妙なる不幸の調 〜前編小夜曲〜

陸 巴夜

第1幕 序曲《オーバーチュア》

第1章 鬱金の闇 第1編

0 オープニング (10/13追加)


 暗めの照明にノリのいい音楽。

 中央のステージではセクシーな格好の女性が思い思いに踊っている。そんな女性達を眺めながらリズムにのっている男達の格好が、少しおかしい。


 ある者は頭に角が付いていたり、ある者はまるで一騎当千の中華風武将の様な格好をしていたり、服装にも季節感など全くない。


 そして茶色いロングヘアに狐耳を付けた、男性の割には小柄で端正な顔立ちの若い男の目の前には、華やかなスーツにショートカットでウエーブの掛かった白髪、そこに羊の角のついた爽やかな背の高いイケメンが居る。


「何の格好?」

「悪魔紳士だって……」

 うんざりした様子の背の高い男の瞳はカラコンのせいで赤い。


「どこら辺が紳士?」

「この服だろ?」

 背の高い男が着ているのは妙にレースやら刺繍のついた仮面舞踏会のような服だ。残念ながら紳士と執事の区別がつかない狐耳の男には、とても紳士には思えない。


「う〜ん。なんか微妙……」

「そりゃあ、お前に比べたら誰だって似合わないよ」

「うっ……」


 狐耳も尻尾も大きめで、小動物感を強調した格好は確かに男にとてもよく似合っている。

しかも耳は先の方が重くなっているのか、男が頭を動かす度に大きく揺れる。今はうつむいているのでお耳がペタンと伏せた形になっており、大変可愛らしい。




 二人が話していると、音楽が止み、ステージに王様の格好をした四十代の派手な男が現れる。


「あーみんな少し聞いてくれ」

 男が大きな声で言うとマイクがハウリングを起こす。


「まずはみんなに礼を言いたい。今日まで俺みたいないい加減な奴に着いてきてくれて、本当にありがとう!

 二十年ぐらい前、俺は陛下と少し知り合いだったってだけで、レオモレア軍に入った。それから十年かけて、少しずつ人が増えて、みんなの力で将軍になった。

 俺が今ここにいるのは間違いなくお前らのお陰だ! だから俺はここでお前らに誓う!

 今度は、俺の力で、お前らを、王直属軍にする!」

 派手な男が高らかに宣言すると、聴衆が歓声を上げる。


「ありがとう、だからお前らも、俺に誓ってくれ! 俺のために死んでくれ! 心残りがある奴はこれからすぐにやってこい! 好きな人がいる奴は今すぐに告ってこい! 金を溜め込んでる奴は、今日で全部使え!」

 男の言葉に聴衆は再び歓声を上げる。


「十年前、俺達の軍は、影も形もなかった! 死んで元々だ! 今までの俺達は今日死ぬ! 勝って、新しい俺達に生まれ変わろう! 今日は最後の晩餐だ! 死ぬ気で盛り上がれ!!」

 会場を割れんばかりの歓声が包む。


「いいか、勝つぞぉ!!」

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