転校生

それからしばらくして朝のHRが始まった。

いつも通りだと思っていたのだが・・・

「今日は突然だが転校生を紹介するぞ!」

そう。凛達のクラスに転校生がやって来たのだ。そこにはたいして問題は無かったのだが・・・

「うぉぉぉ!!」

「やったぁー!!!!」

なんて喜んでいる男子と女子はこの際置いておこう。

「さぁ入ってくれ」

先生にそう言われて入ってきたのは可愛い女の子だった。

「高嶋 雅です。昔この辺りに住んでいたのですが引っ越してしまって戻ってきました。後半年くらいになってしまいましたが仲良くしてください」

そう言って雅はみんなに頭を下げた。

それを見てみんなは楽しんでいた。

ただ1人を除いては・・・・・・

「席は・・・・・・鈴原お前の横な仲良くしろよ」

雅は凛の横になってしまった。

「宜しくね鈴原さん」

笑顔で話しかけてくる雅に凛は・・・

「よっよろしくね高嶋さん」

「気軽に雅って呼んで?私も凛って呼ぶから」

なんて言われて無理やり握手までさせられた。

そしてHRが終わると転校生恒例の質問攻めになっていた。

その隙をついて凛は教室から抜けだした。

その事に気づいた誠と果林も一緒に来ていた。

「凛ちゃん?どうしたの??」

果林がそう聞くのも無理はない。

今の凛の顔は真っ青でまるでこの世の終わりのような顔をしていたからだ。

「・・・え?何でもないよ?ほら授業始まるから2人は先に戻ってて」

あからさまに不自然な凛。

その事を見逃さなかった2人。

「なぁ凛。なんでも言うって昨日また約束したよな?頼るって言ったよな?」

誠にそう言われるのも無理はない。

自分からそう言い出したのだから・・・・・・

「実は・・・あの転校生が小学校の頃の親友なんだ。苗字は変わっていたけど喋り方とか顔とかあの時と変わってないところがあったから・・・」

凛の突然の告白に2人はびっくり!!

しかもその子は今凛と隣の席だったりする・・・

「あっ、でもね大丈夫だよ?私明日からってか今からもう学校行かないから。あの子とはもうだめだから・・・」

凛は泣いていた。

話したいでも怖いそういう感情が凛の中にあるのだろう。確かに怖いだろう1度喧嘩してそのままの相手だから。世間には”喧嘩するほど仲がいい”なんていう言葉があるのだが、それは小さい事で喧嘩をする人達のことだろう。

これは凄く大きい喧嘩だしそんな中で出来た大きな溝を埋めることなんてできやしないのだ。

「それは違うんじゃない?高嶋さんと仲が悪いのは仕方が無いよ?過去が過去だもん。でもさそれで学校来ないっていうのは可笑しくないかな?それじゃ仲直りできるものもできなくなっちゃうよ?それでもいいの」

果林の言葉が凛の胸に突き刺さる。

逃げていたのは自分だと自分自身に言い聞かせる凛。逃げないって決めたのにいざ本人を前にするとどうしても逃げたくなってしまうのだ。

それでも・・・・・・

「そうだよね。強くなんなきゃだもんね」

凛は立ち上がった。

そして1限目を受けるために教室に戻っていった。いったはいいんだけど・・・

「久しぶりね裏切り者」

なんて雅に言われた凛。

その一言により凛は顔が真っ青になって教室を飛び出した。誠達も後ろを追おうとしたけど雅によって止められた。

「ちょっとなんであんな裏切り者につく理由?貴方達もきっと騙されてるのよ?」

雅がそういった。

その一言に普段は女子に優しい誠にが

「そんなのさわかんないじゃん!あんたの勘違いかも知れないでしょ!」

そしてめったに怒らない果林までも・・・・・・

「あんたこそないがわかるって言うの?

確かに私は高校からの付き合いだから付き合いは浅いよ?でもね今は誰よりも凛ちゃんの事分かるもん!そんな勝手な事言わないで!」

果林は言った後凛を追いかけて教室を飛び出した。そこには誠だけが残ってるわけで・・・

「誠君ならわかるでしょ?幼馴染なのよね?庇いたいのも分かるけど現実でしょ?知ってるんでしょあんたも」

誠は黙って聞いていたが、それでも我慢の限界だったらしく・・・・・・

「あー!もううっせぇな!!お前に凛の何がわかるんだよ!何もわかってないのに偉そうに言うなよ!!凛はな1人でなんでも抱え込むんだよ!そんな奴がそんなことはしない。それに俺は真実を知ってる。誰が悪いのかも知ってんだよ!だから凛をこれ以上悪く言うな!」

そう言って果林を追いかけ凛を探しに行ったのだ。その後の教室で

「何なのよあいつら・・・」

なんて言ってるのは雅しか知らない・・・

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