第10話 Merry Xmas,Mr.Lawrence
クリスマスは日本でも賑やかにおこなわれていると私は昨日の繁華街を歩いていて思った。
サンタ姿の美女やトナカイのコスプレをした男たちが街を練り歩いているのを見かけて、ああ、これは私の故郷USAのクリスマスとは違うな、と痛感した。
私の名はジョニー。ジョニー・ヤングマン。
今年の紅白の出場歌手の面子が気になるサラリーマンさ。
近隣に住む熟女、のぶ子がクリスマスパーティをしましょうというので私は暇つぶしに行くことにした。のぶ子の友人ひで子もくるらしい。
熟女2人をはべらせてのクリスマスパーティというのもオツなものだ。
職場の相棒キャサリンを誘ったらふたつ返事でいかせてちょうだい、と参加表明をもらった。
のぶ子の家に行くとすでにひで子とキャサリンも来ていた。ひで子はシャンパンを飲んでできあがっており、赤ら顔で私に言った。
「メリークリスマス、ミスターけつあごさん」
「HAHA、飲みすぎだぜヒディー」
キャサリンはチキンを丸呑みしていた。その様はけだもののようだった。
「キャサリン、チキンはよく噛んで味わってくうもんだぜ」
キャサリンは私の言葉を無視してチキンを骨ごとゴクンと飲み込んだ。
やれやれ、と私が肩をすくめるとパーティグッズの鼻メガネをかけて全身黒タイツののぶ子が私のそばに来た。
「ジョニーさん、クリスマスって楽しいわね」
「ん、まあ、ここにいる連中の楽しみ方はどうかと思うぜ」
黒タイツののぶ子がケーキをむさぼりながら室内の変態どもに言った。
「はーい、これからのぶ子のビンゴ大会はじめますわよ!」
のぶ子はビンゴカードを3人に配ると、ビンゴのあの、回すと玉が出るヤツをゴロゴロやりだした。
「1等賞の人にはのぶ子からの素敵なクリスマスプレゼントが当るわよ!」
やったー!とひで子とキャサリンが吼える。
ゴロゴロ……ぽろん。
「はい、最初の数字は13!」
誰もカードに13はなかったようだ。みんな落胆して早く次のやつをとのぶ子に催促した。
のぶ子はゴロゴロ玉を出して、ひで子とキャサリンは一喜一憂している。私のビンゴカードは3つほど穴を開けたがその後進展しなかった。
「リーチ!超リーチ!」
ひで子が歓喜してビンゴカードを天へ仰いだ。
「やるわねひで子。でもリーチからが長いのよ」
のぶ子が邪悪そうな笑みを浮かべた。黒タイツが暑いのか額に汗をかいている。
キャサリンはくわえていたマルボロを灰皿におしつけた。
「ちくしょう、当らないわね」
「果報は寝て待てってやつさ、焦る必要はないぜ」
私がたしなめると、キャサリンは私とカード交換しようと催促してきたがきっぱり断った。
そうこうしているうちに私もリーチがかかった。
「リーチだ。のぶ子、次は40番を頼むぜ」
「ジョニーさんったらせっかちね」
のぶ子はまんざらでもない様子でゴロゴロと次の玉を出した。
「あら40番!ジョニーさん一等賞!」
「やったぜ。」
ひで子はキーくやしいとハンカチを噛み、キャサリンはつばを床に吐いた。
「さて一等賞の商品はなにかな」
のぶ子はちょっと待って、と私に言って部屋の奥にいくと、すごい轟音をあげて戻ってきた。田畑を耕すトラクターに乗ってきた。
「一等賞はこれ。私の祖父が愛用してたトラクター」
これには私もまいったね。農家でもない私がトラクターをもらってもありがた迷惑、というか単純に迷惑だ。
しかし断ってのぶ子の好意を無駄にするわけにはいかない。
「サンキューのぶ子。大事に使わせてもらうぜ」
「このトラクターを私だと思って大事に乗って……」
私はトラクターに乗ると、近所から苦情がくるレベルの騒音をあげてアパートの岐路をたどった。途中地面をゴリンゴリンに耕してなかなかいい気分だった。
このトラクターで葛飾を全部畑に変えるのもいいかもな、なんて妄想をして私はアパートに戻り、テレビで「ドリフのクリスマス」を観賞して、日本酒をあおって眠ることにした。
日本の皆さん、メリークリスマス。
・・・・to be continued
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