第10話
翌日、俺は珍しく目覚ましが鳴る直前に目を覚まし、そのまま二度寝をせずにベッドから出た。
カーテンを開け、窓の外を見ると、アパートの前の小さな畑に、雀が三羽飛んできて鳴いた。窓ガラスを通して、ひんやりと朝の冷たさが伝わってくる。
冷蔵庫のカフェオレを飲んでから、歯を磨く。今日は一限目が美奈と一緒の講義だ。
A107講義室に入ると、右後方の席に、ユカと美奈が並んで座っている。ユカが、きたきた、みたいなことを美奈に言ったようだ。美奈は俺のほうを見て笑うと、片方の袖から指先を出して小さく振った。俺は周りの目が気になって、かくんと頷くようにして応じ、美奈たちとは離れた席に座る。九つ隣の、二列後ろだ。
講義中は、教授の顔より美奈の顔を見て過ごした。今日の美奈は、大きなリング状の耳飾りをつけている。直径は女の手首くらいもありそうだ。
ときどき、あんなセックスをした美奈が、きちんとして講義を受けていることに、下腹がそわそわするような興奮を覚えた。そうかと思えば、今度は妙に真剣な気持ちになって、付き合ってという言葉をどう伝えようか、シミュレーションしてみたりもした。
九十分の講義中、美奈は俺のほうを五回見た。何見てるの、という感じで小首を傾げたり、すぐまた黒板に集中したり、はにかんで指先だけ出した袖で口元を隠したり、どのしぐさも俺のためだけに存在しているように思えた。
講義が終わったが、美奈たちはすぐには立ち上がらず、そのまま座って話しをしている。俺は周りの学生たちがある程度はけ始めたら、美奈の所へ行った。ユカが、清太さんおはようございます、と言って、美奈がおはようと言った。
ユカは、清太さん飲み楽しかったですね、またやりましょう、今度は先につぶれないようにしますからハハハ、などの言葉を俺と交わして立ち上がった。
「美奈、私先行ってるから」
ユカが行ってしまってから、俺は、気が利くね、と言った。美奈が笑って、うん、と言う。
「講義中、何で私のほう見てたの?」
「いけなかった?」
「いけなくないよ。何でって聞いてるの」
「教えない」
「ふふっ、何それ~」
「今日、講義五限まで? 一時間くらい、付き合ってよ」
「いいよ。何するの?」
「教えない」
「もー、何でぇ」
「ははは。ただ話したいだけ」
美奈が笑うと、耳飾りがそれに合わせるようにゆらゆらと揺れた。
◆ ◆
待ち合わせ場所は学校の南門だ。タバコを吸いながら教育学部棟の向こうを見ると、太陽周りの雲が金色に光っている。
美奈が向こうのほうから歩いてくるのが見えたので、俺は自転車のスタンドを上げた。美奈は俺に気づくと、前髪を整えるように二度なで、歩みを速めた。俺だけに分かる程度に、目元と口元を和ませて、真っ直ぐ俺のほうへ歩いてくる。駆け寄って抱きしめたくなるような顔だ。
美奈が、おつかれ~、まった? と言った。俺は、ううん、と答えて、自転車の後ろを指差した。
「乗って」
美奈はふふっと笑って、カバンを自転車のかごに入れると、何か高校生みたいだね、と言った。
大学前のだらだら坂を、ブレーキをかけずに下る。だんだんスピードがついてきて、横座りした美奈が、俺の腰に回した腕に力を入れた。速い速いと言いながら、笑っている。
郵便局前の交差点で信号につかまった。美奈が、どこ行くの、と聞いた。
「天満山公園」
「えー、どこそれ? こっちに公園あったっけ?」
「あるよ。……ケツ痛くない?」
「スピード出さなければ大丈夫」
「じゃあ、もうちょっとスピード出したほうがいいね」
「ちょっとぉ、違うでしょ~」
「あれ? ケツ痛いの好きじゃなかったっけ?」
「そんな人いるわけないじゃん。私の尾てい骨が骨折してもいいの?」
