火山の噴火クラスの爆発は、起こらないとは言えないね

Side A

「分かったわ!」

 突然目の前の人間が立ち上がった。そして、俺の方を向き顔を近づけて言う。

「作ればいいのよ! 何で気付かなかったのかしら」

 俺は気圧されながらも、ゆっくりと立ち上がりハルヒの肩に手を置いて言った。

「落ち着け。今は、授業中だ」

 クラスメイトと大学出立ての女教師が俺たちを見て、どうしていいか分からないまま沈黙している。全員に配慮するつもりで、やんわりとハルヒを落ち着かせた。みんなどうにか平静を取り戻したようだ。俺も一息つくと、右後方から強烈な熱を感じた。『感じた気がした』なんだろうが、そっちを見ると、佐々木が両目に炎を宿して俺達を睨んでいた。……俺のせいなのか?


 休み時間、涼宮ハルヒは俺と佐々木を人目に付かない所に連れ出し、こう切り出した。

「関係をはっきりさせておきたいの」

 何の話だ?

「ゲホン! まず、佐々木さん」

「は、はい……」

 佐々木はビクッと反応した。実は俺もだ。

「あなたを私の『強敵』にします」

「はあ……?」

「というわけで、私の事を『ハルヒ』と呼びなさい。呼び捨てで良いわ。だから私もあなたを『マコト』と呼ぶわ。いいわね」

「う、うん。いいよ」

 何だか良く分からないままそういうことになったようだ。こいつの中で何が起こってるんだ? だが、なんだか俺は、どこかがすっきりした感じがした。

「よし…… それでは……」

 ハルヒは俺を見て、俺のネクタイを掴んで言った。

「私は自分の部活を作るわ。そして、キョン。あんたは私に協力しなさい」

 そして俺は、涼宮ハルヒのクラブ作りを手伝う羽目になった。


 ハルヒが言うには、とにかく作ることから始める、何をするかはそれから考える、だそうで、自分は部室と部員を探すから、俺に必要な書類なんかを提出するようにと言って走り去った。俺は呆然となっていたが、しばらくして正気を取り戻すと、隣の佐々木も同じ状態だと気付き、肩に手を置いて話しかけた。

「なあ、お前、あいつが何を言っているのか分かったか?」

 佐々木は俺を見ない。俺が手を置いた肩が少し震えているようだ。どうしたんだ? そりゃ、竜巻が通り過ぎていったようだけどさ。そんなに怯えることは……

「やられた……」

「え?」

「また、先を越された……」

 そのまま佐々木は俺の手を振り払い、どこかへ歩いていった。



Side B

 それからは授業がまったく耳に入らなかった。私は頭が真空パックされて冷凍庫に放り込まれたように、何も考えられなかった。


「ねえ、佐々木さん大丈夫? 保健室に行った方が良いんじゃない?」

 優しい声で朝倉さんが私を気遣ってくれる。でも、それも左から右へ抜けていく。


 気付けば終業のベルが鳴っていた。もう帰る時間か、と思い帰り支度を始めると視界の端に何かを捉えた。


「おい! 何する! どこへ行くんだ!?」

「部室っ」


 そんな声がしたかと思うと、キョンがハルヒに引っ張られて行く。思わず後を付ける。足が勝手に動くようだった。

 渡り廊下を通り、一階まで降り、いったん外に出て別校舎に入り、また階段を登り、薄暗い廊下の半ばでハルヒとキョンは立ち止まった。ここまでついてきた私も成り行きで立ち止まる。


「ここ」

 そう言って、ハルヒとキョンは部屋に入って行った。私は部室のプレートを見る。『文芸部』と書いてある。ドアの前で立ちすくむ。どうすればいい。すごい気になる。一体何が起きてるの? ちょっと聞き耳を、いや少し覗くくらいなら…… そう思ってドアに近づく。すると勢いよく開かれ、私の腕が掴まれた。

「あんたも入りなさい!」

 そのまま腕を引かれて、私も文芸部室に入ってしまった。

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