第6話「何かがやばい」

 バンジョウが仲間に加わった一行は今日もタカマハラ目指して旅をしていた。

 一行が進む街道は向かって左側に山々があり右側に湖と眺めのよい景色が広がっていた。


「ほらセリス、いい眺めだろ~」

「うん、いい眺めだよ」

 バンジョウはセリスを肩車しながら歩いていた。

 セリスはすっかりバンジョウに懐いており、バンジョウももうセリスを呼び捨てにしていた。

「おいバンジョウ。セリスを落とすなよ」

 ガイストは心配そうに言った。

「俺はそんなヘマはせん」

「そうか、すまん」

「いいさ。しかしセリスの太ももは柔らかいなあ、もう男の娘でもいいかも」

 ガイストは無言で剣を抜こうとした。

「だから冗談が通じないのかお前は!」

「だから冗談に聞こえんわこの変態が!」

「なんだとおい!?」

「なんだ!?」

 ガイストとバンジョウは睨み合った。

「ねえ、お兄ちゃん達喧嘩してるの?」

 セリスは二人を見下ろしながら言った。

 

 はっ!?

「いやだなあ、そんな事ないよな、バンジョウ」

「そうそう、単なるじゃれ合いだよな、ガイスト」

「ふ~ん?」


 そうこう言いながら一行が着いたのは何もない田舎の村だった。

 とりあえず宿屋がないか近くにいた村人に尋ねると、村の中央にある教会がそれを兼ねている、と教えられた。


 そして一行はその教会の前まで来た。

 

 教会はあまり手入れされていないのかあちこちボロボロだった。

「えらく荒れているな」

「気づいてたか? 村人の家もここと同じ感じだったぞ」

 バンジョウの言うとおり途中にあった民家もボロボロだった。


「ああそうだな、この村は魔物にでも襲われたのか?」

「にしちゃ皆普通に暮らしてるようだったが?」

「よくわからんな、とにかく入るか」


 ギイイ、と


「すみませ~ん、誰かいますかー?」

 しかし返事はなかった。

「留守なのか?」

 ガイストがそう言うと

「はい、どちら様で?」

「うおっ!?」

 一行の後ろに老神父が立っていた。

「ああ、すみません驚かせて」


「あ、いえ。あの、こちらの神父様ですか?」

「はい、そうですが」


「すみません。俺達は旅の途中でこの村に寄ったんですが」

「ああ、今日の宿ですね。どうぞご遠慮なくお泊りください」

「ありがとうございます。あのこれ」

 ガイストは財布から金貨を取り出そうとしたが


「いやいや、結構ですよ」

 老神父は代金は不要と言わんばかりに手を振った。


「しかし、失礼ながら教会の修理もお金が」


「ああ、それなら目処はついていますからご心配なく」

「そうなんですか?」

「ええ。さ、どうぞ中へ」

 老神父は一行を寝室へと案内した。




「ここは綺麗にしてるんだな。ベッドもいいし」

「そうだな」

 二人が言うとおり寝室だけは綺麗に掃除されていてベッドもいいものが置かれていた。

「わーいわーい!」

 セリスはベッドの上で飛び跳ねていた。


「こらセリス。ダメだろ飛び跳ねちゃ」

 ガイストがセリスを窘めた。


「えー? 面白いのにー」

「ガイストの言うとおりだよ。代わりに俺がもっといい事してあげるから、飛び跳ねるのはやめなさい」


「バンジョウお兄ちゃん、いい事って何?」

「それはな、こういう事だ!」

 こちょこちょ~

 バンジョウはセリスをくすぐり始めた。


「ひゃ? キャハハハハやめて~」

「まだまだ、ほれほれ」

「キャハハ」

「よし、このまま服を」


 ドゴオ!

 ガイストは剣の鞘でバンジョウをどついた。

「何するんだコラ!」

「黙れ変態表へ出ろ! セリスに血を見せたくはないからな!」

「ちょっとふざけたくらいで斬られてたまるか!」

「どう見ても本気だったぞ! あれ、セリス?」

「あ、やり過ぎたか」

 セリスは服が乱れ妙に色っぽい感じでのびていた。


「う……やばい、何かがやばい」

 ガイストは顔を赤くして目を逸らした。


「ガイスト、お前も変態だろ」

「貴様、やはり表へ出ろ」

「おお、やったろうじゃねえか」



「ふう、賑やかですな」

 老神父は隣の部屋でガイスト達の声を聞きながら茶を飲んでいた。

「しかしあの子ですか……どうしましょうかね」

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