「あははは。折れはしないでしょ」
などと言いながら、ガソリンスタンドを通り過ぎ、中学校を通り過ぎて、公園下の階段についた。俺が階段を指差して、この上が公園、と言うと、美奈が、えーここ公園があるんだ、と言った。
ここは小高い山の上が公園になっていて、ところどころに、木の隙間から景色が見渡せるベンチがある。景色と言っても、見えるのは主に住宅街だし、高さもマンション四、五階くらいの高さしかしかない。でも、俺はこういう高くて開けた景色が見渡せる場所が大好きなのだ。しかも、ここは花見シーズン以外、人もあまり来ないので、ゆっくりと落ち着ける。
俺は、一番いい席に美奈を案内して、結構眺めよくない、と言った。美奈が、うん、こんなところがあったんだね~、と言った。
風は無く、街並みはうっすらと夕日色に染まっている。
◆ ◆
美奈が、あの家面白いね、と言って紺色の家を指差した。差し色に白を使ったカラーリングといい、フォルムといい、斬新なデザインの家だ。
「ああ。そうそう。俺もここ来るとあれ見てしまうんだよね。すごいよね、あれ」
「うん。家の中どんなふうになってるんだろう」
「多分すっげえおしゃれだろうね。何か天井高そう」
「ああ、わかるわかる。あのくるくる回るやつついてそうじゃない?」
「ははは、天井のやつね。確かについてそうだわ。……あの家の屋根さ、三角定規をぶった切った形してるよね?」
「え? 三角定規?」
俺は棒を拾って、足元の地面に絵を描く。
「ほら、30度・60度・90度の三角定規のさ、ここをこう切ったらあの形になるじゃん」
「ああー! はははは。ほんとだぁ。……ふふ。清太さんって、クールに見えるけど、本当は面白いよね」
「今の面白かった? そういうつもりで言ったんじゃないんだけど」
「なんか、普通とちょっと違うって感じがする」
「そうかな。どこが?」
「うーん。何って言ったらいいんだろう」
「パチスロやりまくってるところ?」
「ふふ、それもちょっとはあるけど。……何だろう。雰囲気とか、考え方、なのかな? でも、そのちょっと違うところが、良いと思うよ」
ほめられるのなんて、いつ振りだろう。美奈の顔をじっと見た。嬉しさと愛しさを混ぜたような感情が胸の中で膨らんで、俺の喉をぎゅっと押す。無意識に右手で時計のベルトを触ると、あっほら、と美奈が言った。
「その時計だってさ、普通大学生の男の子ってそういう古い時計つけないじゃん。でも清太さんは平気な顔してそれつけてさ、しかも何かそれがかっこいいし」
「もらって気に入ったからつけてるだけだよ」
「誰にもらったの?」
「知らないじいさん。何かパチンコ屋の近くで仲良くなってもらった」
「あはははは。何それ~。ほら、やっぱりちょっと変わってるよ」
俺は、よっぽどじいさんに時計をもらったいきさつを話そうかと思ったが、やめた。万が一、あくまで万が一だが、この時計が魔法の時計だったら、話すことで魔力が消えるような気がしたのだ。すぐに話題を変える。
「今日耳飾りつけてるんだ」
「ふふふ。イヤリングって言ってよ。これ、かわいいでしょ。昨日エリナと遊びに行ったとき買ったんだ」
「へえ。重くないのそれ?」
「結構軽いよ。持ってみる?」
俺は手で持ち上げてみて、思わず笑った。
「手で持っても全然わかんねえ」
「あはは、そっか。エリナもこれと同じやつ買ったんだよ」
「ふうん。エリナってさ、生物学科じゃないの?」
「うん。あれ? 言ってなかったっけ? エリナ理学部じゃなくて教育学部だよ」
「あ、そうなんだ。じゃあなんで仲いいの?」
