第3話 希望と仲間と・・・。

「パンドラさん。あとどのぐらい歩けばこの森を抜けることが出来るかな?」


「そうですね、あと1時間も歩けば、この森を抜けて原初の丘に出られるはずです。」


「原初の丘?」


「はい、一般的にはヌンの丘とも言われていますが、この辺りの土地では地上界の源、つまり起源であるという言い伝えが残っています。そのため、この丘を中心にアトゥム信仰が根強く残っており、その影響でいくつかの街や集落が点在しております。丘から四方に街道がありますが、丘の中心を西に進めば首都アテナイへ辿り着きます。アテナイが今日こんにちまで反映しているのはこのような信仰と伝承が残っているためのようです。」


「ありがとう、パンドラさん。それにしても随分、この辺りの土地や伝承に詳しいね。本当に助かるよ♪」


「いえ、わたしもこの辺りの街には良くきていましたので、他の土地より比較的詳しいというだけのことです。」


「なるほど。あ、分かった!さっき言っていたキバラハの街が近いとか、そんな理由だったりして!なーんて!冗談だよ、冗談♪」


そう言ってパンドラを見た瞬間、事情を察したアキレウスであった。


「た、確かにキバラハとイブケクロの街がこの近隣にあるのは間違えありませんが、そ、それがわたしがこの周辺に詳しい理由にはなりませんわよ・・・。」


「そ、そうだね。僕の勘違いだったよ!パンドラさん、誤解してゴメンね・・・。」


そう言いながらもアキレウスはまた新しい街の名前が登場したことを胸の内に留めた。


「本当ですよ!わたしが年がら年中薄い本と美少年のことを考えている訳ないじゃないですか、まったく。プンプン!」


いやいや、考えていますよね。ていうか、口に出てるし・・・。


というようなやりとりが数回続き、彼女の趣向について考えていると、いつの間にか森を抜けきり、目の前には緩やかな傾斜のある大きな丘が見えてきた。どうやら丘の中心部から東西南北へそれぞれ道が続いているようである。


「あの丘の中心部へ参りましょう。丘の一番小高い場所には看板が出ていますので、それに従って進めば間違えないはずですから。」


「あれ?パンドラさん。アテナイには何度か訪れたのでは?なぜに看板頼り?」


「で・す・か・ら、わたしはこの周辺の取り分け興味のある街には何度か通っていましたが、アテナイに行ったのはお気に入りの絵師さんのサイン会が開かれた1回だけなのです。分かりましたか?このクズ野郎!」


「は、はい。ワカリマシタ・・・。」


これ以上余計なことを言うとさらにヒドい名称でなじられそうなので、全てを納得した。いやフリをした。その心境を察したか、パンドラはさらに鋭い目でもう一度威圧してくる。ああ、こんな趣味?性癖?が無ければパンドラさんは普通の可愛い女の子なのに。非常に残念な世の中である、そんなことを考えながら更に歩を進め、目的地である首都アテナイを目指した。


原初の丘の中心から更に2時間西に歩き続けると、ようやく首都アテナイの姿を視界に捉えることが出来た。遠目からでも分かる程の城塞である。さすが首都と呼ばれるだけ有って、街が重厚な石の砦で覆われている。塀は高く、四方の塔には見張りらしき人影が確認出来た。程なくして、ようやく街の入り口に辿り着く。どうやら昼間の時間の亜人種や魔物の行動は活発ではないらしく、住人や旅人が自由に往来出来るように扉は開かれ大きな門がアキレウス達を出迎えてくれた。


「ここがアテナイの街!」


「そうです。ここが首都アテナイ。アッテカ地方最大の都市です。」


「すごい人の数だね。さっきの道すがらでも馬車に乗る商人や、冒険者を見かけたが、皆ここを目指していたんだね。」


パンドラに向かいそう言うと、先程原初の丘で見かけた馬車が門を通過するのを目で追った。


「そうですね。ここはアッテカ地方の要衝ようしょう。最も安全に暮らせる街として知られており、ここを治める女王もその知性と美貌で善政を敷かれていると聞いています。」


「び、美貌?」


「はい。わたしもご尊顔を拝したことはありませんが、大層美しい女王様のようです、ていうか、何なんですか、アキレウスさん。隣に絶世の美女が同行しているというのに・・・。まったく、もう、一回豆腐の角に頭打つけて死んだら良いのに・・・。プンプン!」


