第17話「ただいま」
一行は何事も無く順調に歩を進める事ができた。
この調子だと予定よりも早く着きそうだった。
そして森の道を進んでいると
「あ! ここボクのお家の近くだ!」
セリスがそう叫んだ。
「そうなのか? じゃあ家の場所わかる?」
「うん、こっちだよ!」
そう言ってセリスは森の奥へと走っていった。
抜かり無くセイラと手を繋ぎながら。
「追いかけるぞ!」
「ああ!」
「ええ!」
三人もセリスとセイラの後を追って走っていった。
そして森を抜けるとと
「ここがタカマハラか?」
ガイストは辺りを見ながら呟いた。
そこは広い花畑があってそこに多くの花が咲き乱れていて
鳥や蝶が飛び交い、綺麗な水が流れる川もあり
森と遠くの山々に囲まれているような場所だった。
「へえ、ここってまるで天国みたいね」
イリアもキョロキョロ辺りを見ながら言う。
「俺の世界の伝説どおりだ。やっぱここがそうなのか?」
バンジョウも辺りを見渡してそう言った。
そして
「あ、セリスとセイラちゃんがいたわ」
セリスはセイラと一緒に小さな花を眺めていた。
「あ、お兄ちゃん達」
「皆さん、このお花セリスくんが植えたんですって~」
「へ~そうなのか。綺麗な花だな」
ガイストは屈んでその花を見た。
「ホントだな、セリスがちゃんと世話してたから綺麗に咲いたんだろうな」
バンジョウも感心して花を眺めていた。
「えへへ」
セリスは褒められて嬉しそうにしていた。
「ねえセリス、花もいいけど早く家に帰ってさ、お姉ちゃんを安心させてあげなよ」
「うん、イリアお姉ちゃん」
セリスの家はそこからすぐの所にあった。
それは最初にセリスが言ったとおりたしかに木も使われているようだった。
「ほう、これはまた見たこともない造りの家だな」
「そうねえ。あたしも見たことないわ」
ガイストとイリアが家を見上げながら言うと
「うーん、なんか俺の故郷で見かけるような普通の家に似てるな」
バンジョウがそんな事を呟く。
「え、そうなのか?」
「ああ。でもなんつーか、うーん、どう表現したらいいんだ?」
その家は黒っぽい土壁に木と半透明のガラスのようなものでできた戸があり、二階建てで二階の窓にも戸と同じものがある家だった。
「まあそれは置いといて。さ、セリス。早く中へ」
ガイストがセリスを促した時、戸が音を立てて開いた。
「……セリス?」
「お姉ちゃん、ただいま」
「今までどこ行ってたのよ、心配してたのよ」
「……ごめんね」
セリスとその姉、サキは抱き合った。
「よかったです~」
セイラは少し目を潤ませながら呟いた。
「ほんとよかったね……でも」
「ああ、よかったな……でもな」
イリアとバンジョウは思うところがあった。
「俺もたぶんお前達と同じ事を思ってるが、今はそっとしておこう」
ガイストはそう言ってしばらくセリスとサキを見つめていた。
「あ、ところでセリス。その人達は?」
サキはガイスト達に気づいた。
「ボクのお友だちだよ」
「え?」
「あの、えと、サキさんだよね?」
ガイストは遠慮がちにサキに尋ねた。
「はい。そうですけどあなたは?」
「俺はガイストという旅の戦士だよ。君の弟のセリスが迷子になってたのでここまで連れてきたんだ」
「え、そうだったんですか? それはどうもありがとうございます」
「いやいや。ところでさ」
「何か?」
「いきなり失礼だけど、サキさんって何歳?」
「九歳ですけど?」
「セリスも九歳だけど?」
「ええ、私達双子ですから」
そう、サキはセリスそっくりで背丈もほぼ同じの少女だった。
「双子だなんて聞いてなかった。もっと年上かと思ってた」
「ああ、俺もだ」
ガイストとバンジョウがそう呟いた。
「え~、年下の義姉~?」
セイラは何か気が早い事を呟いた。
「あのさー、たしかあんた達親がいないのよね?」
イリアがサキに尋ねた。
「ええそうですよ。私とセリスの二人だけでここに住んでます」
「結構大変なんじゃない?」
「そんな事ないですよ。あ、すみません。どうぞ中へ入ってください。そこでゆっくりお話を」
「え、ええ。お邪魔します」
サキに案内されて一行は家の中に入った。
「さ、どうぞそこに座ってください」
サキは案内した客間らしき部屋で皆に言った。
「これってちゃぶ台?」
バンジョウがテーブルにしては脚が低いものを指さして尋ねた。
「そうですけど? それがどうかしましたか?」
「いや、俺の故郷にあったものと似てたんで、もしかしてと思ってさ」
「そうでしたか」
「それにこの床は畳だよな?」
「ええ。あ、今お茶持ってきますね」
サキはそう言って部屋から出て行った。
サキが出て行った後でガイストがバンジョウに聞いた。
「バンジョウ、畳って何だ?」
「うーん、まあ分厚い絨毯のようなものだと思ってくれればいい」
「何かわからんが、ようはどれもお前の故郷にあるものに似てるんだろ?」
「ああそうだ。だがそれがなんつーか、進化してるって言えばいいのかなあ?」
その時「カチッ」という音がした後、突然部屋が薄暗くなった。
「なんだ? ランプの油が切れたか?」
ガイストとバンジョウがそう言うと
「ねー、これ引いたら暗くなったんだけどー?」
イリアが天井からぶら下がっている紐を握りながら言った。
「それデンキの紐だよ。貸して」
セリスがそう言って紐を何回か引っ張るとまた明るくなった。
「なんだこれは? 魔法の道具か?」
ガイストが尋ねると
「あたしこんなの知らないわよ」
イリアは首を傾げた。
「なあセリス、これって前からあったのか?」
バンジョウがそう聞くと
「うん。ずっと前からあったよ」
「そうか……」
「バンジョウ、これもお前の故郷にあったのか?」
「いや、ない……だが」
「だが、何だ?」
「向こうで旅してる時にな、電気っていうエネルギーを利用して明かりを灯す装置を作ってた奴に会った事があるんだ。だがその装置は一つ作るにも相当な金と時がいると言ってた。で、もしかしたらこの世界はうちより技術が進んでるのかと思ったが」
「そんな装置俺は見たこともないし、噂にもなってないぞ」
「そうだろうな。……なあ、いったい何なんだこの家は?」
「わからん」
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