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よかった、よかった~~
なんて。
なんだか嬉しくて、にへにへ笑っていると、さっきまでしんみりしてた宗樹が、目を見開いた。
「もしかして……お嬢さん。
俺の心ってちゃんと、伝わって無いとか……言わねぇ?」
「うん?
ちゃんと伝わったよ。
わたしのこと、好き、なんでしょう?」
「……ああ」
「わたしも宗樹のコト、大好き~~」
ずっと抱き締められてた身体を少しだけ、ずらし。
わたしの方から飛びこむように、宗樹をがばって抱き締めてみたら、宗樹が吠えた。
「ぜって~~判ってねぇ!
いいか、俺はあんたのコトを愛してるって……」
宗樹が何か言いかけた時だった。
電車が丁度、君去津駅についたので、今日はわたしが宗樹の手を引っぱってみる。
「駅に着いたよ、ガッコ行こ」
「………しくしくしくしく。
俺、頑張ってガキの頃のコトまで話したのに……お嬢さんなんて、大嫌いだ」
「……嫌いなの?」
心配になって首をかしげると、宗樹が吠えた。
「そんなのウソだぜ!
ずうっと遠くから見てるしか無かったヤツに、ようやく近づけるのに!
今更嫌いになんてなるか、くそったれ!!」
………………………………
…………………
……なんか。
本人いわく『一日分の気力と体力を使い果たした気分』なんだって!
今、わたしは宗樹と朝の君去津駅にいた。
宗樹の事情をちゃんと聞き、西園寺はともかく、わたしと一緒にいるコトが嫌いじゃないって判ってほっとして。
じゃあ、今日は学校まで一緒に行こうよって誘ったのに。
『一日分の~~』って、言われちゃったんだ。
まだ、一般の登校時間より早くて、誰も……部活勧誘の先輩たちも、まだ来てないだろうし。
二人で登校しても騒ぎにならないけれど、そのかわり、たぶん一人でも無事に教室へたどり着けるんじゃねぇ? なんて。
宗樹は一人でうんうんと、うなづいたかと思うと。
「じゃ、お先にどうぞ、行ってらっしゃいませ~~」
なんて、とぼけた表情(かお)で手を振った。
要は、わたし邪魔!?
さっきは『好き』って言ってくれたのに~~
ぷう、と膨れかけのほっぺたを抱えたまま、ふと見た宗樹の横顔が何か、真剣だった。
……神無崎さんと話でもするのかな?
きっと、邪魔しちゃいけないんだよね?
宗樹の様子に仕方ないなぁ、今日もまた、一人でガッコ行こって、桜並木の通学路を歩いてた、その時だった。
時々葉っぱの見えだした桜の花のその先に、今日も歌が聞こえて来たんだ。
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