第五話 「幻」

「ここはどこ?」

キッザーは深い霧の中、散策を始めていた。

「誰かいるの?」

霧の中に誰かがいる気配はするだが、どこにいるのか検討がつかない。


「どうしてこんなところに?」

キッザーは考える。

思い出せたのは金髪の幼女に紺色の髪で大剣を持つ青年、そして紅い髪、目、リボンの髪飾りをつけた若い女子。

それらがキッザーの何らであることは間違いない。だが、それ以上思い出せずにいた。

「うーん」

キッザーは性格が楽観的主義なため悩まないことにした。

「誰かいませんかー?」

キッザーは探す探す。でも、見つからない。近づいているのはわかっているのに。

ふと後ろを見た。すると、人影がうっすらとみえた。

「誰?」

キッザーは何だが嬉しくなる。

声がはずみ、その人影を追うが、遠い。

追うごとに身体が走ることで急速に幼くなるのがわかる。

だけど疑念にはならなかった。

「そこで待っていてね!」

キッザーは影が少しずつ下がっているのを感じた。

この人影が何かは想像ができた。キッザーが愛してやまない人なのだから。

人影が濃く近くなっているのを感じた。

「母さん!」

霧をカーテンのようにどかし、ようやく人影の女性に会えた。そのときにはキッザーの身体は5歳児になっていた。

女性はキ ッザーに顔つきが似ていて髪の長い白髪。白いワンピースで肌も透き通るように白い。

姿形すがたかたちはまるでキッザーの家あった写真から出てきたみたいだった。

「母さんに会えるなんて」

何でこのせりふをいったんだろう?

久しぶりにあったみたいな台詞だ。

キッザーの母はキッザーとは違う白いひとみうるませた。そして愛らしく笑う。

「母さん。父さんは?」

何故こんなことを聞いたんだ?

頭が痛い。何故か混乱する。考えるのをやめた。

「……!」

キッザーの母は懸命けんめいに何かいっていて首を横に振る。

「母さん、話せないの?」

キッザーの母は懸命に何か伝えようとしている。

「あのね。僕、話したい事がいっぱいあって…」

「……っ」

母は力なく横に首をふり続き、下唇を噛み締め、キッザーのほおを触る。

冷たい。そう感じた瞬間何やら大きな揺れを感じた――――



「ありえない。やっていることが野蛮やばんすぎる……!」

ゴスロリ少女は声では焦りと驚きがじるが、影で顔が見えない。

「ロケットランチャーで門を破壊するなんて!」

少女は寝ているキッザーの側にいたが、慌てて部屋を出た。

勿論もちろんロケットランチャーを打ったのはリボだ。

少女は人形を握りしめて廊下を幼い足でかけ走る。

キッザーに目もくれず。



「なんだったんだろう」

キッザーはぼやいた瞬間。頭が一気にえた。キッザーの父と母は死んでいること。傷だらけになってまで妹メアリーを救う兄ナイトメア。その兄を心配そうに見るメアリー。そして、人形より人間に近いリボだ。

「仲間ができたのね。こんな嬉しいことはないわ」

んで愛くるしい声はキッザーの母だ。嬉しいそうに言った。

「幻?」

キッザーは疑問が沢山あるなか1つだけ聞いた。

「それに近いものね。私は呼び出されたの。あるものによって。父さんは貴方が情けないってねてたわ」

キッザーの母はいかにも楽しそうに笑っている。

「あるものって?父さんとはあの世で一緒なんだね?」

弱々しくいうキッザーに母はまるで冒険をさせたがっているかのように爛々らんらんと楽しそうにしている。

「それはいずれわかる。その者によって私は話せなかった。父さんはね。貴方が認めないのが嫌なの」

「何を?」

なんのことだかキッザーには検討がつかない。

「貴方が愛してやまない人がいるんでしょ?」

身を乗り出して聞く母にキッザーはリボのこと言っているのがわかった。

「仲間できたよ。でも僕は人間じゃないか。人形にかれているだけで好きではないよ」

「恋に人間も動物も人形も関係ないわ」

「でも、僕は」

「いつかは納得するときがくる。そして愛するものだけにあなたの本当の力を使いなさい。お父さんはそう言いたいのよ。お父さんのように熱く蕩けるような恋に。ウフフ」

母は少女のようにくるりと回った。

「母さん。僕はコントロールが上手くできるかわからないんだよ?」

「それは愛の力で乗り越えるの♪」

母は歌うように言った。

「でも、頻繁ひんぱんに使うのはやめなさい。絶対絶命の

時だけよ」

「そんなときは来ないよ。リボは強いんだから」

キッザーはリボの戦いぷりを思い出す。

「そうね。私もそう願っている。父さんからキッザーの話はよく聞いているわ。そしていつまでも2人で見守るわね」

「もう行くの?」

キッザーは初めて話す母にもっと話がしたいと願うが母は苦笑をらし、手を振る。

「男になるのよ。私とブルザーの2人の子供なんだから」

「うん」

母が消えたときに霧は晴れ、何か大きな爆発音が聞こえる。

柔らかいベッドの上で目が覚める。

泣いていたことに気づくが、キッザーは ベッドから離れて部屋を出た。

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