「いや、ただ何気なしに聞いただけじゃないか!そのぐらいは許してほしいものだ・・・。」


と口に出そうとしたが、更に罵声を浴びせられる覚悟も無かったので、声に出さずに口を動かすというささやかな抵抗を見せた。


「アキレウスさん、そろそろお腹減りませんか?」


「そうだね。流石に歩き続けたから少し休みたいかな・・・。」


「畏まりました。では、今回の目的を同時に満たせる場所に向かいましょう。」


そう言うパンドラの後を追いながら歩みを進めると、目の前には大きな酒場が現れた。


「ここですわ!ここがアテナイ一番の酒場です。なぜ一番かと言えば、わたしが最も尊敬する絵師さんが、この街に住んでおり、この酒場の常連なのです♪えっへん♪」


「な、なるほど。と、ところで、ここまできて何だけど、ここはお酒を飲む所では?」


ちなみに看板には酒場をさす言葉ーバッカスーと書かれている。バッカスとは酒の神のようだ。あ、あれ?酒の神ってディオニュソスじゃなかったっけ?それに・・・。なんでこんな知識を持っているんだろう。どうにもこれが思いつきとは思えない。アキレウスはこの記憶の断片が自分の知識であることをおぼろげながら感じていた。


「確かにお酒もオーダー出来ますが、一般的には食堂のようなものです。そして、何を隠そう人材や仕事を紹介してくれるギルドもこの中にあるのです!それにそれに、酒場と言えばギルド、ギルドと言えば酒場と言われるぐらいRPG界の常識ですよ!エッヘン♪」


「メタ発言は置いておいて・・・。あ、だからさっき、今回の目的を同時に満たせると言ったんだね!」


「その通りです、アキレウス様。大概街のギルドは酒場と併設されていて、ただの食堂ではなく情報交換の場としての役目も担っています。ではまずはお腹を満たしてから、仲間を捜すとしましょう!キリッ。」


アキレウスとパンドラは空いている席に腰をかけ、ようやく一息つくことが出来た。テーブルにはすぐさま、可愛らしいお下げの女の子がオーダーを取りにきた。どのような物を頼んで良いか分からず、シェフのお勧めならぬ、マスターのお勧めという得体の知れない食べ物を注文した。彼女が言うにはこの店一番の人気商品らしい・・・。


そして、空腹と喉の渇きを潤した二人は会計を済ませ、正確にはアキレウスはこの土地で使えるお貨幣を持ち合わせていなかったため、パンドラが奢る形となったのだが、その満ちたお腹をさすりながら、上の階にあるギルドを目指した。


ちなみに先程食べたメニュー、マスターのお勧めとは、結局のところ、コースのような、定食のような、そんな物であった。穀物の乾燥したもの、この土地の一般的な食べ物らしい。シリアルと呼ばれていたが、それをスープで茹でた郷土料理。シリアル自体は通常、穀物の味しないのだが、それが程よくトマトスープに浸っており、香辛料が調和をとっていた。また様々なハーブの中に胡桃やピスタチオなどがまぶされたサラダ、そしてメインに魚のワイン蒸しが並んだ。ワインの芳醇な香りが魚の生臭さを消して、とても洗練された味にまで昇華している。さすが、このパブきっての人気メニューである。パンドラは追加で鶏肉とフワフワ卵のチーズ乗せを頼んでいたことが、お腹を摩っている理由であることはここでは黙っておこう・・・。


酒場の中央にある階段を上に上がると、そこには冒険者らしい格好の男女がカウンターやら、掲示板やらに集っていた。


「アキレウス様、まずはわたしがギルド登録を済ませてくるので、ここで待っていてくださらないかしら。っとその前に私たちのパーティの名前如何しましょうか?」


「な、名前なんて必要なの?」


「はい、もちろんです。ラノベの定番ですよ!そんなの常識と言っても過言ではありませんわ!バトル系だと大概、◯◯騎士団とか、◯◯旅団とか、◯◯軍、◯◯帝国とか、◯◯ギルドなんてのも一般的ですわね。あとは好きなアイドルグループの名前とか、好きなバンドの名前とか、何でも御座れですわ♪」


「何か聞き覚えの無い言語が混じっている気がするんですけど・・・。まあそれはさておき、名前が必要ってことですよね?ち、ちなみにパンドラさんは何か良い案はありますか?」


