第19話「敵の居場所は?」

 しばらくしてから女性陣が料理を持ってきた。


「こんなのしかありませんけど」

 サキが言うと

「へー、これお米だよな?」

 バンジョウは器に盛られた白いものを見て言った。

「はい。これもお父さんが送ってきたんです」

「そうなのか、あとはどれも普通の家庭料理だな」

 メニューはごはんに味噌汁、焼き魚にほうれん草のおひたし、小芋の煮っころがしだった。

「サキちゃんって料理上手よねー、あたしいろいろ教わっちゃったわ」

「わたしもです~」

「ねえ、早く食べようよ」

 セリスが皆に言った。

「そうだな、それじゃあいただきます」

 全然手を合わせてそう言った。




 食べ終わってから

「皆さん、お風呂沸いてますからどうぞ」

 サキが皆に向かって言った。

「ああ、俺達は後でいいから、セイラちゃんかイリアが先に」

 ガイストが女子達の方を向いて言う。

「じゃあそうします~」

「あ、じゃあセイラちゃんと一緒に……はやめとくわ。あたしも後でいいからセリスが一緒に入ったら?」

「うん、こっちだよセイラちゃん」

 セリスはセイラの手を引いて出て行った。


「……セリスってあのセイラさんが好きなのね」

 サキは少し寂しそうに呟いた。

「サキちゃんも一緒に入ってきたらどうだい?」

 ガイストがサキにそう言う。

「私は最後でいいですよ」

 サキは手を振って答えた。


「そうか。しかしサキちゃんって九歳にしてはしっかりしてるというか」

 ガイストが感心して言った。

「え、そうですか?」

「そうよ、あたしなんかよりずっと大人っぽいわよ」

「ああそうだよなあ。ホントに大人っぽい」

 イリアとバンジョウもそう言った。

「……ありがとうございます」

 サキは照れながら礼を言った。




 全員が風呂に入った後、ガイスト達は二階の部屋に集まっていた。

「さてとガイスト、これからどうするよ?」

 バンジョウは寝っ転がりながら聞いてきた。

「そうだな。黒幕がどこにいるかわからんからこちらから打って出れんし」


「ねえ、ここで待ってたら向こうから来るかなあ?」

「……できる事ならここを戦場にはしたくないが」

「あ、そうだよね……」

 イリアはこの家や周りの風景を思い浮かべた。


「う~、わたしセリスくんと一緒に寝たいです~」

 セイラは不満そうに言った。

 セリスとサキは一階の部屋で一緒に寝る事になった。

「セイラちゃん、今日はセリスはお姉ちゃんと二人だけにしてあげような」

「……は~い」

「そうよセイラちゃん、今日は、あれ?」


「ん、どうした?」


「あれって何かな?」

 イリアが指さした壁の方には、何かが書かれている額縁が飾られていた。

「あれも古代文字のようだな」

 バンジョウはそれを見て言った。

「そうか、じゃあ読めんか」

「あのさー、もしかしたらセリスの両親はあれ読めるんじゃ?」

「もしそうだとしても、いつ帰ってくるかわからんだろ」


「あの~、わたしあれ読めますよ~」

 セイラは少し眠そうな顔をして言った。


「えええ!? な、なんで!?」

 ガイストは驚きながら尋ねた。

「なんでかわかりませんけど~」

 セイラは首を傾げながら言った。

「ま、まあ。で、セイラちゃん、あれには何て書かれているの?」

「え~とですね~『優者と四人の守護者が集まりし時、我が剣が最強の妖魔の居場所を示すであろう』って」


「え、もしかしてあれ、セリスのご先祖様が?」

 ガイストが額縁を見ながら言う。

「そうみたいだな」


「で、その剣ってどこにあるのよ? 書いてないの?」

「それは書いてないです~」


「うーん、そうなのか」


「もしかしてこの家にあったりして?」

「なら明日サキちゃんに聞いてみるか」


「そうだな、じゃあ今日は寝るか。さて、セイラちゃん俺と一緒に」

「何言ってんのよ、あたしが一緒に寝るのよ」


「お前らそれをセリスが見たらどうなるかわかってんのか?」

 ガイストは冷や汗をかきながら言った。

「はい、やめます」

 バンジョウとイリアはおとなしく一人で寝た。




「……セリス、もうどこにも行かないでね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る