第5話「二人目の仲間」

 ガイストとセリスはタカマハラ目指して今日も歩いていた。


「……誰かが後をつけて来ているな」

 ガイストは付かず離れず後ろを歩いている者の気配を感じていた。


「かなりの手練れのようだな。敵意は感じないが何が目的だ?」

 ガイストが考え込んでいると

「ねえお兄ちゃん」

「なんだい?」

「次の町に着くのはいつ?」

「そうだなあ、夕方頃には着くかなあ。それまで頑張ろうね」

「うん」



「……あれが」


 そして夕方、予定通りガイストとセリスは町に着いた。

「そういやここって温泉の町でもあるんですね」

 宿屋の受付でガイストが主人に尋ねた。

「そうですよ。うちにも温泉引いてありますから、どうぞ入ってください」

「ありがとうございます。セリス。少し休憩してから温泉に行こ」

「うん、ボクも楽しみだよ」


 それからしばらくして二人は温泉に入った。

 そこは露天風呂になっていて眺めもいい。

「ふう、いい湯だ」

「ここって広いね~、泳いじゃお」

 セリスはバシャバシャと泳ぎだした。

「こらセリス、ダメだよ」

「え~? いいでしょ~」

 よほど楽しいのか素直にやめない。

「ほ~? よし、言う事聞かないならこうしてやる!」

 そう言ってガイストはセリスを捕まえ


 こちょこちょ~


 セリスの全身をくすぐりだした。

「ひゃっ? くすぐったいよ~!」

「ほれほれ~」

「キャハハハ、やめて~!」


 ドゴオ!

 ガイストは後ろから何者かに頭を殴られた。

「だ、誰だ!?」

 ガイストが振り返ると

「き、貴様、なんと羨まし、いやけしからん事を」

 そこにいたのは短髪で長身の体格のいい男だった。

「おのれ……はっ!」

 男は蹴りを放ってきた。素裸で。

「うおっ!?」

 ガイストは蹴りをかわした。

「優者を穢すとは許すまじ! 俺が成敗してくれるわ!」


「は? ま、待て、お前何者だ!?」

「問答無用!」

 男がさらに攻撃しようとした時

「お兄ちゃん達ケンカしないでよ」

 セリスが二人を止めた。

「あ、ああ」

「うむ、君が言うなら、ん?」

 男はセリスの全身をよく見た。

「君は男の娘なのか」


 お前もか。


「おい、あんたセリスが『優者』だとなぜ知ってる?」

 ガイストが男に尋ねた。

「それは……まあとりあえず温泉から上がって服を着てからにしよう。セリス君が風邪をひいたら大変だ」

「あ、ああ」




 そして部屋に戻り

「さっきはすまなかった。君を変態ロリコン野郎と思ってしまった」

 男はガイストに謝った。

「それと自己紹介がまだだったな。俺はバンジョウという旅の武闘家だ」

「俺はガイスト。でこっちはセリス。それで、俺達をつけていたのはあんただろ?」


「そうだ。すまないが様子を伺わせてもらった」


「何故セリスが優者と知ってるんだ?」

「それは……これから話すことは信じられんとは思うが事実だ。俺はこことは違う別の世界から来たんだよ」

「別の世界?」

「そうだ。俺は元の世界では武者修行の旅をしていたが、ある時急に発生した時空の渦に巻き込まれて」


 ――――――


 気づいたらどこともわからない場所にいた。


(ここは何処だ?)


 と辺りを見渡していた時、どこからともなく声が聞こえてきたんだ。


 声の主は「『優者』を守って世界を救って欲しい」と言った。

 

 俺は何故かわからないが声の主の言うとおりにしようと思い、了承したんだよ。


 その後気が遠くなったかと思うとこの世界にいたんだ。

 そしてセリス君を探していたらな、案外あっさりと君達を見つけたんだ。


 ――――――


「そうだったのか。しかしよくセリスがそうだとわかったな」

「見たらわかるとも言われていたのでな。まあ最初は女の子だと思ったが」

「俺も最初は間違えた。なんせその時はフリフリのドレスを着ていたからな」

「何? フム、セリス君、ちょっとそのドレス着てみてくれ。そして抱っこしてほっぺたスリスリ」


 ガイストは無言で剣を抜こうとした。


「冗談だ! 剣を収めろ!」

 バンジョウは慌ててそう言った。


「冗談に聞こえんかったぞ」

「……まあ、とにかくこれから先は俺も同行させて欲しい。いいだろ?」

「セリス、いいかい?」

 ガイストはセリスに尋ねた。


「うん、バンジョウお兄ちゃんも一緒に行こ」

「なら俺も構わない。バンジョウ、優者セリスを守る者同士、仲良くしよう」

「ああ。よろしくな」


 こうしてバンジョウが仲間になった。


「セリス君が女の子ならもっとよかったがなあ。まあいいか、将来小さい女の子の弟子を取ってその娘にお風呂で背中流してもらったり一緒に寝たり」

「おいバンジョウ、お前こそロリコンだろが」


 まあ数十年後に本当にそうなるが、それは別の物語で。

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