「ええ、まあ・・・。あることはあるんですが、放送事故にひっかかる恐れもあるので、アキレウス様が常にピーと言ってくれるのであれば、心置きなくお伝え出来ますわ♪」


「だ、大体分かりましたから、言わなくて結構です、パンドラさん・・・。」


この人はどこで道を踏み外したのだろうと、アキレウスが改めて感じた瞬間であった。


「では・・・、神々の黄昏ラグナロク・・・。というのはどうでしょうか?」


「え、アキレスちゃん、それ本気?マジポヨ?ってかそれ、完全に中二病だし、恥ずかしいし・・・。それならまだ、ピーとピーとピーの方が百倍マシだわ!」


「いやいや、ピーピーピーって全部放送禁止用語じゃないですか!少しは自嘲して下さい!まったく・・・。それに、先程のラグナロクという言葉、単なる思いつきでは無いんですよ。何か記憶の片隅で、僕の心の中に、と、とにかく引っかかる言葉なんです!」


「ワカリマシタ。アキレスチャンガドウシテモトイウナラ、ー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むーでイキマショウ。」


「え、何でカタコトみたいな口調?中二病という病については、どういったものか僕は分からないが、と、とにかく、記憶を呼び戻すヒントになるかもしれない言葉なんです。僕のためを思うならこの名前でオナシャスorz」


「では、大変不本意ではありますが、この中二病臭い名前、えっと、ー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むーで登録して参りますので、しばらくここでお待ち下さい、はあっ・・・、まったく。」


深いため息と共にそう言い残し、パンドラはギルド受付に向かった・・・。


しばらくすると受付の綺麗なお姉さんから連絡が入った。


ピン・ポーン・パーン・ポーン♪


「プププッw、ギ、ギルド受付でお待ちのー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むー様、登録手続きが完了しましたので、至急受付までお越し下さい。


ピン・ポーン・パーン・ポーン♪


そして、そのお知らせが終わった後、周囲の空気がザワザワし始めた。どうやら今の館内放送を聞いて、反応したようだ。どのようにザワついたかと言えば、


「おい、何だ今のギルド名はw」


「ちゅ、中二病が久しぶりに登場したみたいっプププ。」


「くくくっ、我が同胞とこの古の都で邂逅かいこうするとは、何と言う運命♪」


「い、嫌だ、恥ずかしくて死んじゃいそうっ♪ケラケラケラケラ♪」


など、一部を除き誹謗中傷が殆どである。この状況で受付に向かえば、好奇の目で見られること必至。しばらくこの場に留まることが懸命。僕の脳内では瞬時にそのような判断が下ったのは言うまでもない。


「って、袖引っ張るなっ!パンドラさんっ!」


「アキレウス様、私たち受付に呼ばれましたわ、どうやら手続きが完了したようですっ♪」


「う、うん。そうだね。と、ところで、パンドラさん。ど、どうしてラグナロクで登録しなかったのかな?かな?」


「何を言っているんですか?ご主人様、わたしはご主人様に言われた通りー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むーと登録シテマイリマシタワ・・・。」


「ちょ、パンドラさん。今までご主人様なんて呼んだこと無いよね?よね?それにその冷ややかな視線止めてっ!で、出来れば声のボリュームももう少し抑えてくれると・・・。」


「さっ、四の五の言わずに行きますよ!ご・しゅ・じ・ん・さ・ま♪きゃはっ♪」


アキレウスはパンドラに袖を引っ張られながら、人垣の間をズルズル引きずられるかたちで、受付に向かう。


「あ、あれか?中二病のリーダーは?」


「さっき、あのリーダー、隣の彼女にご主人様って呼ばせてたわよ♪脳内でどういう設定にしているのかしら。き、鬼畜だわっ!ドキドキ♪」


「あの一緒に歩いている子は差し詰め無理矢理ギルドメンバーに入れられたんだろうな!可哀想に・・・。」


というような勘違いも甚だしいことになっているが、周囲はパンドラを常人、ぼくを変人として捉えているようだ。世の中どうなっているんだ!ぱ、パンドラさんっ!っと彼女に助けを求めるように視線を合わせるが、彼女は意図的にその視線を外す!何これ、どっちかというとパンドラさんの方が変人なんですけど、誤解なんですけどっ!と心の中の叫びは空しく脳内に響くのであった・・・。」


そして、ようやく受付に辿り着くと、受付の可愛いお姉さんが口元を抑えながら、話し始めた。僕は彼女の目尻が笑っているのをもちろん見逃さなかった。


「で、では。ー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むー様、本日はご登録ありがとうございます!少々長い名前ですが、本当にこちらで登録してしまって宜しかったでしょうか?今ならまだ変更出来ますが!も、もし今後快適な冒険を継続されるのであれば、変更なさった方が宜しいかと!プププっw」