「私ね、今はダンススクールしか行ってないけど、一年のときはダンスサークルも入ってたんだ。エリナ、ダンスサークルだからそのときに仲良くなったの」
◆ ◆
話しをしているうちに、街の夕日色がずいぶん濃くなってきた。ヒヨドリが、キヨキヨキヨキヨと鳴いている。俺は座り直すふりをしながら少しずつ美奈に近づいていたので、今ではもう肩がかするくらいの近さだ。
あ、そうだと思って、気になっていたことを聞いてみることにした。
「日曜日さあ、起きたときエリナたち何て言った?」
「昨日何時まで飲んでたの、って聞かれたから、四時過ぎって言ったよ」
「そしたら?」
「襲われなかった、ってユカが言って」
「うん」
美奈が、俺の目を真っ直ぐに見た。
「襲われた、って言ったよ」
「うそ!?」
「あはははははは。嘘だよ」
「なんだよー。普通に焦ったわ。……うそ!? とか言ってしまったし」
「フフフフ」
「ほんとは何て言ったの?」
「清太さん紳士だったよって」
「そしたら?」
「ふふっ。まあいろいろ。大丈夫だったよ、とにかく」
「そっか。誰が一番最初に起きたの?」
「ユカ。私とエリナが一緒くらい」
周りを見ると、見える範囲にはもう人がいない。
俺は持っていた小枝を横にぽんと投げ捨てて、美奈にくっついて座った。美奈が黙って俺を見る。俺は美奈の手を握った。
向こうで、飛行機が飛んでいるのが小さく見える。
美奈の顔を見ると、はにかむようにして、何、と言った。唇が、グロスを塗っているせいで濡れたように光っている。一瞬、俺は、美奈の唇にかみつく自分を想像した。
「清太さんの手って、いつもあったかいんだね」
「そう?」
「うん。ホッカイロみたい」
「美奈ちゃんの手ってさあ、……」
「何?」
「じゃなくて、唇ってさあ」
「唇?! えっ何?」
「……」
「何、唇が何?」
「いいよね」
美奈は下を向いて笑い、何それ、と言った。
まるで、繋いだ手から、感情を昂ぶらせる素がどんどん流れ込んでくるようだ。俺は言葉が出てこなくなって、黙った。そのまま、髪で半分隠れた美奈の横顔をじっと見る。
美奈が、一度俺の顔を見て、またすぐ前を向いた。そのときの微かな照れ笑いに、俺はついにたまらなくなり、肩を持ち、こっちを向かせて抱きしめた。
キスをすると、グロスの味だろうか、バニラのような味がした。キスは、そのグロスを全部拭い取るくらい長く続いた。口を離すと、美奈が、はあ、はあ、と大きめに息をした。
その後二回キスをしたら、ようやく俺もしゃべる余裕が出てきた。
「バニラ味?」
「うん。おいしかった?」
「ははっ。まあまあかな」
「青リンゴのほうがよかった?」
「青リンゴもあるんだ」
「うん。私が持ってるのはその二つだけど、他にも色々あるんだよ。イチゴとかチョコとか、あと、マンゴー。桃と、……ライチもある」
「コーラは?」
「あはは。コーラない」
「レモンは?」
「あー、多分あると思う」
「レモンコーラ」
「ない」
「カレー味」
「はははは。絶対ない」
◆ ◆
黙って手をつないでいると、口の中に残っていたバニラの味が、だんだん薄くなってゆくのを感じる。
美奈が、清太くん血液型何? と聞いた。俺は、O、と答える。
「やっぱり。そうじゃないかなって思ったんだよね」
「ほんとに? どこらへんでそう思ったの?」
「Bは絶対ないし、Aもないなってって思ったの」
「血液型と性格って関係無いと思うけど」
「あるって。絶対あるよ。私、人の血液型大体当てられるんだよね」
「俺だって当てられるよ。美奈ちゃんの当ててやろうか。……Aでしょ?」
「違う」
「うそ? じゃあ、O」
「違う。フフフフ、全然違うじゃん。私、Aっぽい?」
