第21話「敵は……サキ?」

「サキちゃんが?」

「な、なんだと? マジでか?」

「え、嘘よね?」


「本当ですよ。私がその妖魔ですよ」

 サキは平然とした顔で答えた。


「君はセリスの双子のお姉さんだろ?」

 ガイストが信じられんという表情で聞いた。

「はい、そのとおりですよ」

「……ならいったい?」

「えーと、正確には妖魔と融合したと言えばいいかなあ?」


「な、何だって!?」


「実はもうずっと前にその妖魔がここに来てたんですよ。で、そいつは私の体を乗っ取ろうとしたんですけどね、逆に私がそいつを取り込んだんです」


「き、君はそんな事できるのか?」

「はい、私にもセリスみたいな力ありますし」

「な、なんだと!?」


「ね、ねえサキちゃん。あなたその妖魔の力って自分の意志で使えるの?」

 イリアはおそるおそる尋ねた。

「はい、自由に使えますよ」

「じゃ、じゃあさ、世界を覆う黒い霧なんとかしてよ。まだそのまま残ってるし」

「嫌です」

 サキは真顔で拒否した。

「え? なんでよ!?」

「だって、人間を滅ぼせばセリスを取られる事はないんだから」

「へ?」


「セリスは私だけのものよ。誰にも渡さない……取られるくらいなら全て滅ぼしてやるわ」


 ゾクッ!


「あ、あ」

 ガチガチガチガチ

 イリアは真っ青な顔で震えていた。

「あ、あの時のセリス、いやそれ以上」

 バンジョウは全身が凍りつくような寒気がした。

「こ、怖い……」

 セイラは恐怖のあまり腰を抜かしていた。

「……あ」

 ガイストは全身が金縛りにあったかのように動けずにいた。


「ねえお姉ちゃん」

 セリスだけが普通にサキに話しかけた。

「何?」

「滅ぼしちゃダメだよ。皆で仲良くしようよ」

「嫌よ、現にそこの女だってセリスに」

 サキはセイラを指さして言った。

「ひっ」

 ガチガチガチガチ

 セイラは逃げ出そうとしたが動けなかった。


「そうだ。その女狐からやっちゃお」


 チュドーン!


「はあ、はあ」

 イリアはサキに向けて爆発呪文を放った。

「セ、セイラちゃん、だいじょ」


 ズドッ!


「あ、れ?」

 イリアは胸を貫かれて倒れた。

「あんた何するのよ」

 サキが放った黒い光で。彼女は全然ダメージを受けていないようだった。


「イリア!」

 バンジョウがイリアに駆け寄り、抱き起こした。

「おい! イリア……あ」

「バンジョウ、イリアは」

 遅れてきたガイストが聞いたが、バンジョウは無言で首を横に振った。

「くっ……」


「さ、次は」

「お姉ちゃんやめて!」


「……セリス、少し寝ててね」

 サキはセリスに向けて手をかざした。

「あれ……?」

 セリスはサキの力で気を失って倒れた。

「これでいいわ。後でセリスを」

「どうする気だ?」

 ガイストは剣を構えながら聞いた。

「後であんた達と過ごした時の記憶を消すわ。そうすればセリスが悲しむことはないでしょうし」

「そ、そんな事までできるのか?」

「ええ。だから安心して死んで」


「猛虎烈光波!」

 バンジョウがサキに向けて闘気弾を放った。

 その衝撃で土埃が辺りに舞っていた。


「……こんなので倒せるとでも?」

 しかしサキには効いてなかった。

 だが

「うわ、意外にでけえ」

 サキの服はボロボロで裸に近い状態になっていた。

 そのせいで歳の割に大きい胸が見えていた。

「死ね」

 サキはまた黒い光を放った。

「はっ!」

 バンジョウは飛び上がってそれをかわした。

 そして

「まだ未完成だが……くらえ! 奥義・猛虎聖闘回天脚!」

 バンジョウは蹴り技の体勢で体を高速回転させて降下していったが


 ガシッ!

「え!?」

 サキは片手でその蹴りを受け止めた。

 そして

「えい」

「ギャアアアア!」

 サキはバンジョウの足を握り潰した後、地面に叩きつけ

「世の中には男女問わずあんたみたいな変態がいるもんね。あの女共みたいに死んじゃえ」


 ドスッ!


「ガ……」

 バンジョウは胸を手刀で貫かれた。


「バ、バンジョウー!」

 ガイストは叫んだ。


 サキは全身返り血で真っ赤になっていた。

 そして手についた血を舐めながら


「さてと、あと二人……フフフ」


 冷たい目でガイストとセイラを睨みつけた。

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