「そ、それじゃ、へんこうを・・・」


だが、しかし、その言葉を強く打ち消す様に隣から神々の黄昏と書いて鉄槌が下された・・・。


「それで問題ありません。ー神々の黄昏と書いてラグナロクと読むーでお願い致します。ご主人様もそう望まれております。」


ぼくが自信無さげに変更を申し出ようとしたその時、パンドラは目に涙を浮かべながら、あたかも僕にギルド名を強要されたかのごとく、言い放ったのだ。


「畏まりました。心中お察しします。では、このギルド名で登録されますと、今後一切変更出来ませんので、ご了承下さい・・・。」


ど、どうしてこうなった!パンドラさん、そろそろ教えてっ!どうして僕をはめたのか?と再び心の叫びがアキレウスの中にこだまする。


「何ですか?ご主人様。その不満そうな目は?無事ギルド登録も叶いましたし、これで仲間も見つけることが出来るでしょう!何の不満が??」


「い、いや、パンドラさん、何か周囲の目が冷たいっていうか、嫌な汗が出てくる状況なんだけど、なぜこのような名前を??それにご主人様って??」


「なるほど。そのような瑣末さまつなことで、我がご主人様を悩ませていたなんて、このパンドラ、一生の不覚。この罰は命をもって償いましょうっ!」


「パンドラさん、き、聞かないから!これ以上、聞かないからっ!だからもうこれ以上変な言動しないでっ!周りの人がザワつくからやめて〜!」


ちなみになぜ急にパンドラがご主人様と言い始めたかと言えば、どうやら同人誌の件で僕がいじめたことを根に持っていたようで、それならばいっそ、僕にも属性を持たせてしまえば、今後自分の属性をカモフラージュ出来ると思ったらしい。彼女曰く、中二病で美少年ご主人様属性らしい、何のこっちゃ。彼女が同人誌オタクでショタであっても文句を言うつもりは無いが、頼むから僕を巻き込まないでくれ。とそう思うのであった。ちなみにこのことは後々知る話である。


ツンツン、ツンツン。


「パンドラさん、分かったから裾引っ張らないでよ!もう神々の黄昏と書いてラグナロクでも中二病でも良いから、もう許してっ♪」


「ご主人様は何を言っておられるのですか?わたしは裾など引っ張っておりませんが?ご主人様の目は節穴ですか?」


パンドラさん、何かさっきから態度が、態度がヒドく無いですか?た、確かにパンドラは袖は持っているが、裾は持っていない・・・。アキレウスはそのツンツンと引っ張られる裾の方へ視線を合わせる。


ニコッ♪


そして、アキレウスは再度パンドラに向きこう言った。


「この、パンドラさんの知り合い?」


「いえ、わたしは故郷から一人でこちらにきましたので、ご主人様以外の知り合いはおりません。強いて言えば、大好きな絵師さんが住んでおり・・・。」


パンドラさんの話が絵師さんが云々うんぬんかんぬんと長そうなので、再度少女の方へ向き直り、少し屈み、彼女の目線に視線を合わせた。


「お嬢さん、ここは君みたいな可愛らしい娘がくるところではないよ。お兄さんが外まで送ってあげるから、何も起こらないうちに早めに立ち去りなさい。」


「うぬは何を言っておるのじゃ?」


「う、うぬ?」


「そうじゃ。わらわが直々に話しかけているというのに、その態度は何じゃ?不敬にもほどがあるじゃろ!」


「不敬?」


「うむ。我が名はガードナー。ウィッカの宗主である。まあ、主程度の凡人が滅多にすれ違うことなどない、天才魔術師じゃ。二つ名はー普遍ふへんの魔女ーゼロの魔女ーとも呼ばれておる。」


「は、はあ・・・。」


そう言いながらその自称魔女と名乗るガードナーという少女は、アキレウスの姿を上から下まで隈無く、一頻ひとしきり眺めた後、こう言った。


「我が星読みの占いによれば、この地に神の化身が現れると出ていたのだが、妾の勘違いかのう・・・。主から神の波動を感じぬ・・・。が、主の持っているその剣とその弓、そしてその首に付けている首飾りからは、大きな力を感じる。其方、どこでその神具しんぐを見つけた?詳しく話してみよ!」


「し、神具ですか?」


「うむ、神の道具、即ち神具じゃ。この地上に残る数々の神具は、過去地上に降りた神の遺物として、伝説が残っており、各地で厳重に保管されておる。その神具を三つも所有しておる其方に興味を持つのは必然であろう?」