「Aっぽいとかじゃなくて、日本人の確か四、五割がAだから、確率的に一番いいと思ってさ。二番目がOだから、Oって言った」
「そういうズルするから、外れるんだよ」
「ズルではないだろー。じゃあ美奈ちゃん何型なの?」
「B。結構自己中なんだよね。末っ子だしさ。家ね、私とお母さんがBで、お兄ちゃんたちとお父さんがAなんだよ。女がB、男がA。だからね、私とお母さんがケンカするとね、」
俺は美奈の言葉を遮るようにして、抱きしめた。そうせざるを得ないほど、感情が急に昂ぶったのだ。美奈は、わぁ、と言って黙った。
美奈の、呼吸に連動した背中の動きが、俺の腕に伝わってくる。俺は体を離して、美奈の目をまっすぐ見て言った。
「付き合おうよ」
美奈ははにかむように笑った。俺は返事を待つ。
「突然だね。……すっごい嬉しいよ」
「じゃあ、いいの?」
「うーん。いきなりだから、ちょっと考える時間もらえないかな?」
俺は心の中で、ええ、と叫んだ。
(絶対OKだと思ったのに。でも、まあこの感じなら、ダメってことはありえないよな)
余裕を見せるために、落ち着いた声を作って、分かった、と答える。
◆ ◆
俺は、美奈がなぜ返事を先延ばしにするのか考えてみた。
(すぐに返事をすると軽い女だと思われるからだろうか。でももうセックスしてるんだから、今さら軽いもクソもないよな。……俺に何か気に入らないところがあって、幻滅させてしまったのかな……?)
すると美奈が、清太さんさあ、と明るい声で言った。
「何?」
「何か、少年っぽいよね」
「ガキってこと?」
「ううん。いい意味で。何か、真っ直ぐって感じ」
「そう? 俺が付き合おうって言ったから?」
「違う違う。全体的に、そういう感じがするの」
「えー? 俺、今までさんざん先輩とか先生とか親に、生意気とか、ひねくれてるって言われてきたけどね」
「私ね、二番目のお兄ちゃんがすっごい不良だったんだ。でも本当はそのお兄ちゃんが一番、性格は真っ直ぐなんだよね。清太さんもさ、真っ直ぐすぎたからそういう風に言われたんじゃないかな」
「そうなのかなあ。そんなにいいもんじゃないと思うけど。……だって俺さ、すっげえズルいよ。パチスロでさ、まだすごくチャンスが残ってる台を、よく分かってないおばちゃんとかじいさんがたまに捨てちゃうんだよね。俺、そういうとき、まだ打ったほうがいいよ、って教えてあげないよ。ラッキーって思って、すぐその台取るし」
「ふふ。わかんないけど。……清太さんは私のことどう思う?」
「うーん。それこそ俺なんかより、ずっと真っ直ぐなんじゃないの」
「やっぱり。清太さん私のこと誤解してる。私、清太さんが思ってるような女じゃないよ」
「あははは。何それ? ワルイ女なの?」
「……」
美奈は、耳飾りを触って考えるような顔をした。
「どこら辺がワルイのか、言ってみてよ」
「性格」
「あはははは」
「ほんとだよ」
「意味わかんねえ。えっ、まさかそれで付き合うのをためらってるの?」
「うーん……」
「いやいやいや。俺が性格ワルイと思わないんだから、それでいいんじゃないの?」
「違う。そうじゃないんだけど。……ごめんね。もうちょっと考えさせて」
辺りは薄暗くなって、美奈の後ろに見える木のうろが、妙に真っ黒く見える。
見下ろす町並みの中で、ドラッグストアだけが妙に明るい。
◆ ◆
美奈を駅まで送り届けたついでに、『パーラーセブン』を覗いてみることにした。駅の真裏にある、この地域では中堅のパチンコ屋だ。
最初に、全てのシマをぐるりと見て回る。
『ハナビマックスⅡ』のシマで、この店の常連、茶髪の三十男「武蔵丸」が二千五百枚くらい出している。データを横目で見ると、ビッグ22のレギュラー18。回転数は不明だが、こいつの普段の立ち回りから言って、この一台で粘り続けているのはほぼ間違いない。
