1 緊張 (10/13追加)
その日、
数ヶ月前、立花は
立花の主はこの国の王に仕え、南方一帯を治める将軍だ。
元々この森の国レオモレアに将軍は三人しかいない。しかし事故で国王と将軍の一人が帰らぬ人となり、国内はパニックと言っていいほど混乱している。
そしてあまりの仕事量に立花の主は、領主を大量に採用し少しでも自分の仕事を減らそうとしやがった。新しい領主は何の準備もないのに街を一個任されるのだ。はっきりいって迷惑だ。
もちろん立花も困っている。今まで文官一筋の立花は領主の仕事の一つ、軍隊の統括が全く出来ない。しかも立花は軍人が苦手だ。
立花の容姿は二十歳になった今でも、四年ぶりに会った人に変わってないね〜と言われるほど幼いらしい。ただ身長が伸びなかっただけだと思うのだが、背が低く華奢な体格のため軍人にはなめられる。その上、人見知りの立花は体育会系のノリも苦手だ。
困った立花は誰かに丸投げすることにしたが、都合良く頼める相手もいない。
「立花様そろそろつきますよ〜」
「うっうん。トイレ行ってくる」
「またですか? 緊張しすぎでしょ〜〜」
護衛にバカにされるが、どうでもいい。
「代わりに行って……」
「冗談きついッスよ。俺なんか行っても話にならないですって。
あっ出来たら金の軍団長の写真撮ってきてください」
「できるとおもう……?」
「……頑張って」
護衛は全くの他人事で、口だけの励ましをくれる。
立花が領主になった街には
鬱金はレオモレアの北にあった小国の軍団長をしていた。目立った産業もなかったその国で鬱金は金の軍団長と呼ばれ、王様よりも有名だった。
圧倒的に不利な戦況でも籠城せず、あえて堂々と戦い、しかも勝ってしまうなど
立花の憧れの人だ。
ひとめ会ってみたかったのだが、領主だからと有名人を呼び付けられる様な性格ではない立花は、思い切って勧誘してみる事にしたのだ。
しかし、立花は世間的に評判が悪い。立花にしてみれば嫌われるのも仕事の内、働いている証拠ぐらいの認識だが、見ず知らずの人からすれば関わりたくないだろう。
会うための口実なので別に断られてもいいのだが、玉砕覚悟で告白に行く様な、そんな心境の立花は吐き気がするほど緊張している。
別に嫌いな人に何と思われようがどうでもいいが、憧れの人には嫌われたくない。
「もうヤダ。帰りたい……」
立花は泣きそうになりながら輸送機を降りて鬱金の家に向かった。
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