「な、なるほど・・・。」


この痛い少女は何を言ってるんだ?話す言葉が子供のものとはとても思えない。それに、彼女が凡そ現実的ではない話をしていることは火を見るより明かだ。つまり、結論としてはーか・か・わ・る・なー、である。アキレウスは空返事で彼女に答えながら、そのような考えに至っていた。


だが、その考えとは別に、この神具と呼ばれた剣と弓、そして首飾りについては幾分興味が沸いた。そしてアキレウスは森に倒れてからここまでの道のりを、この得体の知れない黒服黒三角帽子の少女に説明した・・・。


「なるほどなるほど。つまり其方は記憶を失っており、その神具は最初から身に付けていたということじゃな。手がかりは魔王討伐という言葉。なるほどなるほど・・・。うむ、決めたぞ!我は其方の同胞となりて、目的のため片翼となろうぞ!どうじゃ、凡人、嬉しかろうぞっ!カッカッカッ♪」


そして、少女のものとはとても思えない高笑いを止め、こう続けた。


「それに、我は其方の付けた、先程の、ギ、ギルド名に、え、偉く、感動し、た。感動したのじゃ♥その、何て言ったかの?神々の黄昏と書いてラグナロクと読むーであったかのう?中々のネーミングセンスじゃ。だから、だから主のギルドに入りたい・・・。入るのじゃ〜!入るのじゃ〜!」


彼女は感極まったのか、そう言った後、急に涙目になり、床に寝転ぶと、駄々をこね始めた。周りからこの光景はどのように映る者であろうか?中二病ギルドのリーダーである銀髪の少年が召使いの美女を侍らし、あまつさえ、年端も行かない幼女を泣かせる構図になっているのだろうか?と一抹の不安を抱えながら、助けを求めるようにパンドラに目を向けた・・・。


「ご主人様も本当に節操がないのですね。このような年端もいかない幼子を性的な目で見たあげく、泣かせてしまうだなんて・・・。隣には美女の奴隷まで侍らせているのになんて、鬼畜な、鬼畜な所業でしょうか・・・。グスン。グスンっ・・・。」


「え、何この小芝居?パンドラさん、冗談は薄い本だけにして頂けませんか?そろそろ、本気で助けて下さい!」


「あ、後で、壁ドンしてくれますか♥」


「はっ?」


「だから、言うことを聞いたら、後で私に壁ドンしてくれますか?と聞いているのです。何度も言わせないで下さい、このゴキブリ野郎っ!」


「わ、分かったから、助けてほしいっ!壁ドンでも床ドンでも何でもするからっ!」


「その言葉、確かに頂戴致しました。ではここは建設的に考えましょう。真偽の程はともかく、彼女はウィッカ、つまりウィッチクラフトの宗主であると言っています。この地上で冒険をするなら魔術師は重要な戦力にして、私たちが必要とする仲間。宗主と名乗るからにはかなりの戦力が期待出来ます。つまりは・・・。」


「つまりは、ま、まさかこの少女を仲間にするとか言わないよね?」


「いえ、言いますよ!この外道が。このような幼気いたいけな少女を床に這いつくばらせ、泣かせるという所業。私は小一時間あなたは鬼かと問いつめたくなるほどです・・・。でもわたし的には美少年×美少女もオッケーです。わたし、何だか興奮してきましたわ・・・。」


パンドラは口元に垂れそうになったよだれを白いハンカチで拭うと、そのガードナーと言う少女を抱き起こした。


「ということで、ご主人様、わたしは彼女を仲間にすべきと考えます。というか決定します。この幼女+魔女属性はお決まりのパターンではありますが、非常に魅力的です。それにご主人様の中二病設定にも相乗効果が期待出来ます。ゴクリ・・・。」


「うむ。其方、中々話が分かるのう!言っている意味が分からん語彙もあったが、少なくとも我を仲間にすることに賛成のようじゃな。さて、お前さん、この小娘もこう言っておることであるし、観念したらどうじゃ?其方が望むならまた床に寝転んで、お兄ちゃんに虐められたって、泣きまねをしても良いのだがのう。」


「ワ、ワカリマシタ。スキニシテクダサイ・・・。」


「ではこの素晴らしい名のギルド設立を祝して、下の酒場で祝杯をあげようぞ!ここは妾の奢りぞっ!好きなだけ飲むと良いのじゃ♪カッカッカッ♪」


こうして、念願の仲間、漆黒の瞳と黒髪ツインテールを持つ、新たな幼女?少女?のゼロの魔女ガードナーちゃんが仲間になった・・・。ドウシテコウナッタ・・・。

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