武蔵丸というのは無論あだ名で、顔が相撲の武蔵丸みたいだから心の中でそう呼んでいる。レベル的にはまあ、セミプロと言ったところだろうか。こいつの動きは押さえておかなければならない。
『ギャルギャルカンフー』の角台では、ヒゲおしぼりが五千枚近く出している。こいつは、おしぼりで自分のパチスロ台を拭くクセのある男で、針金のようにヒゲが太い。ラスベガス会館やTOYOラッキーのイベントデーでは、かなりの確率でいい台を掴む。何で今日この店に来ているんだろう。ちょっとクサい。もしかしたら根拠があるのかもしれない。
俺は目に留まった『ペンギンフローズン』を三千円だけ打つことにした。三千回転でビッグ16のレギュラー11という台だ。
サンドに千円を投入し、忘れないうちに日付、店名、武蔵丸とヒゲおしぼりの台番号を手帳に控えておく。俺は自分が打った台のデータはもちろん、常連の動きも手帳に記す。こういうデータを残しておいて、店の設定の入れ方を読むのだ。
二千円目で、熱いドット演出が出た。いつもは右から出てくるペンギンが、左から出てきたのだ。期待度35パーセントの演出だ。これで、さらにペンギンがコケれば、期待度は60パーセントまで跳ね上がる。
俺はぴょこぴょこと歩くドットのペンギンを見つめた。
(コケろ!)
ペンギンはあっさりとコケた。これはアツい。
(……これで当たったら、俺は美奈と付き合える。……)
タメを作ってから、次ゲームのレバーを叩いた。演出が何も出ないので、まだ当たりかどうかが分からない。回っているリールを、どこから押そうか考える。パチスロで最もアツくなれる瞬間の一つだ。
左リールの上段に7をビタ押しすると、一コマすべって中段に止まった。当たりだ。しかし、揃えてみるとレギュラーだった。この台は、ビッグなら400枚出るが、レギュラーだと140枚しか出ない。
(一応当たりは当たりだから、付き合える、ということでいいんだよな?)
そのバーの出玉でビッグが当たり、持ち玉遊戯に入った。
頭が勝手に美奈のことを考え始める。俺は、かなりパチスロを打ち込んでいるので、打ちながら、しかも絵柄を狙いながら考え事ができる。
(まあ、普通に考えて付き合う流れだよな。……付き合わないってことはないよな)
美奈の言った言葉や表情を思い出してみるが、やはりそうとしか思えない。
(でも、性格が悪いって何だ? 何か今まで男にひどいことをしたんだろうか。それとも、自分がわがままなのを、最初から覚悟させるためかな? ……)
ドットのペンギンが左から出てきた。期待度35パーセントだ。おっ、と思ってリールに集中するが、今度ははずれだった。
(俺が付き合える期待度って、何パーセントだろうか。……85、いや、78くらいかな。……うん、78だな)
左のリールにはチェリーを狙い、ベルがすべってきたら、右と中にもベルを狙う。俺の手と目が協力して、もっとも期待値の高くなる手順を、自動で動くロボットのようにこなしている。
(あっ、そう言えば、部屋片付けないといけないんだった。……洗濯物もたまってたよな。明日雨降るかな?)
ケイタイで天気予報を見ると、降水確率20パーセントとある。
(20パーか。まあ大丈夫だな。……ん?……ってことは、明日雨が降る確率と、俺がフラれる確率が一緒くらいってことか)
ビッグの出玉が飲まれてなくなったので、俺は店を出た。
空は晴れているが、ちょうど月の所にだけ雲がかかっている。
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