第11話「な……?」

「決勝トーナメント開始前に町長からご挨拶です」

 司会の男がそう言うと町長が格闘場前の特別席に出てきた。

 町長は細身で白髪混じりの初老の男だった。


「え~皆様、本日は参加いただきありがとうございます。あ~決勝開始前にひとつお詫びがございます」

 会場がざわつき始める。


 その後の町長の説明では

 決勝はトーナメント戦ではなくバトルロイヤルで行うとの事で、連絡ミスでそれが事前に伝わっていなかったとの事だった。

 そして最後に頭を下げ、席を立った。



「なあ、バトルロイヤルなら」

「俺とバンジョウが一緒に他の全員を倒し、最後に一対一で、だな」

「ああ。向こうも集団で来られたら厄介だしな」

 ガイストとバンジョウが話していると


「フフフ。それなら全員纏めて一気に倒してもいいのですね」

 二人の隣にいた魔術師風の若い男がそう言った。


「へえ~。あんた相当腕に自信あるんだな」

 バンジョウはその男に話しかけた。

「ええ、本気出せば会場ごと消し飛ばせますよ」

 男は不敵な笑みを浮かべた。


「ははは、そうかいそうかい。本当にできるのか?」

「はい。ではやってみせますよ……はあっ!」


 男の手から放たれた魔法が格闘場にいた出場者を襲い

「な!?」

 ガイストとバンジョウ以外の出場者はそれを受けて倒れた。

「ね? どうですか。優者の守護者達よ」


「!」


 ガイストとバンジョウは素早く間合いをとって構えた。

「貴様何者だ、まさか?」

「ええ、私はあの御方の下僕、セリスくんを連れに来たものです。そしてついでにこの町を消しにね」


「そうはさせません!」

「え!?」


 格闘場の周りを見るといつの間にかたくさんの兵士や傭兵がいて、その中心に町長もいた。


「フフフフフ、どうやら私の事がわかっていたようですね。町長さん」

「その通りですよ」

「ええ!?」

 ガイストとバンジョウは町長の方を見た。


「お前がいずれここに来ることはある御方の助言でわかっていた。そしてこの世界を救う『優者』もその時にここにと」

「そうだったのか。だから武闘会を開いてこいつをおびき寄せようと?」

「ええ、後で他の出場者全員に事情を話し、うちの兵士達と一緒にそいつをと思いましたが」

「すまねえ、俺が余計なことを言ったせいで」

 バンジョウが謝罪した。

「いえ、こちらが早く手を打てばよかったのです。さあ兵士達、倒れた方達を。そして観客の皆さんは避難してください!」


 うわあ~!


 観客は一斉にその場から去っていった。


「フフフフフ。まあ、今は見逃してあげましょう」

「それはありがたいことだな」

 ガイストは剣を抜いて言った。


「これだけの数がいれば、お前なんぞ」

 バンジョウがそう言うと

「フフフフフ……」

 男が笑いながら手をかざし、呪文を放った。

 すると格闘場横の建物が大きな音を立てて吹き飛んだ。


「な!?」


「これだけいれば、何ですか?」


「ほ、本当に町ごと吹き飛ばせるのか?」

「ええ、でも今それをしたらセリスくんまで吹き飛びますからしませんよ。さて、あなた達を」


 キャアアーー!

「な、なんだ!?」

 ガイストが声のした方を見ると


「え?」

 セリスが頭から血を流して倒れていた。

 どうやらさっきの爆発で建物の破片が飛んで来て当たったようだ。


「……セリス?」


「あああっ!? し、しまったあ!」

 男もセリスを見て慌てふためいた。

 その時

「隙あり!」

 バキイッ!

「が?」

「とりゃああ!」

「ギャアアアーーー!」

 男はバンジョウの飛び蹴りを顔面に喰らい胸を手刀で貫かれて倒れた。


「……倒せたか。っておい、セリスは!?」

 ガイストが無言で指差した方を見ると

「大丈夫ですからね、わたしが今治しますからね」

 セイラがセリスに回復魔法かけていた。


「ふう、よかった」

 バンジョウは胸を撫で下ろした。

「……凄いなバンジョウは。俺はセリスが怪我しているのを見て放心していた」

「そりゃ俺だって心配だったが、この機を逃したらセリスだけじゃない、町の皆もって思ったらな」

「そうか。俺はまだまだだな」

「いや、俺がもし失敗して倒れてもお前がいればとも思ってたがな」

「・・・・・・そうか」

「そうだよ。さ、セリスのところへ行こう」

「ああ」

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