええそうよ……無事でよかった」

 セイラを助けだしたのは黒いローブを身に纏った銀色の髪の女性、あの占い師だった。


「へえ。あんた出てきてもいいの?」

 サキは女性を知っているようだった。

「掟なんかもう関係ないわ、私はこの子を守ると決めたのよ」

「そう。でもたとえこの世界の守護神エミリーでも私に勝てるかなあ?」

「え、守護神様?」

 セイラが女性、守護神エミリーを見上げた時

「そ、そうだったのか。なら全てわかって当然だな」

 ガイストが体を引きずりながらセイラとエミリーの後ろに歩いてきた。


「あら? 粉々にしたと思ったのに?」

 サキは首を傾げた。

「この剣が俺を守ってくれたんだ。無傷というわけにはいかなかったがな」

 ガイストが持っているもの、社にあったセリス達の先祖の剣が光り輝いていた。

「ふーん。まあ死ぬのが少し先になっただけよね」

「それはどうかしら? 私もい」


 ドシュッ!


「え?」

 エミリーは何が起こったかわからないという表情になった。

 そしてエミリーは倒れた。胸から血を出して。


「エ、エミリー様!」

「守護神様!」

 セイラとガイストはエミリーに駆け寄った。

「そんな……こんなこと」

「喋らないで! 今わたしが」

 セイラが回復魔法を唱えようとしたが

「無理よ、私には回復魔法は効かないわ」

「でも……」

「いいのよ……ねえ、セイラ。顔をよく見せて」

「は、はい?」

 エミリーはセイラの顔に手を当てた。

「大きくなったわね。あんなにちっちゃかったのに」

「え?」

「……守護神様。俺とバンジョウはあなたとセイラちゃんが縁者では、と思いましたが、もしや」

 ガイストは膝をついてエミリーに尋ねた。

「ええ。セイラは、私の娘です」

「え、え?」

 セイラは訳がわからなくなっていた。


「セイラは、私と人間の男性の間に生まれた子供……だけど、いかに神でも、全て自由になるわけじゃないのよ」

「何か神々全体の掟があったとかで一緒に暮らせずにいた、と?」

「ええ。……夫は私と別れた後に病死してしまいました。セイラもその病のせいで長い間目が見えずにいました」


 ガイストは沈黙していた。

「でもセリスさんのお陰で……本当に感謝していますわ。母親として」

「あ、お」

 セイラが何か言おうとした時


 彼女の胸から手が生えていた、いや


「あ?」

「ふーん。まあ、あんたに免じて穢すのはやめてあげるわ、だから母娘仲良くさっさと死んで」

 セイラはサキの手刀で胸を貫かれていた。


「あ……セイラ」

「お、かあ、さ……ん」


 セイラとエミリーは同時に息絶えた。



「き、貴様」

 ガイストはサキを睨んだ。

「あ、あんたも死んでね」


 その時

「な、何だ!?」

「う、何よこれ!?」


 剣が突然強い光を放ち、気を失ったままのセリスを照らした。

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