2161長征
浅師 久楽
1. PROLOGUE
時は2157年。人類は名実ともに太陽系の主となった。すでに、人類の足跡は土星の衛星タイタンにまで達している。そして確固たる人類の牙城はガリレオ衛星のガニメデとエウロパにまで築かれた。
しかし、人類の異星文化との出会いはまだ、ない。
PROLOGUE
マットは月面基地に送る小惑星にイオンドライブを取り付ける作業を見守っていた。
今まで、ロボットの作業でミスを見たことが無い。まさに見守るだけである。いや、見飽きた光景に目を使う必要はない。警報を聞くための耳だけで良い。目は別のものに使っていた。画像を何気に眺めていた。火星の衛星フォボスにある天文台から送られてきた画像である。
何枚もの同じような画像が続いている、マットが次に向かう小惑星である。
その名は 46737 Anpanman 。発見された1997年頃のアニメの名前である。
公転周期は地球時間で5年半ほどである。マットの今いる軌道からだと半月ほどで捕獲出来る。
数百枚ある内の数十枚を続けざまに見た時だった。1日1枚の画像だから、数十日分を見たことになる。
すべて小惑星との相対速度0設定での画像である。細かく見れば移動しているのが
わかるのだが、画像の端に小さな星を見た。動きに違和感を感じたので、マットは船を司っているコンピュータ、ジルに画像を動画にするよう指示した。
46737 Anpanmanに対する背景の恒星と異なる動きをしている。
マットはジルに言った。動いているのに変な質問だが「この恒星は何?」
ジルは答えた「恒星ではありません」
ジルは続けた「1999XS35地球横断小惑星、最も多くの惑星軌道を横断する天体です」
「軌道は?」ジルは答えた「過去の軌道と現在の軌道が違っています。」
「どういうことだ?」
「今表示しているのが過去の軌道ですが、現在の軌道は遷移しています。」
「遷移?船の様にか?」ジルは答えた「はい、現在の軌道です。」
マットは驚いた。1999 XS35はあり得ない軌道に遷移していた。
いや、それはもはや軌道と言えるものではなかった。
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