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 神無崎さんは、何を言ってるんだろう?


 わたしにそんなこと言われても困る。


「もともと、宗樹は宗樹自身のもので、わたしのモノなんかじゃないですけど……?」


 ……って言うしかなかったのに!


 神無崎さんの瞳に危険な色が混ざる。


「とぼけんな。

 オレだって一応事情は知ってるんだぞ?

 西園寺と、宗樹ん家の関係ぐらい……!

 このままぼーっとしてたら、宗樹の未来は西園寺の執事、決定なんだろ?

 宗樹をお前の下で一生、ピアノ弾かせたり、茶ぁ出さして終わらせるつもりなら、オレが使った方がよっぽどいいぜ。

 ……オレは宗樹の本当の価値と、使い方を知ってる」


「……神無崎さん」


「宗樹とは、物心ついた時から一緒にいた。

 中学までは、二人で私立の坊ちゃん学校に入ってたんだけど、ソコでウチの正妻サマの嫌がらせにあってな。

 外部に……ここに受験しなくちゃいかなくなった時もアイツはついて来てくれたんだ。

 宗樹と今まで二人でいろんなことをやらかしたが、すげー具合が良い。

 だから、これから先も、アイツとなら、何もかも、出来るような気がするんだ。

 今一番やってみてぇ、音楽の世界で天下取ることも。

 神無崎家乗っ取るのも……それ以上のコトも」


「……」


「……本当に宗樹が自由なら、オレサマの出る幕はねぇけど、実際は違うんじやねぇか?

 宗樹も、色々才能あんのに、飼い殺し。

 嫌ってる西園寺に無理やり永久就職、って言うのは幼なじみとしても見てられねぇんだが……」


「……嫌ってますか、西園寺」


「まあな。つい最近まで、藤原家逃亡計画を練ってたぐらいには」


 やっぱり。


 胸の傷がぐぃーーって広がるように痛んだ。


 それでも宗樹を物みたいに簡単に『あげる』なんてことは、無理で。


 古くから続くシキタリがのしかかるから、宗樹自身も西園寺を抜け出せない。


 そんなわたしをじっと見て、神無崎さんは言った。


「……それで、お前に一つ提案があるんだ」


「なっ……何でしょう?」


「お前、オレとつきあわねぇ? ……真剣に」


「えっ!」


 本当に、いきなり何を言ってるんだろう!?


 いや、昨日出会った時から『付き合え』とは言われてるような気がするけれど、今回もまた突然だ。


 からかってるのかな? と隣を上目遣いで眺めれば、真面目な顔をしている神無崎さんの視線とあった。


「本人がどーあがこうと西園寺の下に、藤原がつくのは、古っりぃシキタリなんだろう?

 もし、お前の後に宗樹がついて来るなら、オレがお前たち二人まとめて嫁に貰ってやるぜ?」


「へっ!?」


 驚くわたしに、神無崎さんは笑う。

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